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コロナに感染したからこそ伝えたい “甘く見ていた”

  • 2021年2月5日

経験したことのない頭痛や筋肉痛、めまぐるしく変わる症状、どこまで悪くなっているのか分からない自分の容体…。
発症から10日間自宅療養を続けた40代の男性はずっと不安でした。
「感染してから初めて我がこととして考えるし、甘く見ていたかと言われるとそうかもしれないです」
いまは感染対策の徹底をと男性は訴えます。
(千葉放送局/記者 福田和郎)

去年12月18日(発症初日)

自分の経験が参考になればと千葉県内に住む40代の男性が話を聞かせてくれました。
ふだんはジム通いや自転車での運動、食事管理もするなど健康には常に注意し、仕事も在宅勤務が中心でした。

しかし突然、新型コロナの症状に襲われます。
男性はこの日、これまでに経験したことがない猛烈な頭痛や筋肉痛で目を覚まします。
トイレに向かいましたがまともに歩くこともできず、夜になると38度ほどまで熱が上がりました。

12月19日(発症から1日)

翌日熱は下がっていましたが、頭痛と筋肉痛は悪化しました。
経験がない症状に「もしやコロナに感染したか?」と思って発熱相談コールセンターに電話をかけましたがなかなかつながりません。

イメージ

男性は自治体のホームページで検査体制が整っている医療機関の一覧を見つけ直接電話しました。当初クリニックの医師は風邪ではないかという見方でしたが、「感染しているかもしれない」という思いが強かったため検査を強く希望しPCR検査を受けることができました。

12月20日(発症から2日)

検査翌日の午後3時ごろ、クリニックの医師から直接電話がかかってきました。

「コロナ陽性です。絶対に病院に来ないで下さい。保健所から連絡が行きます」

陽性の知らせを受けた男性の頭をよぎったのは自分のことではなく、家族にも感染が広がっていないかということでした。
男性は妻と、小学生から高校生の4人の子どもの6人家族です。

「家族の検査はいつすればよい?」
「感染していた場合、子どもはどうなる?」

わからないことだらけで不安だったといいます。

一方、男性自身の症状はさらに悪化していました。

・頭痛
・筋肉痛
・強い悪寒 
・けん怠感
・重度の鼻炎のような症状(鼻水等)
・嗅覚は完全になくなる(何を食べてもゴムを食べているよう)
・変動する体温(一時は35度1分まで下がったことも)
・呼吸しづらい(息を吸っても足りないように感じる)

午後9時ごろ保健所から連絡がありましたが「明日ヒアリングのため電話をします」ということだけ伝えられ、男性は不安なまま一夜を過ごしました。

12月21日(発症から3日)

翌朝に保健所から再度電話があり、発症前後に誰と接触したか確認が行われました。在宅勤務だったため「濃厚接触者」と認定されたのは家族のみでした。家族全員が検査を受けて結果が出るまで自宅で過ごすことになりました。

自宅療養にあたって保健所からは「症状が急激に悪化した場合は、保健所に連絡をするか救急車を呼んで下さい」と伝えられたということです。

自宅療養を続けた男性
「結構漠然とした指示でした。熱が何度で何時間出たら救急車を呼んで下さいとか具体的な指示は全くなく、結局自己判断なんだろうなと。救急車を呼ぶこと自体ハードルが高いですし、そもそも体調がよくないなか自分で判断することはかなり厳しいと思います」

12月22日(発症から4日)

この日は「濃厚接触者」とされた家族がPCR検査を受けました。結果が出るのは2日後です。
一方、男性は血液中の酸素の状態をみる「パルスオキシメーター」をインターネットで購入し、頻繁に数値を確認して過ごしました。

本人が撮影

一時、数値は「93」を示しました。インターネットで調べたところ「酸素吸入が必要なレベル」とされていて不安を感じたといいます。
1日1回保健所から連絡が来た際にこうした状況も伝えましたが、具体的な指示はなく自分の容体がどのようなレベルなのかもわかりませんでした。

12月23日(発症から5日)

この日保健所からの電話で「発症から8日前後で急激に悪化する人もいるので注意して下さい」と言われました。この情報はすでに調べて知っていましたが改めて注意を促され、今後容体がどうなるのかさらに不安を感じました。

このとき男性は息苦しさのため自宅の階段の上り下りがやっと、という程度まで体力が低下していたといいます。また頭痛も残り、目の奥には痛みがあったということです。けん怠感で1日をほとんど寝て過ごしていました。

自宅療養を続けた男性
「症状が日替わりというか時間で変わっていくんですね。とにかく入れ代わり立ち代わりでほっとする間もなかったです。医師の話を聞くこともできないですし、自分で調べるしかなかったです」

12月24日(発症から6日)

この日は良い知らせがありました。
同居する家族全員の陰性が判明したのです。
男性は引き続き家族に感染させないよう注意を払って自宅で療養生活を続けることになりました。

自宅にはトイレが2つあるため完全に分けて使い、男性は自分の部屋から出ないで家族とは一切顔を合わせないようにしました。
「LINE」でやりとりをして食事は部屋の前に置いてもらい、食べ終わったら片付けてもらうようにしていたということです。

12月25日~27日(発症から7~9日)

保健所から症状が急速に悪化する場合があると聞かされていた時期にさしかかり、気分が落ち込んで恐怖感はピークに達しました。
「早く時間が過ぎてほしい」という一心でした。

ただ男性は幸い頭痛などの症状が徐々に緩和していきました。
においも感じられるようになりました。
最初にわかったのは『線香』と『キムチ』の匂い。いろいろなものの匂いを嗅いで確認したということです。

12月28日(発症から10日)

この日、男性が保健所に対して症状を伝えるとこう告げられました。
「仕事に行っていただいて良いですよ」
自宅療養の解除が認められたのです。

男性のように新型コロナの症状がある人の自宅療養期間は、発症から10日が経過、かつ、症状が軽くなってから72時間が経過するまで、などとされています。

同じ家の中で別々の生活を送っていた家族とも翌29日には久々に面会することができました。男性はこう振り返ります。

自宅療養を続けた男性
「何かをすれば症状の急激な悪化が避けられるということがないので、気持ちの持って行き場がありませんでした。パルスオキシメーターの数値も良くない中で、自宅療養をしていた方が亡くなるニュースを見ると、死の恐怖を感じることもありました。家族と対面した時はとにかくうれしかったです。この間ずっと会えなかったですし、直接しゃべることもできなかったので」

"甘く見ていた"

男性は自宅療養を終えた後もけん怠感や呼吸のしづらさが続いたということです。
このため外出できるようになったのは自宅療養を終えてから2週間ほどたってからでした。
その後は嗅覚も次第に回復し、食事を「おいしい」と感じられるようになるなど、日常を取り戻しつつあります。自宅療養を終えたあとの症状の改善は”薄皮をはぐように“少しずつ進んでいるということです。

健康には自信があったという男性がいま伝えたいことは―

自宅療養を続けた男性
「感染してから初めて我がこととして考えるし、甘く見ていたかと言われるとそうかもしれないです。インフルエンザとは比べものにならないほど症状は重く、これほど長期間具合が悪くなるとも思っていなかったので、かからないですむなら絶対にかからないほうがいいと強く思います。外出の自粛など、いつまでもこういう生活ができないのはわかりますが、今は感染対策を徹底してほしいです」

保健所に相談・救急車を呼ぶタイミングは?

自宅で療養している人はどのような時に保健所に相談し、救急車を呼べばいいのか。
国立国際医療研究センターの忽那賢志医師に聞きました。

新型コロナの初期症状は発熱・せき・のどの痛み・関節痛・息切れや息苦しさ・嗅覚や味覚障害などさまざまで、インフルエンザとよく似ているということです。
その上で自宅療養中に特に注意すべきタイミングは「発症から1週間前後」だといい、この時期に病状が急速に悪化することがあるということです。

忽那医師
「発症してから1週間くらいの時点で『呼吸苦』が強くなる人がいて、特に動いた後に息切れが強くなるのが症状が悪くなった時の特徴です。ほかにも突然、胸や頭の痛み、まひが出るなどするのでこうしたことがあればすぐに保健所に相談するか、救急車を呼んだ方がいいと思います」

 パルスオキシメーターの数値も病状を確認する方法の1つになるとしています。

忽那医師
「酸素の数値は下がっていても自覚症状が乏しいことがあります。酸素を投与した方がいい目安は93%から94%くらいで、これくらいの数値になっていれば保健所に相談する目安になると思います。今は入院しないといけない人が入院できない状況です。医療体制に余裕を持たせるため感染者を減らすことが必要で、人と人の接触を減らす、3密を避けるということをこれまで以上に意識してもらいたいです」

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