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シャトレーゼ ブドウ農家の長男がコロナ禍で最高益の企業を育てるまで

  • 2021年5月10日

山梨県甲府市にある菓子メーカー「シャトレーゼ ホールディングス」は、コロナ禍の厳しい環境のなか成長を続け、全国に約570店舗を展開しています。昭和29年、わずか4坪の小さな菓子店からスタートしたこの会社がなぜ消費者に支持され続けているのか、87歳のいまなお経営の最前線にいる創業者の齊藤寛会長に聞きました。
(甲府放送局/記者 青柳健吾)

ブドウ農家の長男として生まれて

シャトレーゼの齊藤寛会長は、ブドウ農家の7人兄弟の長男として生まれました。もともとブドウ作りが好きではありませんでしたが、「どうせ跡を継ぐなら好きになってから」と、高校卒業後、山梨農業試験場で研修生として1年間ブドウについて学び、ようやく面白いと感じるようになってきたとき、転機が訪れました。

弟がはじめた菓子店の経営がうまくいかず、一緒にやることになったのです。
20歳のときでした。

中央が齊藤さん

そして、昭和29年、今川焼き風のお菓子「甘太郎」のお店を山梨県甲府市に出店しました。
当時は戦後で、菓子作りに使われるのは人工甘味料が中心でしたが、北海道のあずきと貴重な上白糖を使ったお菓子は評判を呼び、10店舗に増えました。

50円のシュークリームを10円で売ったら

問題になったのは夏です。冬は焼きたてのお菓子はよく売れますが、夏はそうはいきません。そこで昭和39年、アイス工場を作ってアイスクリーム業界に参入したものの、大手メーカー相手に苦戦します。

そこで、大手メーカーが参入していなかったシュークリームの生産を始め、常温でも販売できるような衛生的な商品が完成しました。「シャトレーゼ」という社名に変更したのは、この頃です。

ところが当時、小売店の多くには冷蔵庫がありませんでした。そこで、1個50円程度の商品を格安の10円で売ったら、常温で置いてもすぐに売れるのではないか、すぐ売れるなら冷蔵庫はいらないのではないかと考え、販売をはじめたところ、大ヒットしたのです。

大ヒットしたシュークリーム

齊藤寛会長
「小売店に50個入りの5段かさねの250個単位で持って行ったけれど、店側はとても売れないということで、『売れなかったら捨てていいですよ』と言っていたんです。そうしたらすぐ電話が来て『売れちゃったから持ってきてくれ』ということで、勢いに乗りました。全盛期には1日50万個ぐらい売れましたね」

卸から直売へ 上場しない理由は社是にあり

順調に事業を拡大し、昭和59年には工業団地に巨大な工場も作りましたが、今度は、創業時から苦楽をともにした弟や、頼りにしていた工場長が相次いで亡くなりました。
妹も病気で一時仕事から離れ、齊藤さんは幹部として1人でやらざるを得なくなりました。

そこで、これまでスーパーを中心に商品を卸していたのを、メーカーが直売するという形に変更し、「地元の素材を使っておいしく、リーズナブルに」というコンセプトで、スーパーに卸すような安い値段で直売店で販売するようになりました。

そこからはチェーン店がどんどん広がり、いまでは国内で約570店舗を展開するまでになったのです。

これだけの規模になっても、実は上場していません。なぜなのかを尋ねると、齊藤さんはこう答えました。

齊藤寛会長
「シャトレーゼの社是は『三喜経営』というんです。まずお客様が第一、次が取引先、最後が社員。上場すると株主がいちばん前にきちゃうんですよ、お客さんのためじゃなくて株主のために動かされちゃうことになるので。儲けようと思うと儲からない。いかにファンを作るかが私たちの仕事なんです。私は常に会社からモノを見てどうやったら儲かるかじゃなくて、お客様の側からみてここがまだ足りないなと、そこを私はやっぱり考えるんですね」

社是「三喜経営に徹しよう」
一、お客様に喜ばれる経営
一、お取引先様に喜ばれる経営
一、社員に喜ばれる経営

コロナ禍での快進撃の理由は

いま、コロナ禍でスイーツ業界も厳しい経営を迫られる中で、最高益を記録しています。齊藤さんは、消費者がより素材の良さや価格の安さを求めるようになったと感じています。

齊藤寛会長
「コロナでいまお客さんが何を求めているかというと、素材にこだわって、さらにいかにリーズナブルなものを買うかということだと思います。買い物も、できるだけ近くでおいしいものをということで、百貨店などで買っていたお客さんが、何もそこまで行くことはないじゃないか、商品は豊富だしリーズナブルに買えるじゃないかと思ってもらえて固定客がついてくれたということが非常に大きなことだと思います」

“世界のシャトレーゼ”を目指して

87歳の齊藤さんですが、夢はまだまだあります。それは、海外進出です。平成27年にシンガポールにアジア1号店をオープンさせ、これまでにインドネシア、台湾、香港など、約100店舗を出店しています。現地での生産も増やしていく方針で、インドネシアの工場が完成したのに続き、ベトナムにも建設する計画です。

2020年7月 オンライン会議で海外試食会

齊藤寛会長
「国内はまだ3倍ぐらいはいけると思います。さらに海外含めて、日本のシャトレーゼというのが世界のシャトレーゼになるような形で推し進めていきたい。87になりますが、まだまだこれからやりますよ」

  • 青柳 健吾

    甲府局 記者

    青柳 健吾

    2017年入局。入局後、警察・司法を担当し、現在は経済分野を担当。

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