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コロナ禍で安全にステイホームできない女性たち 仁藤夢乃さんに聞く

  • 2021年2月4日

「親から虐待を受けているのにどこにも逃げ場がない」
「アルバイトの仕事がなくなってお金がない」
虐待や性暴力被害にあった10代の女性を支援する活動をしている一般社団法人Colabo(コラボ)代表の仁藤夢乃さんのもとには、新型コロナウイルスの影響で去年3月に行われた休校要請以来、こうした深刻な相談が急増しているといいます。
私たちも放送でステイホームをくり返し呼びかけていますが、もし家が安全な場所でないとしたら…。支援の最前線に立つ仁藤さんに聞きました。
(丹沢研二アナウンサー)

家が安全ではない女性たち 相談は2.5倍に

インタビューはオンラインで行いました

丹沢)いま、仁藤さんのもとにはどんな相談が寄せられていますか?

仁藤
もともと家が安心して過ごせる場所ではなかった子どもたちが、家族と一緒にいる時間が長くなったことで、虐待とか暴力を受けるリスクが高まって居場所がなくなっているということと、経済的にコロナの影響を受けて困窮している家庭の子がものすごく増えています。
私たちの所に来る女の子たちは、もともと家で家族との関係がいいわけではなく、距離感を保つことで何とかうまく家で生活していたっていう子も多いです。一方で、それ以外の大人やほかの見守る人たちとのつながりはコロナの影響で薄れているので、被害にあって苦しい状況にあってもSOSを出すことがこれまで以上にできていないということが多いですね。

私たちが「ステイホーム」という言葉を使う時は、ホームというのは安心な、安全な場所だという前提があると思うのですが、家が安全ではない人がかなりいるということなのですね?

そうですね。ホームっていう時にただ寝床があればいいだけではなくて、そこが安心して過ごせる場所であるかとか、その人がホームだと感じられるかってことだと思うのですけど、なかなかそういう場所がない。
1回目の緊急事態宣言が出た時は何とか今だけ耐えて頑張ろうって思っていた子たちも、影響が長期化する中でいよいよ耐え切れなくなって、やっとの思いでSOSを出してくれたっていう子もいますね。

Colaboと仁藤さん

仁藤さんが代表を務める一般社団法人Colaboは2011年に結成された団体で、東京を拠点に10代の女性の支援を行っています。夜の街での声かけや、「シェルター」と呼ばれる宿泊場所などを使った保護、児童相談所や病院などへの同行支援のほか、SNSなどを通じて女性たちからの相談にも応じています。

相談件数は去年3月から急増。昨年度が590件だったのに対し、今年度はすでに1200件を超え、およそ2.5倍のペースで増えています。

外で過ごすことも出来ない

仁藤さんたちが今、力をいれているのは、支援が必要な女性たちがいる街に、自ら出向いていく活動です。新宿や渋谷の広場に月3回程度、午後6時から10時までピンク色のバスを出してテントを立て、10代の女性に無料で食事や生活用品を提供する「バスカフェ」を開いています。

新宿・歌舞伎町で開かれた「バスカフェ」

家に居場所がない女性たちは、もともとネットカフェやカラオケ、ファミリーレストランなどで過ごしていたといいます。しかし今はそうした店で過ごすためのお金もないだけでなく、多くの店が緊急事態宣言を受けて夜の営業を休止しています。そこに加えて冬の寒さ。彼女たちの居場所は外にさえなくなっているのです。

緊急事態宣言で街を歩く人は減っているものの、1回に40人ほどの女性が利用するといいます。

席が向かい合わせにならないようにするなど感染防止に気を遣いながらの活動です。

バスカフェに来る女の子たちを見ていても、生活が本当ぎりぎりだなって子が増えています。お菓子とかジュースとかじゃなくて、お米とかバナナとかジャガイモとか、本当に今食べていくために必要なものを欲しいって言って持っていく子がすごく増えましたね。

提供される食事や生活用品は、企業や個人からの寄付

持っていく食べ物からも緊急性が伝わってきますね。

ふだんの生活に必要な物品、たとえば生理用品とか冬服とかコートとかも自由に持っていけるようになっているのですけど、そういうものも買えないような状況にある子が増えています。
ファストフード店とか飲食店でアルバイトしている子が多いんですけど、コロナの影響でバイトがなくなってしまって収入がなくなったりで生活が厳しくなったりしていることもあります。

居場所のない女性たち 狙う男も

「家にいられない」「外でも過ごせない」そんな女性たちを狙う男もいます。SNSで助けてくれる人を探した女性が、性被害にあってしまうケースが増えていると仁藤さんは言います。

ある女の子が「泊めてほしい」とか「家にいたくないなあ」っていう気持ちをSNSでつぶやいたら、10分で20人ぐらいの男性たちが「泊めてあげるよ」とか「サポートしますよ」って、支援をしてくれる人を装うような形で少女たちに近づいているんですね。この前、私たちが接したケースでは「家に来てゲームでもしてゆっくり過ごして遊ぼうよ」みたいな誘い方をしていて、でも実際にその人に会ったら連れ込まれてレイプされてしまったっていう被害もありました。そういう子どもたちを狙っている大人が多いというのが、現状です。
「親からの暴力で逃げたい」って思った時に逃げ場もないし、「どうしたらいいか分からない」っていう時に、私たちと出会う前は、「物置に隠れて外で寝た」とか「公園で寝た」っていう子たちもいます。そういう生活は続けられるわけではないから「誰か泊めてくれる人がいないかな」って思った時に、性暴力被害にあっているというケースが毎日何件もあって、そういう女の子たちに対応しています。

コロナで活動に制限も

虐待や性暴力にあった女性たちを保護するのが「シェルター」です。
通常はこういったシェルターで女性たちが共同生活をしながら、今後の生活を考えます。

しかしこのシェルターも、コロナの感染防止のため新しい人を受け入れにくくなっています。
そのため現在はビジネスホテルの個室を借りてシェルターとして使っています。女性たちの安全は確保できるものの、きめ細かく目配りすることが難しいため、活動には困難もあるといいます。

今までだったらとにかくまずシェルターに来てもらってゆっくり休んで、関係性を作りながら、これからのことを一緒に考えていこうという感じで活動をしていたのですけど、コロナの感染が心配ということもあるので、今は連携しているホテルなどをシェルターとして使っています。
中には精神的な状態がすごく悪かったりとか、病気や障害があったりという方もいらっしゃるので、なかなか対面でないとできない支援というのがほとんどです。リスクもありながらですけど、お互い気をつけながら活動しているという感じです。

行政の支援にも限界が

行政の支援はどうなっているんでしょうか?

児童相談所などの公的機関も、もともとコロナ前から現場が手一杯な状況で、10代後半とか中高生世代の子たちに、しっかり時間を使って職員が丁寧な対応をするということがなかなか難しかったんです。そこにこのコロナ禍で相談が急増しているということで、ますます支援が行き届かなくなっています。私たちの所に来る子たちも、私たちに出会う前に児童相談所とかにSOSを出したけど、そこで対応してもらえなかったことから、そのあと私たちにつながってくれるというケースもかなり多いです。
特にこの年末年始は支援の現場がいっぱいいっぱいで厳しかったんですけど、公的機関が土日とか夜間祝日閉まってしまうんです。私たちが何とか対応して、その期間保護するしかないって状況が毎年あるんですけど、ことしはそれが深刻です。年末年始の緊急的な支援だけでも60泊以上の支援を行っています。今年度は4月からこれまでに650泊ほど女性たちの緊急的な宿泊支援や保護を行っています。

行政が対応しきれないものが、民間の活動である仁藤さんの所に押し寄せているという状況なんですね。

そうですね。自助では限界という状況が本当に続いていて、迅速に公的な支援の拡充をしていただかないと私たちも現場が本当に回らないという状況ですね。

若い女性たちを救うのは「大人の責任」

コロナがこれまでの社会の歪みを浮き彫りにした所があると言われますが、特に今回コロナ禍でどんなことが見えてきたと感じていますか?

今感じているのは、こういうことが起きた時に真っ先に追い詰められるのは、ふだんから「ないもの」として扱われてきたり弱い立場にあったりした人たちだということです。コロナだからより深刻な状況になってしまっていますけど、ふだんから、虐待を受けたりとか性搾取をされたりしている子どもたちの問題に、もうちょっと大人たちが本気で取り組んでいればここまで深刻な事態にはならなかっただろうということです。そこで苦しんでいる子たちは「私のせいだ」って自分のこと責めて、「自分が悪いから」とか「自分がダメだから」とか思わされてきた子がすごく多いのですけど、これはやっぱり子どもたちの問題ではなくて、そこまで子どもたちを追い込んでしまった大人たちの責任だということを強く実感しています。

私たち、大人一人ひとりにできることは何かあると思いますか?

一般市民の私たち一人一人がアンテナをはって、「何か気になる子がいないかなあ」とか「心配だな」って思った時に気づける大人になってほしいって、まず思います。
家出をしたり性搾取の被害にあったりしていると、どうしても子どもたちを責める声っていうのが上がるのです。
「なんでそんな所に行っちゃったの」とか「なんでそんな人についていちゃったの」とか「なんで大人に相談しなかったの」など。
でもそれは身近に顔の見える関係性の中に頼れる大人がいないって、そのぐらい子どもたちを追い詰めてしまっている私たちの責任だと思うので、そういう子たちからSOSを出してもらえる存在になることが一人一人に必要だと思っています。
そんなに特別なことをしなくても、近所を通る子どもたちに「おはよう」って声をかける。「寒いね」「風邪ひかないようにね」とか「気をつけてね」とか、「大人たちが見てるよ」ってメッセージが社会の中に広まれば、子どもたちを狙う大人たちも加害行為をしにくい社会になると思うんですよね。色んな大人がこうした問題に目を向け、子どもたちの状況に関心を寄せて声をかけていくことが大事だと思っています。

若い子たちに直接伝えたいことはありますか?

中高生ぐらいになると、大人たちから「もう大人なんだから」とか「我慢しなさい」とか言われたりして、「自分で何とかしなきゃっ」て抱えちゃう子がすごく多いんです。自立というのも全部一人でなんでもできることではなくて、困ったりしんどいなって思った時に誰かを頼ったりするのも自立にとても大切なことだし、頼ったり頼られたりしながら私たちはみんな生きていくものだと思うんですよね。
信頼できる相談機関とかがなかなかないかもしれないけど、大人たちに10人ぐらいに当たってみれば1人は真剣に考えてくれる人がいるんじゃないかと思うので、あきらめずに声を出してほしい、遠慮しないで相談してほしいってことは思いますね。

子どもたちからすれば、何度も大人たちに裏切られて信頼できなくなってしまえば、相談しようという気持ちすら起きないのかもしれません。

インタビューの中で仁藤さんが口にした「大人の責任」という言葉が強く心に残りました。

 

困っている時の支援の窓口は
主な相談窓口と仁藤さんが代表を務めるColaboのアドレスを載せます。
連絡すること自体がしんどいかもしれません。それでも今つらさを抱えている方は参考にしていただけたらと思います。

【NHKハートネット テーマ別情報・窓口】

【NHKこんな時は どんな支援が?】

【一般社団法人Colabo】
https://colabo-official.net/

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