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コロナ禍の“連休明けがつらい”子どもたち 周囲の大人ができること

  • 2021年5月4日


「休み明けはジェットコースターが落ちる前のようなもの。一番緊張するし、怖いんです」
不登校の児童生徒を見守っている支援者は、5月の大型連休が明け、子どもたちが学校に戻る時期の心境を、こう例えます。
特にことしは、長引くコロナ禍も加わり、専門家も、子どもたちにさまざまな影響が及んでいるのではないかと懸念しています。
「学校にいきたくない」「死にたいと思ってしまう」
子どもの心の危機に、親や周囲の大人はどう向き合えばよいのでしょうか。

(首都圏局ディレクター 熊谷百合子 有賀菜央)

ことしの連休明けは注意

冒頭のジェットコースターのたとえは、NPO法人全国不登校新聞社の石井志昴編集長のことばです。石井さんは大型連休が明けるのを前に、子どもたちを見守る必要性があると、各メディアにメールを送って呼びかけていました。

石井さん
「緊張感の高い学校生活を送ったあと、連休中にその緊張の糸がいったん切れます。休みが明けて、また学校へ戻ってかなきゃいけないって時に、必要以上に追い詰められてしまうと考えられます。この時期はよくジェットコースターが落ちる前に例えられるんですが、落ちる前の方が、落ちている時よりもむしろ恐怖感が強いと言われています。そうした恐怖感や緊張感から逃げるための方策として、『自殺しかない』と思ってしまうケースも出てくる可能性があるんです」

特にことしの連休明けについて、石井さんが危機感をもっているのは、去年1年間に自殺した小中高生の数が499人と、統計を取り始めた1980年以降で過去最多となってしまったことと、その兆候が去年の場合、大型連休が終わる5月以降、顕著になっていたからです。さらに、そこには長引くコロナ禍が影響していると見られると言います。

「いろんな現場の話を聞くと、昨年は5月ぐらいからメンタル、精神的に不安定だっていう相談をたくさんの人が受けていたようです。今回は、未知のコロナウイルスとの戦いが1年以上続いたあげくの3度目の緊急事態宣言です。先行きが見えないなかで、緊張の糸がずっと切れずにいることで心が危うい状態になっていると思います。今は、どの子でも自殺のリスクがあることを前提に、子どもと向き合ってほしいです」

長引くコロナ禍 子どもたちの心に危険信号

長期化するコロナ禍が、子どもの心に及ぼす深刻な状況を示すデータもあります。
国立成育医療研究センターが去年12月までに、小学4年生から高校生までの715人を対象にオンラインで行ったアンケート調査です。PHQ-Aという9個の質問からうつ症状の度合いを調査したところ、回答した小学4~6年生の15%、中学生の24%、高校生の30%に、「中等度以上のうつ症状」があることが分かりました。「中等度のうつ症状」とは、うつ病と診断されるラインとされています。

 

※データを四捨五入しているため100%にならない場合があります

また、「この1週間で、死にたい、自分を傷つけたいと思ったことがあるか」「実際に、自分のからだを傷つけたことがあるか」という問いに対して、およそ4人に1人の子どもが「ある」答えたことも分かりました。

 

国立成育医療研究センターの統計を掲載した全国不登校新聞のプレスリリースより


そして、アンケートの自由記述欄には、多くの子どもたちからのコロナ禍での不安や不満の声が記されていました。

 

(小学5年生)
「コロナになったらいじめられないかな」

 

(小学3年生)
「コロナのお休みでコミュニケーション力が落ちて、本当にコミュニケーションがとれない」

 

(小学3年生)
「学校が緊急事態宣言で、少し休みになって勉強がおくれて勉強についていけない」

 

(高校3年生)
「濃厚接触で1週間休んだ上でテストだから不安」

 

さらに海外では気になる調査結果も出ています。
イギリスの調査によると、子どもの落ち着きのなさや注意力の低下など、行動や情緒の傾向を示す数値が、1度目よりも2度目のロックダウン後に悪化していることが分かったのです。コロナ禍の長期化が子どもの心に深刻な影響を与えていると考えられます。

国立成育医療研究センター 社会医学研究部 半谷まゆみ研究員

「コロナはまだまだ終わりが見えず感染が広がっている状況で、今回の緊急事態宣言は去年とはまた違う影響を子どもたちに及ぼしてゆくだろうと思っています。周囲の大人たちも余裕がなく、子どもたちの変化を感じることが難しくなってきていると思います。
このまま放っておいてしまったら、子どもたちのメンタルがもっともっと悪くなっていくのを見ているだけになってしまうので、予防したり早期発見して介入したりしていくのが重要です」

子どもの異変に気づくために

コロナ禍でいつもとは違う連休明け。保護者は、そして周囲の大人たちは、どう向きあえばよいのでしょうか?前述の不登校新聞の石井さんはまず子どもの異変のサインとして次のような事例をあげます。

1)連休明けに体調不良や学校への行き渋りがある
2)登校日の朝、急に起きられなくなってしまう
3)手洗いやお風呂が長くなる
4)ペットやきょうだいをいじめる

こうしたサインに気づいたときは、頑張って克服させようとせず、いったん学校や塾を休ませて子どもの緊張やストレスを和らげさせることが先決だと言います。

石井さん
「学校や塾に行くのが無理かどうかを決めるのは、子どもです。大人がついつい“これは大丈夫じゃないか”とか“もっと頑張れる”と決めてしまうけれど、そうじゃなくて、子ども自身がやりたいかどうか、やれるかどうかで考えてほしいです」

子どもが求めているのは… 「否定しないで」

では、子どもたちはどう接してほしいと思っているのでしょうか。
現在20歳のさゆりさんは、小学校の頃からのいじめや不登校の経験から、何度も死にたいと考えたことがありました。親や周りの大人たちには、子どもの「死にたい」ということばの裏にある気持ちに気づいてほしいといいます。

さゆりさん
「“死にたい”イコール“本当に死にたい”と思っているわけではないというのを知ってほしいんです。死ぬしか逃げ道がないと思ってしまっていることを察してほしい」

さゆりさん自身がつらいときに頼ることができたのは、親ではなく高校時代の友達や、先生でした。

「私が本当につらいときに相談しても、“でもそれは違うよね”“何でそういうことにこだわるの?”と言われました。親の経験談とかべらべら話されたりもしました。考えを押しつけずに話を聞いてほしかったです。
友達や先生は、自分と対等な立場で話を聞いてくれました。先生も、教師と子どもという上下関係じゃなくて、一人の人間として私を見てくれている感じがしました。考えを否定せずに聞いてくれたことが大きかったかなと思います」

”清水の舞台から飛び降りる気持ちで告白している”

最後に、自殺対策に取り組む国立精神・神経医療研究センターの精神科医・松本俊彦さんに話を聞きました。松本さんは、子どものSOSを最初に受け取るいわゆる「ファーストコンタクト」の際の対応が重要だと指摘します。

松本俊彦さん
「まず、本人の訴えをジャッジしないことです。『死にたい』とか『自分を傷つけたい』などと言われて、それを頭ごなしに禁止したり、否定してしまうと、その先の相談に行けなくなります。子どもが愚痴や弱音や悩みごとを言ったときには、褒めてあげてほしいです。それこそ清水の舞台から飛び降りるような気持ちで悩みを告白していますから」

しかし、子どもを前にして具体的にどんなことばをかければよいのか、分からない人も多いのではないでしょうか。その時に必要なのは「何かつらいことあったの?」というひと言だと説明します。

「自分の願望を満たすような誘導尋問はしないことです。『大丈夫?』って聞かれたら『大丈夫』って答えるしかないです。『あなたまさか自殺とか馬鹿なこと考えてないわよね?』って、馬鹿なことと言われたら『いや、考えてないよ』って言うしかないじゃないですか。
だから、冷静に『何かつらいことがあったの?』って聞いてあげればいいと思います。子どもたちはすぐには言わないかもしれない。例えば学校でいじめがあるとか、そういう境遇に置かれている自分たちを恥ずかしいと思っているし、親が知ると失望するんじゃないかとか恐れているんです。そういう気持ちもくみ取ってあげながら、『そうか、今は言えないなら、いつでも待っているから話せそうなときには話して欲しいんだ』って言ってください」

また松本さんは、子どものSOSに気づいたときには親だけで抱え込まず、保健所や精神保健福祉センター、児童相談所など公的な支援機関も気軽に利用してほしいといいます。また、数は十分ではないものの、メールやLINEを活用した相談窓口にアクセスすることも有効です。
最後に、松本さんは、コロナ禍で悩みを抱える子どもたちにこうメッセージを語ってくれました。

「辛いことがあったときに自分一人で抱え込まないで。助けを求めたり、弱音を吐いたりすることが実は本当の強さであって、苦しいことがあってもやせ我慢して頑張るのは本当の強さじゃないよって。親や身近な大人では安心して依存できない場合もあるかもしれないけど、SNS相談や親戚、学校の先生でも、勇気を出して相談することを諦めないでほしいと伝えたいです」

相談窓口はこちら

  • 熊谷 百合子

    首都圏局 ディレクター

    熊谷 百合子

    2006年入局。福岡局、報道局、札幌局を経て2020年から首都圏局。

  • 有賀菜央

    首都圏局 ディレクター

    有賀菜央

    2015年入局。名古屋局、静岡局を経て2019年から首都圏局。 これまでに家族問題や不妊治療に関心を持ち取材

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