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コロナ自粛生活を頑張るあなたへ「その拍手、自分にも向けよう。」

  • 2021年3月1日

番組放送前日の深夜、出演予定のゲストから届いたメールの添付画像を開いた瞬間、思わず涙があふれました。「その拍手、自分にも向けよう。」というイラスト。新型コロナウイルスの影響で自粛生活が長引く中、「正直、ちょっと疲れちゃったな…」と感じていた私が、まさに言ってほしかったメッセージでした。
この1年、外出自粛や感染対策を頑張ってきた自分自身や、ひとりひとりにエールを送りたくて作った番組の裏側を、みなさんにも少しだけ知っていただきたくて記事を書きました。
(首都圏情報ネタドリ!/ディレクター 柳田理央子)

この1年頑張ったひとりひとりにエールを送りたい

「コロナ自粛をがんばる ひとりひとりにエールを」という番組では、「ほめよう。わたしたちを。」というキャッチコピーで、コロナ禍を生きるひとりひとりにエールを送った大手商業施設の広告や、感染対策を続ける人たちを「無名のコロナファイター」だとたたえる記事を書いた医師などを取材しました。

●医師についての記事はこちら(大手商業施設の広告に関する動画は記事の最後にあります)
國松医師の記事は“コロナの処方箋”「みんなすげーし、あなたもすげーよ」

●ゲストのりゅうちぇるさんのインタビュー記事はこちら
りゅうちぇるさん コロナ自粛疲れに効く“ポジティブ思考”の秘訣

視聴者からは、「コロナの話題ではあるがいつもの内容とは異なり、元気をもらう、ホッと一息つけるような癒やされた30分間であった」とか「涙が溢れた。頑張った自分や家族のことを褒めてもいいのだなと感じ、救われた」など、多くの反響の声をいただきました。

きっかけはふと感じた「なんか、疲れたな…」

「首都圏情報ネタドリ!」では、去年2月以降、新型コロナに関連した番組を30回近く放送してきました。専門家に感染対策を聞いたり、ひっ迫する医療現場の実情をルポしたり、コロナによって廃業を余儀なくされた飲食店や、家族を失った遺族の声を伝えたり・・・。
新型コロナの実態を伝えるとともに、不安や疑問を解消し、感染拡大を防ぐために必要な情報を放送しようとつとめてきました。

(2021年1月29日放送)

 そんな日々が1年近く続いた今年1月、私はふと感じてしまったのです。

「あぁ、なんか、疲れたな・・・」と。

テレビでは連日、「感染者数が高止まりしている」「前回の緊急事態宣言に比べて、人出が減っていない」「若い世代の感染が目立つ」と伝えられていますが、そうした報道に対して若い世代からは「多くの若者はオンライン授業や在宅勤務などで外出を自粛している」とか「若者ばかりを悪者扱いしないでほしい」といった声も多く番組に寄せられてきました。実際に、私の友人や知人は、みんな自分にできる感染対策をしっかりして、前向きに頑張っていると話していました。
マイナスに受け取られるような報道ではなく、頑張るひとりひとりの姿を取材し、エールを送るような番組を届けたいと思うようになりました。

たった1人で出産 両親に初孫会わせられない人も

私の身近には、例えばこんな人たちがいます。

感染予防のために立ち会い出産ができなくなり、初産の不安の中、たった1人で出産にのぞんだ人。

結婚を機に関東から夫の実家のある九州に引っ越したものの、この1年、感染予防のために県外へ一歩も出ておらず、実の両親に初孫を会わせてあげることができていない人。

やる気を持って転職したのに、すぐに在宅勤務が始まって、新しい職場の同僚にも取引先の人にもほとんど会えていない人。

そして、私自身も…。なるべく在宅勤務をするように心がけてはいるものの、取材やロケで現場に行かなくてはならなかったり、編集作業は機材のある局内でなければできなかったり、どうしても平日は外出せざるを得ない場合が多くあります。その分、休日は外に出なくて済むように、金曜日の夜は、仕事帰りにスーパーに立ち寄って食材をまとめ買いし、土日は自炊に励みます。

楽しみは、電子書籍で大人買いした小説や漫画を黙々と読破すること。玄関を出るのは、ゴミ捨ての時くらいという週末も少なくありません。

“普通の人たち”の頑張りが誰かの命を救っている

毎日のように報道される感染者の数。これまでは「まだこんなに多くの感染者がいる」という意味合いで伝えられてきました。でも、改めてその推移を見てみると、緊急事態宣言が出されて以降、その数は減ってきているのです。

これは、ひとりひとりが自分にできる感染対策をしっかりと行い、自粛生活を続けてきたからです。医療従事者でなくても、エッセンシャルワーカーでなくても、“普通の人たち”の頑張りが、誰かの命を救うことに確実につながっているのだと、このグラフを見て感じます。

私が癒やされていたパントビスコさんのイラスト

そんな風に頑張っている私たちにエールを送ってくれる人に、番組に出演してもらいたいと、ゲスト探しを始めました。優しいメッセージを発してくれる人、わかりやすい言葉で話してくれる人、そしてできれば、若い世代にも届けられる人、そんな人はいないものかと悩んでいたところ、答えは私のスマートフォンの中にありました。

インスタグラムで毎日見ている大好きなアカウントで、パントビスコさんというクリエーターがいます。映像作品やイラストを投稿していて、SNSで合計75万人以上のフォロワーがいます。

新型コロナの感染が広がってからは、感染対策をわかりやすく、楽しく伝えるイラストを数多く投稿しています。例えばこちらは、命を守るために口にマスクをしようというものです。

ギスギスした空気が広がる中、みんなが抱える日々のモヤモヤを、笑い飛ばしてしまうようなイラストも。

仕事を終えて疲れて帰る電車の中で、クスッと笑えたり、ほっこりできたり、私自身が癒やされていたパントビスコさんのイラストたち。こんなほっと一息できるようなメッセージを、番組でも伝えたいと出演をお願いしました。

パントビスコさんが感じる社会のモヤモヤ

SNSで活動を続けてきたパントビスコさんは、いま社会の閉塞感を感じていると言います。

パントビスコさん
「いまの時代は『withコロナ』だとよく言われるけれど、私は『on the コロナ』だと思います。生活の土台に常にコロナがあって、そこから逃れられない状態にあります。逃げ場がないからこそ、みんなつらいのではないでしょうか」

「我慢して不自由な生活を続けているから、他人のあら探しをして、攻撃する人が増えているように感じます。キャラクターが野原で遊んでいるイラストを公開したら『マスクしないんですね』というコメントがきて、びっくりしました。『自分はステイホームしているのに』とか『マスクしているのに』という、うらやましいと思う気持ちの裏返しでもあるし、自分が『間違っている』と感じたことに対して『揚げ足を取ってやろう』という“歪んだ正義”のようなものも感じます。『満たされていない』と感じている人が『満たされているように見える人』を叩く風潮が広がっているように思います」

コロナ禍で要注意!「ステルス疲労」

パントビスコさんは、「ピリピリ・イライラした気持ちが、1年間かけて少しずつ積層していっているように感じる」とも言っていました。
実はこれは、専門家も指摘していることでした。

心理カウンセラーの下園壮太さんによると、コロナ禍で気をつけたいのは「ステルス疲労」。ステルスとは、自覚のないうちにという意味です。感染への「不安」や生活の「不安」、リモートワークなどによる「環境の変化」、さらに外出を自粛してやりたいことを「我慢」する日々が続く中で、気づかぬうちに疲労が進行・蓄積していっているというのです。深刻化すると、うつ症状にまで至ってしまう場合もあると言います。

ストレスをためないために パントビスコさんからのメッセージ

ストレスをためないために、パントビスコさんが意識しているのは、「自分の生活に集中すること」だそうです。

パントビスコさん
「コロナによってできなくなってしまったことを数えても仕方がありません。他人と比べたり、うらやんだりしてもきりがありません。自分の身の回りにいる人たちを大切にして、いまできることに集中して、楽しみながら日々を過ごすことが一番だと思います」

番組の最後に、コロナ禍を生きるひとりひとりに向けたメッセージを描いて頂きました。
 

パントビスコさん
「最前線で命を守ってくれる医療従事者の人たちや、私たちの生活を守ってくれるエッセンシャルワーカーの人たちに感謝をして、拍手を送るのはもちろんだけれど、それぞれの立場で、外出自粛や手洗い・マスクの着用など、できることを精一杯頑張っている人たちだって十分えらいと思います。自分自身に拍手を送ってあげて、前向きに乗り越えていきたいという思いを込めました」

「コロナ禍でみんな心の余裕がなくなって、人を気づかったり、ねぎらったりする機会が減ってしまったように感じます。私がSNSに投稿している励ましのメッセージは、全部自分が言われたいと思っている言葉です。ほめられたり励まされたりしてうれしかったら、その分、周りの人たちにもそういう言葉をかけてほしいです。批難や中傷ではなく、優しい言葉の連鎖が広がっていくことを願っています」

取材後記

記事の冒頭でご紹介したイラストは、私がパントビスコさんから放送前夜に受け取ったものでした。
「1年間、よく頑張ったよね」「私たちだって、ほめられていいよね」と、番組を通して伝えたかった、そして私自身が言ってほしかったメッセージが、まさにこのイラストに込められていました。

コロナとの戦いは、まだまだ長く続くのだろうと思います。感染者の減少が鈍化しているという報道もあり、「ここで気を抜いてしまうと、第4波を迎えてしまう可能性さえある」と指摘する専門家もいます。これからも、ひとりひとりが前向きに感染対策を続けていくことが、コロナに打ち勝つための最大の武器だと信じています。自分をほめながら、周りの人をほめながら、頑張りすぎずに頑張っていきたいと思います。

左がパントビスコさん 右が筆者

  • 柳田理央子

    首都圏局 ディレクター

    柳田理央子

    2013年入局。松山局・おはよう日本を経て2019年から首都圏局。ジェンダーやセクシュアリティーに関心を持ち取材。

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