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コロナで “自主休校”7000人超 感染不安で学校に行けない子どもたち

  • 2021年4月7日

この春、小学2年生になった男の子は、入学以来、一度も登校できていません。生まれつき重いぜんそくがあり、医師から「コロナに感染したら重症化のおそれがあり、登校を見合わせるのが望ましい」と言われたからです。
新型コロナウイルスの感染への不安を理由に学校を休む、いわゆる“自主休校”の小中学生はどれだけいるのか。NHKが東京23区と政令指令都市に、昨年度1日でも自主休校した児童・生徒の数を取材したところ、調査を行っていた一部の自治体だけでも、合わせて7000人に上ることがわかりました。
(首都圏局/記者 戸叶直宏  ディレクター 松田大樹)

1年間1度も背負わなかったランドセル

都内に住むいぶきくんは、この春、小学2年生になりましたが、入学以来、一度も登校できていません。
祖母が買ってくれたランドセルは、使わないままです。

いぶきくんは、生まれつき重いぜんそくを患っていて、発作を抑える薬が欠かせません。

薬を吸入するいぶきくん

医師に相談したところ、「コロナに感染したら重症化のおそれがあり、登校を見合わせるのが望ましい」と言われました。

母親
「新型コロナウイルスに感染して死んでしまうかもしれないリスクを考えたとき、学習面は取り戻せても、命は取り戻せないと考えて休むことにしました。夏には落ち着いて2学期からは行けるかなと思っていたんですが…」

感染者の人数を親に聞くいぶきくん「感染って聞くと怖くなる」と涙ぐんだ 

勉強習慣がつかない 母親の悩み

母親は、勉強の習慣をどうすればつけられるのか、ずっと悩んできました。
週に1回、学校からプリントをもらって家で勉強することにしていますが、難しいといいます。

「宿題をやりたくない」と隠れてしまった

ぜんそくによるせきで、不安を与えてしまうと考え、友だちとも遊べていません。
いぶきくんはこう訴えました。

いぶきくん
「友だちの前でせきしたら、嫌だなって思われちゃうから、外には行ってない。友だちと一緒に外で遊びたい。宿題も勉強もみんなで一緒にやりたい」

母親
「他の2年生と同じように、周囲との関わりとか、授業に慣れていくとか、1年生でやることを経験できないまま、置いてきぼりになっちゃったなと心配です。楽しそうに道を歩いている小学生を見ると、ぜんそくさえなければ、こういう体に生まなければ、と考えることがあります」

“自主休校”の小中学生 7000人超

感染不安を理由に“自主休校”する子どもたちはどれくらいいるのか。
NHKでは、東京23区と全国20の政令指定都市に取材しました。
すると、25の自治体は調査を行って数を把握していた一方、4割にあたる18の自治体は調査を行っていませんでした。

調査を行っていた自治体で、昨年度、1日以上感染不安を理由に休んだ小中学生は、合わせて7285人に上りました。(※受験を控え、感染しないよう休んだケースも含む)

▼調査あり
港区 新宿区 台東区 墨田区 品川区 目黒区 大田区 中野区 杉並区 豊島区 北区 荒川区 練馬区   
札幌市 さいたま市 千葉市 川崎市 相模原市 新潟市 名古屋市 堺市 神戸市 岡山市 福岡市 熊本市

▼調査なし
千代田区 中央区 文京区 江東区 世田谷区 渋谷区 板橋区 足立区 葛飾区 江戸川区   
仙台市 横浜市 静岡市 浜松市 大阪市 京都市 広島市 北九州市

(調査しなかった理由)
・コロナ対応で学校に調査の負担をかけられない
・文部科学省から要請がない
・一定数いるが、各学校で対応している
・受験や不登校などほかの要因が混在する など。

オンライン授業で“学びの保障”は

“自主休校”する子どもたちへの学びをどう保障するのか。
文部科学省は、全国の自治体に通知を出し、例としてオンラインを活用した学習の重要性を挙げています。

ただ、“自主休校”の児童・生徒に対して、オンライン授業を行うことができるかどうか聞いたところ、
「できる」と回答した自治体は9つだけで、2割にとどまりました。
一方、「学校によってはできる」としたのが16の自治体、「課題がありできない」と回答したのは、18の自治体でした。
※各自治体の詳しい状況は、記事の最後に一覧で紹介しています。

(オンライン授業ができない理由)
・子どもたちの個人情報が流出するおそれ
・教員が多忙で余裕がない
・ハード面の整備が追いついていない、など。

専門家 「できることから少しずつ」

教育行政に詳しい専門家は、ルールを作って個人情報の問題を解決した上で、教員の負担を減らす工夫が必要だと指摘します。

日本大学文理学部 末冨芳教授
「現場の先生たちは、コロナ対策に加え、対話などを重視する新しい指導に取り組んでいて、負担が大きいのも事実です。そこでインターネット接続などをICT支援員が代わりに行うなど、担任にすべてを押しつけない環境づくりが大事になります」
「日本の学校はこれまで登校することを重んじてきましたが、タブレット端末の整備がほぼ完了し、コロナの感染が長期化するのも見えてきているので、教育界も発想を切り替える必要があると思います。対面もオンラインもすべてを完璧にというのは難しいので、たとえば、週に1回でも朝会をオンラインでつなぐなど、できることから少しずつ取り組んでいくことが大切だと思います」

自主休校の小中学生へのオンライン授業の対応状況(東京23区と政令指定都市に取材)

東京23区と政令指令都市に聞いたオンライン授業の対応状況を一覧にまとめました。

  オンライン授業 実施状況や理由
千代田区

課題があり実施できていない。

放課後の面談やプリントで対応。子どもの顔や声など個人情報について慎重に検討。

中央区

始めている学校もある。

 

港区

実施している。

個人情報保護は了解が取れた。

新宿区

まだできていない。

端末などの準備に時間がかかった。新年度内には充実させたい。

文京区

実施している。

蓄積があった。個人情報保護は、入学当初に確認している。

台東区

まだできていない。

電話や家庭訪問で補っている。オンライン朝の会は始めている。

墨田区

始めている学校もある。

プリントが基本という考え。個人情報は保護者に了解を取った。

江東区

課題があり、実施していない。

動画教材と問題提出のアプリを導入し、好評を得ている。オンライン朝の会は導入した。

品川区

始めている学校もある。

端末を貸し出してやった学校もある。個人情報は互いに気をつけるように指導。

目黒区

授業配信の形で始めている。

個人情報保護は、保護者の同意を得た。

大田区

課題があり、まだできていない。

授業を録画して配信などは試行したが、個人情報保護が課題。

世田谷区

始めている学校もある。

学校によって差がある。

渋谷区

実施している。

 

中野区

実施している。

最初からオンライン授業の活用を呼びかけていた。

杉並区

実施していない。

現在は、継続して休む感染不安の子どもはいないと把握している。

豊島区

始めている学校もある。

 

北区

課題があり、実施していない。

黒板の字が読みにくいなど課題が見つかった。現在は、端末で授業配信型の教材を活用。

荒川区

始めている学校もある。

すべての授業で活用する学校もあるが、教員への負担や研修などの課題もあると感じる。

板橋区

課題があり、実施していない。

端末の使い方で、健康被害、成人向けサイト、データ使用量などの課題が多い。

練馬区

課題があり、実施していない。

ずっと映っている教員側、見ている子ども側、双方の負担が大きく慎重に検討する。

足立区

まだできていない。

通常の授業ではまだだが、土曜授業で試行するなど、取り組みを進めている段階。

葛飾区

まだできていない。

環境的にまだ難しい。

江戸川区

課題があり、まだできていない。

個人情報保護や教員の指導力などの課題がある。

大阪市

始めている学校もある。

通知で示してはいる。教員の研修などを進めていきたい。

名古屋市

まだできていない。

方針は出せていない。プリントの配布などはオンラインで始めている。

京都市

実施している。

環境は整っている。

横浜市

課題があり、していない。

個人情報保護が難しい。下校後の登校や、オンラインでの状況の把握はしている。

神戸市

始めている学校もある。

 

北九州市

中3限定で始めている。

教育委員会によるオンライン授業。

札幌市

始めている学校もある。

教育効果があるのかがまだわからないことが課題。

川崎市

始めている学校もある。

家庭訪問や課題の配布が基本という考え。

福岡市

始めている。

6月から始め、12月からは指導要録上の出席扱いにしている。

広島市

始めている学校もある。

促しているが、無理強いもできない。プリントや放課後に登校するケースの方が多い。

仙台市

始めている学校もある。

プリント配布や電話での指導が基本だと考えている。

千葉市

要望に合わせて始めている。

各学校の担当者の研修は11月に行った。

さいたま市

実施できた学校もある。

進めていきたい。

静岡市

実施できていない。

方針が出せていない。やれるところから始めてほしいが、把握できていない。

堺市

課題があり、実施できていない。

個人情報保護について議論が必要で、教員研修もできていないので、まだ難しい。

新潟市

実施できていない。

方針が出せていないが、やれるところから始めてほしいと考えている。

浜松市

始めている学校もある。

できるところから始めてほしい。

岡山市

実施できていない。

今後の状況によっては、行う可能性もある。

相模原市

始めている学校もある。

環境は整った。

熊本市

授業を配信する形で始めている。

今年度から、オンラインでの共同学習の試行もする。

  • 戸叶直宏

    首都圏局 記者

    戸叶直宏

    2010年入局。福岡局 横浜局で事件を担当したあと、現在は首都圏局で教育や貧困、地域の問題などを幅広く取材。

  • 松田大樹

    首都圏局 ディレクター

    松田大樹

    2015年入局。長崎局で国境離島や原爆関連を取材し、2019年から首都圏局。 これまで五輪や災害関連、コロナ禍の教育現場などを取材。

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