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廃棄Tシャツが糸に Tシャツから考える「つくる責任つかう責任」

  • 2021年5月3日

私たちが着ている衣服の多くはそのまま捨てられていて、ファッション業界は、石油業界に次いで2番目に環境を汚染する産業と指摘されています。こうしたなか、身近なTシャツから無駄を無くしていこうと千葉県で会社を立ち上げた男性を取材しました。SDGsの目標の1つ、「つくる責任つかう責任」を考えます。
(千葉放送局/記者 櫻井慎太郎)

「ごみ」のTシャツから作る糸

廃棄された大量のTシャツ。
こうした布を編み物用の太い糸に作り直す会社が千葉県八千代市にあります。

Tシャツ工場の製造過程で出る生地の切れ端や、消費者から回収したTシャツの生地をつなぎ合わせて糸にしています。
作業の一部は、地元の社会福祉協議会と連携し、高齢者や社会復帰を目指す若者に担ってもらっています。

1玉およそ100メートルで、Tシャツ8枚分が再利用されていて、ネットなどを通じて千円から3千円程度で販売しています。

WAcKA(輪っか)梶原誠 社長
「丸みと膨らみがあって、一般の手芸糸とは違う独特の風合いがある。何と言っても、もともと『ごみ』なのでそれを活用して生かすことがこの糸の最大の特徴ですね」

太めの糸で高齢者も使いやすい

命まで奪う大量生産に疑問を感じて

梶原さんは、元々Tシャツメーカーに勤めていました。低価格で大量生産することで、雇用を生み出しているとも感じていましたが、バングラデシュに駐在して製造現場に通ううちに、そうしたものづくりのあり方に違和感を覚えるようになったといいます。

海外駐在中の梶原さん

そんなときに、縫製工場などが入った近くのビルで崩落事故が起き、輸出用の服を作っていた労働者など1100人以上が犠牲になりました。(2013年 ラナ・プラザ崩落事故)

バングラデシュでは、安い人件費を目当てに多くのアパレルメーカーが進出していましたが、この事故によって、大量生産のために過酷な環境で働く人がいることが浮き彫りになり、梶原さんは、大量生産への疑問を強く持つようになりました。

梶原誠さん
「今までそれだけ生産現場の人を苦しめて、ましてや命まで奪っているんだということに衝撃を受けました。企業や消費者が安いものを求めること自体が、戦争やテロじゃなくても人を殺すきっかけを作っていたり、そもそもそれに加担したりしているんじゃないかなと思い始めました」

工場内の数千台のミシンの振動も崩落のきっかけとされた

その後、2016年7月に首都ダッカで起きたテロをきっかけに、急遽日本に帰国することになった梶原さんは、帰国して2週間後には会社に退職届を出しました。
まずは、自分が大好きで生産に関わってきたTシャツから無駄をなくしたいと、4年前に会社を立ち上げたのです。

ワークショップを意識改革のきっかけに

コロナ禍のため回数を減らして少人数で開いている 

梶原さんは、服を大量に消費して廃棄する現状を変えられないかと、編み物のワークショップも定期的に開いています。

この女性が作っているバッグは廃棄されたTシャツから生まれた糸で、およそ1年かけて編んでいます。

梶原さんは、モノをつくるのにかかる時間や労力を実感して、一人一人が意識を変えることが第一歩だと考えています。

参加者の女性
「前はばんばん買っていたんですが、だいぶ買い物が減りました。そうすると買う時に考えながら買うことが増えました」

梶原誠さん
「廃棄するTシャツを使って編み物をすることは、表面的な解決でしかなくて、消費行動やふだんの生活スタイルを変えていくことが根本解決につながっていくと思うんです。なので、意識変革というか、ちょっと大げさに言うとそのきっかけになればいいのかなと思いますね」

同じゴールを目指して

こうした活動に刺激を受けて若者が動き出しています。

この春、大学を卒業した2人は、人にも環境にも優しい服を作りたいと会社を立ち上げました。

三井里菜さん(23)
「廃棄される予定だった生地を使うようにして、着る心地よさもあるんですけど、このお洋服が誰が作ってくれてどんな素材から出来ているんだろうというところまでちゃんとクリアになっている、そこまで心地いいお洋服を提供しようとこだわって作っています」 

2人は梶原さんから経営のアドバイスを受けています。

オーダーメイドの服作りをして、製造での無駄をなくすとともに、消費者に長く使ってもらいたいとしています。

薄田大輝さん(23)
「梶原さんは、商品の魅力だけでなく、どういった環境への配慮のしかたをされて作られているのかも積極的に発信されていて、環境や考え方も一緒に発信していくことの大切さや重要さはすごい勉強になってます」

梶原誠さん
「40代を超えた世代の中では、意識高い系とやゆされがちなんですけど、今の若い人たちは考えたらすぐ行動に移せるので、こちらが与えているというより、与えられている、一番刺激を受けているのは僕自身です。同じゴールを目指してるのかなという気はするので、世代は関係なしにやっていければいいし、先輩面するつもりもないので一緒になって何かやっていければいいかなと思います」

ものを大切にして無駄にしない心を育てる。
梶原さんの思いが世代を超えて広がっています。

  • 櫻井慎太郎

    千葉放送局 記者

    櫻井慎太郎

    2015年入局。長崎局、佐世保支局を経て、千葉局で県政や選挙事務局などを担当。

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