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推しのスイーツから「おじさんあるある」まで シニア世代のネット動画とは

  • 2021年5月22日

「今ハマっているコンビニスイーツ」というタイトルのネット動画があります。
語るのは⾼校⽣でも⼤学⽣でもなく、80歳のおじいさん。⻑年連れ添って介護が必要な妻と週に1度訪れるコンビニでまとめ買いする、お気に⼊りのプリンを紹介しています。
⼈⽣経験が豊かだからこそオリジナリティあふれる動画が作り出せるのではないか。こんな考えから、シニア専門の動画チャンネルをつくったり、シニア層向けの動画制作教室をはじめたりした団体が、埼⽟県にあります。その現場、のぞいてみました。
(さいたま放送局/キャスター 岩﨑愛)

シニア世代が出演する動画チャンネル

こちらが、シニア動画が掲載されているサイト。登録者数は5月21日現在225人ですが、独自のオーラを放っています。
どんなタイトルがあるか、見てみると…

・今ハマっているコンビニスイーツ
・おじさん あるある「その1 おじさんは武勇伝を語りたがる」
・のめり.com 第二回「集めた新選組グッズに囲まれ過ごす カフェだんだらの中原ゆりさん」
・生き方より死に方を考える時代

内容を簡単に紹介しましょう。

コンビニスイーツまとめ買いシニア

「今、ハマっているコンビニスイーツ」の動画では、1人ずつ1分という決まりで推しのスイーツを紹介します。80歳の男性は、次のように訴えました。

うちのかみさんは、内臓をいろいろ悪くしてさらに挫骨神経痛をやって半分寝たきり状態で週1回リハビリ行くんだけど、連れて行ったあと買い物するんですね。コンビニでスイーツをまとめ買いをします。セブンイレブンの金の最中を4個買うんです。そのほか豆大福とかどらやきとか、全部で15個から20個買って1週間ちびちび食べるというのが、かみさんの楽しみなんですね。金額的には大体4000円弱。その中で私に巡ってくるのはこれ1個。焼きプリン。これ1個。うまいんですよね!

のめり.com

「のめり.com」は仕事や趣味など、ただ自分の好きなことに淡々とのめり込む人を、男性が取材し紹介するシリーズ動画です。
「新選組」好きが高じて、新選組グッズに囲まれながらコーヒーを楽しめるカフェを開いた女性を紹介したり、認知症予防のために道行く人とおしゃべりがしたいと、自宅前に巨大なオブジェを飾る82歳の男性を紹介したりしています。

おじさん あるある

3本目。おじさん あるある「その3 おじさんはメガネが汚れている」という動画。これもシリーズのうちの1本です。女性とおじさんの2人が登場し、会話形式で話は進みます。

女性

今、豚骨ラーメン食べてきたんじゃないかっていう(ほど、めがねが汚れている)人いるじゃないですか

おじさん
おじさん

いますよやっぱり

女性
女性

おじさんどうしでも気づきますか

おじさん
おじさん

気づきますよ

女性
女性

でも拭かないってあの心理はなんですか?

おじさん
おじさん

見たいものが見えてればいい。見たいものしか見ていない!ほかのものはどうでもいい!

 

念のためにこの動画の制作動機は、「おじさんの⽣態を愛を持って理解しよう」という気持ちだそうです。

いかがですか?なんともいえない味わいとユーモアにあふれた動画の数々。ためになる情報にもあふれていて、高齢化が進んだ日本ならではのチャンネルだと確信しました。

“長生きするのも悪くない”と思ってほしい

このサイトを運営しているのが、さいたま市南区にある「BABA lab(ばばらぼ)」という団体。10年前から、シニアたち向けの学習会を開いたり、シニアの視点を生かした様々な商品開発のサポートをしたりしています。
代表は、大のおばあちゃん子だという桑原静さんです。
シニアたちがいきいきと社会と関わりながら暮らせる仕組みを作りたいと、団体を設立して以降、腕の力が弱ったお年寄りでも赤ちゃんを抱っこしやすいという「抱っこ用布団」や、目盛りが大きくシニアでも読みやすい「哺乳びん」など、シニアのアイデアから生まれた商品を開発してきました。

その桑原さんが、コロナ禍で感じていたのが、実はシニアの間でもネット動画の視聴が流行しているということです。視聴するだけではなく、シニアたちが発信する側に回れば、等身大のイキイキとした姿を広く伝えられると思ったのです。

BABA lab代表 桑原静さん
「超高齢化と言われる中、年をとったらどうなるのかなって不安を抱えている若い人がいっぱいいます。今のシニアってどうやって生活をしているのとか、どんな楽しみがあるのとか全然分からない。動画を通して、年をとっても出来ることを活かして元気にやっているんだよっていう姿を見せることで、生きる希望とか面白そうだって思ってもらえればなという気持ちがありました」

ユーチューバーデビューも夢じゃない︕︖

BABA labでは、ことし3月「大人の動画づくり・YouTube入門講座」と題した教室を開催しました。テーマの設定から撮影、編集のコツ、YouTubeでの情報発信方法まで教えたのです。50代から80代まで、23人が参加しました。

2年前まで、中学校の体育の教員をしていた木口幸夫さん(62)もその1人。退職後も人前に立つ活動を続けたいと、老人ホームなどで趣味の紙芝居の読み聞かせを行ってきました。しかしこのコロナ禍で披露の場や回数が減ってしまったため、「動画で紙芝居」を考えたといいます。

木口幸夫さん
「今、コロナということで制限されてしまい、活動が深まっていったり広がっていったりしないので、なんとかネットの⼒を借りてやれたらいいなと思いました」

後日、木口さんは、講座で学んだことを実践することにしました。
撮影するのは、さいたま市大宮区のシンボル「盆栽」をテーマにした紙芝居です。しかし、スマートフォンをビデオとして扱うことに慣れていないため、上手く三脚にセットすることができません。撮影していた私たちスタッフも見かねてアドバイスしました。

スマホのカメラが自分に向いています!

岩﨑キャスター「(スマホの表裏が)逆かもしれません」

 

木口さん「あ、そうですか。そうかそうか」

 

自分が入る画角に調整するのも一苦労です

木口さん「顔が入らない。入っていない」

 

顔が見切れてしまっています

木口さんは講座を受けてから1か月ほどしかたっていません。1つ1つの作業に、まだまだ時間がかかるようです。
今度は、カメラ代わりにしていたスマホから通知音が流れます。

 

木口さん「ジージーとかって鳴っていたんですよ。あれってこれですかね。わからないですか?」

 

カメラマン「通知をオフにしておけばいい」

 

音声マン「機内モードにしておけばいい」

 

木口さん「機内モードにしておけばいいんですか。ありがとうございます」

 

およそ3分間のコメント収録を、9テイク目にしてようやく完成させた木口さん。次は編集作業です。映像に音楽をのせる作業では、紙芝居の仲間を増やしたいという思いを込めました。

木口幸夫さん
「三脚にスマホを取り付けるってことも、やり⽅が分からなかったんです。それだけをとっても⾃分にとってはとても⼤きな発⾒でした。苦労していますが、出来た時には、そういう⼩さいことで感動しています」

シニア世代が等身大で作るネット動画。支援しているBABAlabは、「できた!」だけでなく「できなかった…」のリアル感も大切にしているそうです。

BABA lab代表 桑原静さん
「若い人がやるのももちろんノリがあって楽しくて面白いんですけれど、シニアならではの長年培ってきた経験とか視点とかすごく面白いです。こうした動画はもっと増えてくるんじゃないかなって思います。発信すれば必ず反応がある。それで社会とつながりというか、自分の発信したことは誰かが見てくれているという、そういう楽しさみたいなのを感じてもらえたら私はうれしいです」

  • 岩﨑愛

    さいたま放送局 キャスター

    岩﨑愛

    2018年からさいたま局。主に、埼玉県内でいきいきと暮らす高齢者を中心に取材。

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