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部活でSDGs? 「サスティナブル研究部」のユルくも真面目なエコ活動

  • 2021年5月20日

「地球にちょっといいことをしよう」をコンセプトに活動する、サスティナブル研究部(通称サス研)という部活が横浜市立東高校にあります。”意識高い”生徒の集まりかと思いきや、「バイトの合間に」「スカウトされて入っただけ」と、なんとも力の抜けた雰囲気。そもそもSDGsという言葉も知らなかったそうです。そんな部員たちが今やユニークな活動を次々と手がけ、内外から注目を集める集団に成長。そのワケを取材しました。
(首都圏局/ディレクター 福井瑛子)

はじめは“意識低い系”でした… 「サスティナブル研究部」

放課後の体育館前に、何やら集まっている生徒たちの姿が。
運動部のトレーニングのように見えますが、実は「体力発電機」という名の機械。ペダルをこいで発電した電力は、コンセントを通って、そのまま学校の電力として使えるという優れものです。

しかし、約2分間全力でこいでも、電子レンジを30秒動かせる程度。
男子生徒もぐったり…。

そんな彼らは、「サスティナブル研究部(通称サス研)」の部員たち。
おととし創部され、現在は11人の部員たちがSDGsにつながるさまざまな活動に取り組んでいます。

一見、“意識の高い”部活に見えますが、実は彼らのほとんどは、もともとSDGsに強い関心があったわけではないと言います。

Q.サス研に入部したきっかけは?

3年・高木くん

掃除が好きで放課後に教室を掃除していたら、先生にスカウトされました

3年・西本くん

サス研って名前がよかったから入部しました

3年・外岡くん

部の創立メンバーになったらかっこいいかなと思って

SDGsを"自分ごと"に

それぞれがちょっと微妙な動機で集まってできたサス研。はじめは周囲の生徒にも知られておらず、上級生にからかわれることもありましたが、学校内外でのゴミ拾い活動や、いじめ反対を訴えてピンク色のシャツを身につけて登校する「ピンクシャツデー」のイベントを行うなど、こつこつと活動を続けてきました。

サス研の生徒たちがもっとも大切にしているのは「SDGsに“自分ごと”として取り組む」こと。誰かにやらされていると感じていては、活動が広がっていかないと考えています。

自転車をこいで電気をつくる「体力発電機」も、生徒たちにできるだけ“自分ごと”としてエネルギー消費のことを考えてもらうために活用できないか、知恵を絞ります。

そもそも電力に興味ないわけじゃん?
実際に自分でこいでもらえば、『電気作るの大変だな』って思って、みんな節電してくれるかも
発電機2台使って競ってもらって、トーナメントにすれば・・・

議論した結果、まず運動部の生徒たちに筋トレ目的で日常的に使ってもらい、部活対抗のトーナメント戦を企画することになりました。

部員たちが“自分ごと”の大切さに気づいたのは「ハンガーバンケット」というワークショップがきっかけでした。

「ハンガーバンケット」は、参加者をくじ引きで「高所得・中所得・低所得」に分け、それぞれの所得に応じた食事(このときはお菓子)の違いから格差を疑似体験してもらうものです。これを独自にアレンジして学校で開催しました。

高所得者には、机といすが与えられ、きれいなコップでジュースも飲めます。
一方、低所得者は、段ボールに座らされ、ボロボロの紙コップで、飲めるのは水のみ。
ゲーム感覚のつもりでしたが、格差をリアルに感じられたことに驚いたといいます。

3年生・部長の渡邉くん
「当たり前すぎてありがたみを感じてこなかったことも、自分はただ運がよかっただけなのかもしれないと感じました。貧困ってなかなか目に見えないので、授業で習っても実感が湧きません。例えば、募金はいいことだと分かっていても、他人事という意識が強く、積極的にしようとは思えませんでした。この活動を通して、まずは自ら調べて、見て、考えることが大事だと思うようになりました」

“自分ごと”になったら… 主体的な活動が注目の的に

「SDGsは自分ごと」。その意識が生まれたことで、サス研の活動は一気に充実してきました。
従来から行ってきたゴミ拾い活動も、ただ拾って終わりではなく、どの場所に、どんなゴミが多いのか記録し、どうすれば減らせるのかまで徹底的に分析します。

結果は、高校のホームページやサス研のSNSで発信。ポイ捨てがなぜ地球の環境に悪影響なのか、ゴミを減らすことがSDGsにどうつながるのか、日々アップデートしています。

最近では、その活動が学校外からも注目を集めています。
今年2月には、SDGsに取り組む企業が多く参加したイベントで、並みいる大人たちを相手に対談。

イベントのポスターも、部員の一人がデザインした作品が採用されました。

3年生・津田さん
「絵の中の小人たち(私たちのような若者)が、ハサミやテープで、世界の国々を切り貼りしている(世界をつないでいる)イメージです。SDGsは、一部の人だけで取り組んでも達成できない、世界中のみんなで一緒に頑張ろうというメッセージを込めました」

学校の外の大人たちとの交流が広がっていることで、部員たちもサス研の活動の影響力ややりがいを実感していると言います。

3年生・部長の渡邉くん
「これまでは、SDGsと言われても、どこか他人事だと思っていました。でも、活動を通して色んな人たちと接していく中で、SDGs達成に向けて大事なのは、いま・これからを作っていく僕たちなんだと感じました。でも、僕たちだけで頑張っても問題は解決しない。誰もが、地球に住むひとりとして、身近なこととしてとらえる必要があると思います。僕たちサス研の活動が、関心を持ってもらうきっかけになれたらいいなと」

サス研のサステナビリティ(持続可能性)に暗雲が…唯一の2年生が奮闘

しかし今、ようやく盛り上がってきたサス研の活動の”持続可能性”が危機に瀕しています。
部員11人のうち、10人が3年生。6月には引退してしまうのです。

そのことに最も不安を感じているのが、唯一の2年生、三澤百々花さんです。
三澤さんもSDGsが何なのかも知らず、「バイトと両立しやすそう」という理由で入部しまし
た。そんな三澤さんの意識を変えたのは、サス研で始めて取り組んだイベント「古着deワクチン」
でした。

「古着deワクチン」は、全校生徒に呼びかけて古着を回収。運営企業から古着を入れる専用の
袋を購入します。袋1枚につき、5人分のワクチンが古着とともに途上国に届けられるという取
り組みです。

三澤さんはバイト代をすべて服に費やすほど、洋服が大好きです。
しかし、着なくなった服は、いつもゴミとして捨てていました。
この取り組みで、集めた古着は4袋分。20人分のワクチンを送ることができました。このとき
三澤さんは「自分にもできることがあるかもしれない」と初めて感じたそうです。

2年生・三澤さん
「自分がこうして古着を寄付することで助けられるのはすごいことだと思いました。発展途上国の方々にまだ会ったことはないけど、身近に感じました」

サス研の活動をこれからも続けていきたいと、三澤さんたちは新入生への勧誘に動き出しまし
た。
「古着deワクチン」のイベントに参加してもらい、サス研の活動に興味を持ってもらおうと
考えています。

「私1年生の告知行きたいです。ガチで新入生入ってくれないとヤバイ」
三澤さんは自ら手を挙げ、1年生の教室に直接告知に行くことにしました。

「サスティナブル研究部です。このイベントはSDGsにもつながるので、衣替えでいらなくなった服とか、気軽に持ってきてください。それと、サス研の2年生は私しかいなくて廃部の危機なので、ぜひ皆さん入部お願いします!」

当時の自分のように、小さな行動がSDGsにつながる面白さを知ってほしい。三澤さんは、精一杯思いを伝えて、サス研を持続させる仲間を募っています。

「皆まだよく分かってなさそうでした(笑) 私も最初は、SDGsが何を目指しているものなのか分かっていなかったけど、いまでは家族と食品ロスついて話すようにもなりました。自分でも地球の役に立つことがいっぱいあるんだよっていうのを広めていきたいです」  

取材後記

「部活でSDGsに取り組んでいる高校生たちがいる」
最初にそう聞いたときは、なんて志が高いんだろうと驚きました。ところが、実際に会ってみると、みんな”イマドキの高校生”という感じで、さらに驚きました。
SDGsってそんなに難しいことではなくて、身近なことからいつでも始められる。その感覚を、私たち含め世界中の人たちで共有していかないといけないということを、サス研の高校生たちに教えてもらいました。
その後、サス研には新たに7人の新入部員が入部したそうです!

新入部員とサス研のメンバーたち(右端は筆者)

  • 福井瑛子

    首都圏局 ディレクター

    福井瑛子

    福岡県出身、2019年入局。伊豆大島での台風被災地取材や、発達障害・聴覚障害などをテーマに取材を続ける。

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