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守り続けてきた銚子沖のキンメダイ 原発事故10年漁師の思い

  • 2021年3月9日

年中脂がのり、煮付けでも刺身でもおいしいとされる銚子沖のキンメダイ。海外の食通にも評価されつつある中で、地元の漁師たちは今、大きな懸念を抱いています。
東京電力福島第一原子力発電所で出た汚染水を処理した水が増え続け、貯水タンクが来年の秋以降に満杯になる見通しだからです。
この10年、風評被害と闘ってきた漁師たちの今の思いです。
(千葉放送局 成田支局/記者 岩澤千太朗)

今も続く放射性物質検査 基準超は一度もなし

震災の後、水揚げ量が10年連続日本一の千葉県の銚子漁港です。魚の安全性を示すため、放射性物質の検査が今も週に3回行われています。これまでに基準値を超えたことは一度もありません。

銚子市水産課 平野寛 主査
「検査を始めてから今まで市で検査をしたものについては安全基準値を超えるものは1度もありませんので、安全で安心だということが言えます。日本国内では風評被害は薄らいでいますが、輸出でまだ受け入れてもらえない国もありますので、引き続き市として情報発信をしていくことが大切だと思っています」

原発事故以降守ってきた銚子沖のキンメダイ

銚子市で漁業を営む田邉克巳さんです。
千葉県沖で捕れるブランドのキンメダイの漁をしています。

田邉克巳さん
「銚子沖のキンメダイは、周年脂が乗ってすごいおいしいんです。最近は海外にも出していて、タイの人にしても、おいしい魚は分かってもらえますよね。煮つけはあまり喜ばれませんが、刺身とか寿司とか、そういったもので喜んで食べてもらっています」

ただ、原発事故が起きた当時、銚子で水揚げされた魚の買い控えが起き、価格が大きく下がったといいます。このため田邉さんは震災のあと、漁協の仲間とともに首都圏を訪れ消費者に銚子の魚の安全性をPRする取り組みを続けてきました。

田邉克巳さん
「震災後もキンメダイは捕れたのですけど、捕っても3分の1の値段なんです。経費を考えたらもう商売にならない。船は止めて、安全安心を訴えに行こうということで一丸となって、キンメ漁師全体でやりましたよ」

どうなる原発汚染水問題

地道な努力を繰り返してきたこの10年。しかし、銚子の漁業関係者は、原発で増え続けるトリチウムなどの放射性物質を含む水の処分をめぐり、強い懸念を抱いています。
資源エネルギー庁は、廃炉で出た汚染水を処理した水が増え続け、貯水タンクが来年の秋以降に満杯になる見通しを示しています。

去年10月、国が銚子市で開いた意見交換会では地元の水産関係者から海洋放出に反対する意見が相次ぎました。
千葉県漁業協同組合連合会は、海洋放出は受け入れられないとした上で、国が責任を持って風評被害の対策を含めた議論を進めてほしいとしています。
一方、政府は、「先送りできない課題だ」として風評対策も含め、適切なタイミングで結論を出したいとしています。

千葉県漁業協同組合連合会 坂本雅信会長
「風評被害っていうのは一番問題なんだと思ってます。どういう対応を国ができるのかということを我々と向き合って話をしてもらいたい」

地元漁師の思い

銚子沖でキンメダイ漁を続ける田邉さんも、海洋放出すれば、再び魚の買い控えが起きるのではないか。原発事故のあと韓国と中国、それに台湾は千葉県で水揚げされた魚の輸入を停止している中で、さらに輸入を規制する国が増えるのではないかと懸念しています。

田邉克巳さん
「あのタンクを見ると相当な数なんですよね。それを放出された場合には必ず風評被害というものは、出てくると思います。10年前をまた思い出しますよね、やっとここまで風評被害がなくなったのに、またかよっていうような感じです。やはり海のものに対して、影響がないっていうぐらいなものじゃなければ賛成はできませんよね」

  • 岩澤千太朗

    千葉放送局 成田支局 記者

    岩澤千太朗

    平成28年入局 大阪局を経て現所属 成田空港の航空取材や地域の漁業・農業の取材にあたる

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