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コロナに感染したからこそ伝えたい~施設職員の後悔と教訓~

  • 2021年6月16日

去年、大規模なクラスターが発生した千葉市内の特別養護老人ホーム。この施設で働く2人の職員は、みずからも新型コロナに感染しました。

「知らないうちに感染させてしまったかも知れない」
「感染して、職員としてまったく役に立つことができなかった」

いまも複雑な思いを抱えながら、当時の経験を教訓に感染対策の徹底に努めています。
(千葉放送局/記者 尾垣和幸)

体調に異変 でも勤務を続けて…自分が感染を広げた?

千葉市内の特別養護老人ホームで働く20代の介護士の女性は、去年11月、仕事中に体調に異変を感じました。軽い頭痛があり、鼻水も出ました。それでも「ただの風邪か」と考え、さして気にとめなかったといいます。

その日は予定通り、夜まで勤務を続けました。

翌日、だるさを感じて熱を測ると、37度5分ありました。
同じころ、施設からは「同僚が感染した」という連絡が入ります。すぐに検査を受けると、女性も感染していたことがわかりました。

女性
「最初に体調に異変を感じたときにコロナにかかっていたのかもしれないなと思いました。『夜まで働かなければよかった』と。そうすれば、ここまで施設で感染が広がらなかったのかもしれないと後悔しました」

“死亡したのは施設の入居者ではないか” 不安な日々

翌日に体調が急変しました。
熱が急に39度まで上がったかと思うと下がる。そしてまた上がる。この繰り返しでした。経験したことのない症状が、怖かったといいます。

女性
「体温計が壊れているのかと疑ったんです。私、生きているのかなって思いましたね。死んでしまわないかなって」

入院して体調は落ち着きましたが、女性は施設の入居者がどのような状況か、心配でした。
入居者の対応で忙しいだろうと、直接職場に連絡することは控えました。

自治体が発表する感染者の情報をインターネットで逐一確認する毎日。
亡くなった人の情報を目にすると「入居者ではないか」と気が気ではありませんでした。

退院後、51人いる入居者のうち40人が感染し、このうち3人が亡くなったことを知りました。

あんなに対策をしていたのに

女性はふだんから感染防止対策には気を配っていました。

毎朝の検温は欠かさず、消毒液やウェットティッシュも持ち歩いていました。体調に異変を感じたあの日も、いつも通り対策を取りながら働いていました。

施設では同時に複数の感染者が出たため、女性から感染が広がったのかどうかはわかっていません。
それでも女性は「知らないうちに誰かに感染させてしまったかもしれない」という思いを抱えているといいます。

女性
「亡くなった入居者の1人は、いつも私を頼ってくれた、すごく大好きなおばあちゃんで元気な方でした。今も元気な姿をよく思い出します。私が出勤している時はまだ発熱もしていなくて風邪の症状もなかったので、本当に命って簡単に奪われてしまうんだって思いましたね。こんな形でさよならしたくなかったです」

女性は今は、体調が悪いときは決して無理せず、消毒やマスクの着用など、基本的な対策を徹底するよう一層心がけています。

自分は感染しないと思っていた

同じ施設で働く40代の事務員の男性は、最初に同僚の感染が判明したあと、自分も感染が確認されました。当初、症状は全くありませんでした。

男性
「コロナは怖いと思っていましたが、どこかで『自分はかからない』と思っていたのでショックでしたね」

帰宅すると体温は39度まで上がりました。ドクン、ドクンと側頭部が脈を打つのが分かりました。経験したことがない頭痛が襲ってきたといいます。

翌日入院し、3日後には熱も頭痛も治まりましたが、今度は味覚障害で、何を食べても味がしませんでした。

男性も、自分の体調以上に気がかりだったのが施設の状況でした。
目に浮かぶのは、懸命に働く同僚たちの姿。職員の7割にあたる20人あまりが感染したため、同僚たちは少ない人数で対応に追われていました。

横線は感染して出勤できなくなった職員

「『何もできない自分が言える立場ではないかもしれませんが、無理しすぎないでくださいね』と上司にSNSでメッセージを送ると、すぐに『了解、気にするな!笑顔で帰ってこい!』と返信がきました。早く戻らなければいけないという気持ちを強くしました」

上司からのLINEのメッセージ

ワクチンを打っても安心できない

男性は10日間の入院をへて職場に復帰しました。

この施設では、7月上旬に1回目のワクチン接種が行われる予定です。しかし、男性は接種を終えても決して油断できないと考えています。

男性
「ワクチンが打てても安心はできないのかなという思いはあります。個人個人の感染対策というのは継続してやっていかなくちゃいけないのかなと。感染を完全に防ぐのは難しいと痛感しています」

クラスターが起きた経験を教訓に、施設では職員の健康管理を徹底するとともに、面会の制限などできるかぎりの対策を続けていくことにしています。

 

  • 尾垣和幸

    千葉放送局 記者

    尾垣和幸

    新聞記者を経て2017年入局。高齢者施設での新型コロナの感染対策について継続取材している。

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