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ヤングケアラー 国がまとめた4つの支援策って?

  • 2021年6月1日

ヤングケアラーは中学生のおよそ17人に1人。ことし初めて公表された全国的な実態調査の結果です。この調査を踏まえて、国は「早期把握」や「相談支援」の強化など支援策をまとめました。
いったいどのような取り組みなのでしょうか。厚生労働省担当の間野まりえ記者に聞きました。

中学生17人に1人 高校生24人に1人がヤングケアラー

Q 初めての国のヤングケアラーの実態調査とは?

 

2020年12月から2021年1月にかけて、公立の中学校1000校と全日制の高校350校を抽出して2年生にインターネットでアンケートを実施し、およそ1万3000人から回答を得ました。その結果「世話をしている家族がいる」という生徒の割合は中学生が5.7%でおよそ17人に1人、全日制の高校生が4.1%でおよそ24人に1人でした。

Q 具体的にどういう世話をしていたの?

 

世話の内容は食事の準備や洗濯などの家事、きょうだいの保育園への送迎、祖父母の介護や見守りなど多岐にわたります。世話にかけている時間は平日1日の平均で中学生が4時間、高校生が3.8時間でした。ただ、中には7時間以上と答えた生徒もいました。

国の支援策(1)早期把握

Q 国がまとめた支援策とは?

 

大きく4つの支援策が検討されています。1つ目が「早期把握」です。

 

実は、ヤングケアラーは本人にその自覚がなかったり、家族の問題を知られたくないと思ったりしていることが少なくありません。このため、国もまずはヤングケアラーをいち早く見つけ、支援につなげることが重要だと考えています。
早期把握のための支援策では、教育関係者、医療・介護・福祉の関係者、児童委員や子ども食堂などを対象に、研修を実施し、ヤングケアラーへの理解を深めてもらうとしています。

Q 具体的には?

 

たとえば学校では、学校を休みがち、忘れ物が多い、宿題ができないことが多いなどの兆候をつかみます。こうした子どもの状況の背景に、家族の世話や介護があった場合はスクールカウンセラーやソーシャルワーカーと連携し、自治体が提供する福祉のサービスにつなぐことなどが想定されています。
また、自治体ごとに地域の実情を把握してもらうため、独自に実態調査を行うことも推進していくことにしています。

国の支援策(2)相談支援

Q 2つ目の支援策は?

 

2つ目は相談支援です。

 

実態調査では、ヤングケアラーの6割以上が、誰かに相談した経験がないと答えました。
このため家族の世話や介護を経験した人などが、対面だけでなく、SNSなどオンラインで相談を受け付ける取り組みを進めることにしています。

 

また、子どもたちの相談にのるスクールカウンセラーやソーシャルワーカーの配置を支援して、相談機能を強化し、福祉サービスのほか、民間の学習支援などにつなげていきたいとしています。

国の支援策(3)家事育児支援

Q 3つ目の支援策は?

 

家事育児支援です。

 

世話をしている家族で最も多かったのは、中学生、高校生いずれも「きょうだい」でした(中学生の61.8%、高校生の44.3%)きょうだいの世話を始めた時期は「小学生のころから」が多く、「時間的余裕がない」という回答も多くみられました。

 

また、ひとり親家庭の場合は「見守り」のほか、「家事」や「保育所への送迎」など、担っている役割が大きいことも分かりました。このため、家庭での家事や育児を支援する新たなサービスを創設することにしています。

国の支援策(4)介護サービスの提供

Q 4つ目の支援策は?

 

介護サービスの提供です。

 

同居する家族に病気や障害があるなどして治療や介護が必要な場合、すでに医療や介護の事業所のスタッフが家庭と関わりを持っていることがあります。しかし、どのようなサービスを利用してもらうか検討する際に「子どもによる介護を前提としているケースがある」という指摘がありました。つまり、在宅で介護をする人がいるとして、介護サービスを利用する必要がないと判断されている恐れがあるのです。
このため、子どもが主に介護を担っている家庭には子どもによる介護を前提とせず、在宅むけの介護サービスの提供を十分に検討するよう、自治体などに周知することにしています。

どこに住んでいても必要な支援が届くように

Q 支援を進めるにあたって大事なことは?

 

国は、ヤングケアラ-の認知度を高める取り組みを進めることにしていますが、その際の注意点として、ヤングケアラーであることが悪いことだと受け止められないようにすることをあげています。
課題があるのは、子どもたちが家族の世話や介護をしていることではなく、それが過度な負担となって勉強に支障をきたしたり、子どもらしい生活が送れなかったりすることです。

 

今回まとまった報告書をもとに、厚生労働省や文部科学省が予算編成を進めますが、多くの取り組みが法律で義務づけられている訳ではないので、それを実際にやるかどうか決めるそれぞれの自治体の動きが大切になります。
どこに住んでいても子どもたちに必要な支援が届くように、自治体やそれをサポートする国には、子どもたちの声を受け止めて、実践につなげることが求められています。

国の支援策をまとめた報告書はこちら
https://www.mhlw.go.jp/content/000780549.pdf

 

  • 間野まりえ

    社会部 記者

    間野まりえ

    2011年入局。京都局・甲府局を経て2019年から厚労省担当。社会保障や労働問題を取材。

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