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コロナ禍の五輪「バブル方式」大丈夫?成田空港 合宿地の対策は

  • 2021年7月15日

東京オリンピックに出場する選手団や関係者の来日が本格化していますが、選手などに新型コロナウイルスの感染者が相次いで確認されています。成田空港では、選手団や関係者の水際対策として、一般の乗客との接触をなくすいわゆる「バブル方式」がとられています。
しかし、取材を進めると、空港の水際対策や受け入れ自治体での感染対策が簡単ではない状況が見えてきました。
(千葉放送局 成田支局/記者 岩澤千太朗)

対策の柱 選手と一般利用者の動線分ける

成田空港では選手団の入国が本格化しています。東京オリンピックに出場する選手団や関係者の水際対策として、きれいな泡で包むように移動してもらい、一般の乗客との接触をなくすいわゆる「バブル方式」がとられています。

最初に選手たちの検査を行うのは検疫所です。検疫所では7月17日からの3日間がいちばん混雑するとして、この3日間をどう乗り切るかにかかっていると考えています。
感染対策の柱は、選手たちと一般の利用者との動線を分けて、双方が接触する機会をなくすことです。

選手たちが抗原検査を受ける専用の部屋が新たに整備されました。
さらに、選手たちは航空機の中で一般の利用者が降りるまで待機することにしました。
一般の利用者が降りて、最後にアスリートを含めたオリンピック関係者が時間差で降りてくる方式です。

「バブルの維持」対策の難しさも

アフガニスタンの選手団や大会関係者が到着した日。対策を徹底することは簡単ではないことがみえてきました。
大会組織委員会のスタッフが案内板を持って誘導していましたが、大会関係者2人の姿が見当たらなくなったのです。

スタッフが呼びかけを続けると、その後、大会関係者は、先に降りた一般の利用者が検査に向かう列に、紛れ込んでいたことがわかりました。多くの人が利用する空港で「バブル」を維持するため、選手たちと一般の乗客の動線を分けることが簡単ではないことが見えてきました。

成田空港検疫所 田中一成 所長
「現在、動線が複雑化していますし、迷って一般動線に入ってはいけませんので、一緒にならないような検査室も整備しました。また、待機スペースも一般の方と離れるか、フロアを変えるなど、できるかぎり準備しました。案内をする方、される方、双方が協力しなければ、そういった点はうまくいかないと考えている」

合宿地での対策は?

選手団を受け入れる自治体も、さまざまな感染対策を行っています。
ナイジェリアの選手団を受け入れている千葉県木更津市。空港での検査のあとも、移動は専用の貸し切りバスを手配するなどの対策をしています。

ホテルでは、1つの階を選手団の専用フロアにし、ほかの宿泊客が近づかないよう警備員を配置しました。

練習会場では、選手団以外の立ち入りを厳しく制限し、練習はこれまでに市民などに公開していません。選手団や市の職員は毎日、ウイルス検査を徹底し、警戒を強めています。

木更津市 渡辺芳邦 市長
「選手団の中で感染があって持ち込まれてきたり、来てから症状が出てきたりという部分は心配していた部分です。負担は感じますけど、なんとしても感染がないように努力したい」

選手たちを受け入れる空港や自治体の対策は十分なのか。
専門家は組織委員会や国から自治体への速やかな情報提供が鍵になるとしています。

国際医療福祉大学 和田耕治教授
「選手たちの感染対策が、自治体にかなり依存しているところは否定できないかなと思います。今後もさまざまな課題が起きた時にきちんと早めに対応をして、多くの方の納得を得られるような形にしないと、出場ができるかできないかといったところにもなり得るという非常に難しい局面を有しているというふうに考えてます」

取材後記

緊急事態宣言が出されるなか開かれる東京オリンピック・パラリンピック。政府は「安全・安心な大会」を強調していますが、国民から厳しい目が向けられています。
空港のスタッフや事前合宿地の職員は、感染拡大を防ぐため、あまりにも大きな負担を強いられています。まもなく選手たちの入国がピークを迎えますが、取材した和田教授は新型コロナウイルスの特性として「空港の検査で陰性だったとしても、その後に発症する可能性はある」と指摘しています。
東京大会が、さらなる感染拡大につながることはないか、現場となる空港や合宿地での取材を通じて問い続けていきます。

  • 岩澤千太朗

    千葉放送局 成田支局 記者

    岩澤千太朗

    平成28年入局 大阪局を経て現所属 成田空港の航空取材や地域の漁業・農業の取材にあたる

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