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コロナ禍で頼られる子ども食堂 お弁当のパエリアから見えてくるのは?

  • 2020年12月22日

おいしそうなパエリア。さいたま市のこども食堂で子どもたちに配るお弁当用に作られたものです。赤や黄のパプリカと一緒にゴロゴロと入っているのは鶏肉。よく見ると茶色い衣をまとっています。
コロナ禍による生活苦などで子ども食堂を頼る人が増えるなか、食材はどうやって調達されているのか。この鶏肉をさかのぼってみると、支援の輪をつなぐために必要なことが見えてきます。
丹沢研二 アナウンサー

子ども食堂 弁当はコロナ前の3倍に

寄付された食材の山

11月、私はさいたま市緑区の「さいたま子ども食堂」から中継リポートを行いました。
子どもたちに無料や低価格で食事を提供する子ども食堂ですが、多くが新型コロナウイルスの影響で、集まって食事をする活動を休止せざるを得なくなっています。

こうした中、さいたま子ども食堂では、弁当や食材の配布に切り替えて活動を続けていました。そしてコロナ禍で子ども食堂の需要は確実に高まっています。この子ども食堂で週1回用意する弁当は1回200食ほどで、コロナ前の3倍に増えています。

さいたま子ども食堂代表 本間香さん
「シングルマザーの親がパートの雇い止めにあって生活が苦しくなったとか、看護師や保育士で仕事が忙しくなって子どもの面倒が見られなくなったとか、色んな事情のある人がお弁当を受け取りに来ます。多くの人にとって子ども食堂が救いの場になっているのを感じています」

子どもたちがうれしそうに受け取っている弁当には、カラフルでおいしそうなパエリアとサラダが入っています。よく見ると、パエリアの鶏肉はところどころ茶色い衣をまとっているものがあります。何だか見覚えがあるような…。

子どもたちの食欲を満たす食材はどうやって調達されているのか、あらためて取材することにしました

あの鶏肉の正体は…

この日、厨房にあった食材はこちら。

お米にキャベツやカボチャ、ブロッコリー、清涼飲料水などが並んでいます。食材の多くは、地元の企業や人からの寄付だそうです。そして、手前に冷凍されているのはパエリアの食材の鶏肉、あの衣を全体にまとっています。

丹沢「あの本間さん。この肉、もしかして…」

本間「そうです。それはケンタッキーさんから提供いただいたものです」

話を聞くと、ことし9月から閉店時に残ってしまうフライドチキンを定期的にもらっているということです。
大手ファストフード店というと、残った食材の管理が厳しく外には出さないというイメージがあります。でも、それらを活用できるなら素晴らしいこと。その仕組みはどうなっているのでしょうか。

取り組みは去年11月から

さいたま子ども食堂の本間さんが、フライドチキンを受け取りに行く現場に同行させてもらいました。

訪れたのはさいたま市緑区にある店舗。

実は、各地にある子ども食堂がどの店舗で食材を受け取るかは決まっていて、子ども食堂側が定期的に取りに行くことになっているそうです。多くの店舗を展開する大手チェーンだから出来る仕組みです。

本間さんが受け取ったのは、骨付きと骨なしのフライドチキン合わせて15㎏ほど。店の冷凍庫で保管されていました。

この会社が子ども食堂に調理済みのフライドチキンを寄付する取り組みを始めたのは去年11月と、わりと最近のこと。横浜市、川崎市に続いて、埼玉県での提供が始まりました。その後、富山県でも始まっています。大手外食チェーンとしては初の取り組みだそうです。

会社広報CSR部 茂呂朋子さん
「一つは食品ロスを減らすためです。フライドチキンを調理するには30分ほどかかりますが、注文を受けてすぐにお出しできるようあらかじめ調理しておくので閉店時にはどうしても残ってしまいます。残った商品は食べられるのに廃棄せざるを得ませんでした。せっかく作った商品を捨てるのは私たちにとっても本意ではないので、子ども食堂への寄付を考えました」

安全に利用してもらうために

ただ、企業側としては、残った食材を安全に活用してもらえる相手ではないと寄付はできません。
調理する際には「骨を取り除く」「再加熱する」など食の安全を保つための手順が決められ、それを守ることを記した合意書を事前に交わすそうです。

そして登録された子ども食堂には通し番号のついたカードを渡しています。

初めてフライドチキンを使った料理を提供する子ども食堂には茂呂さんが自ら出向き、安全に調理されているか、衛生面は問題ないかなどをチェックしているということです。

茂呂さん
「私たちの製造した食材で何かあったらいけませんから、最後まで安全性をチェックしています。この取り組みは食品ロスの削減だけでなく、社員のモチベーションアップにもつながっています。自分たちの仕事が社会貢献になっていると感じることで仕事に誇りを持てるようになったという声が上がっています。他の都道府県でもニーズがあればもっと広げていきたいですね」

調理にも工夫 おいしく食べてほしい

寄付してもらった食材をどうおいしく調理するのか、子ども食堂でも知恵を絞っています。

例えばパエリアの場合、肉や皮をパエリアに入れるのはもちろんですが、取り除いた骨もスープのだしに使っています。他にもカレー、ホワイトシチューなどに生まれ変わって子どもたちに喜ばれているそうです。

子ども食堂と企業をつなぐ「行政」

子ども食堂と食材を寄付する企業。簡単な組み合わせのように見えますが、重要な役割を果たしているプレーヤーがもう1人います。「行政」です。
それは、埼玉県少子政策課。子ども食堂側の活動の実態調査を行った上で信頼できる子ども食堂を企業に紹介しています。子ども食堂は任意団体なので、行政のいわば「お墨付き」がある意味は大きく、企業側も安心して食材を提供できるようになるといいます。

埼玉県少子政策課 こどもの未来応援担当主査 石井順子さん
「子ども食堂はみんな手弁当で活動しています。行政が補助金で支援するのは限界があるので、心ある企業と子ども食堂のマッチングが大事です。食材の提供はもちろん、場所がほしい子ども食堂と場所を貸せる企業をつなぐ、食材を大量に輸送する手段がない所には協力してくれる輸送会社を紹介するとか。みんなが出来ることをちょっとずつやって継続的に活動していくことを目指しています」

子ども食堂と企業をつなげると、さらにその支援の輪が広がることもあると言います。

「企業もはじめは食品ロス解消を目的に始めるんですが、子ども食堂の活動を見学して『もっとこういう支援ができます』と申し出てくれたり、同業他社に同じような活動を勧めてくれたりします。そうやって、子どもを支える活動の担い手をじわじわ増やしていけたらいいですね」

子ども食堂の未来は

最後に改めてさいたま子ども食堂の本間香さんに「目指す子ども食堂の未来像」を聞きました。

本間さん
「一つ一つの子ども食堂が地元の人や企業と関係を築いて、その地域の実情に合った無理のない支援の形を作っていってほしいと思います。今はその過渡期ですね。それから、せっかく食材などを提供してもらえる関係が出来ても、慣れて感謝の気持ちを忘れてしまえば、つながりは簡単に壊れてしまいます。きちんと感謝を伝えること、もらった食材は安全に使い切ることを徹底して、私たち自身が企業にとって食材を託せる組織であり続けることが大事だと思っています」

食品ロスを減らし、その食材を子どもたちに提供する。
言葉にすれば簡単のようですが、そのシステムを維持するのは簡単ではなく、不断の努力が必要だという緊張感が、本間さんの言葉からにじみ出ていました。
そして、いいサイクルを作り出すのは人の思いだということを強く感じさせられる取材でした。

さいたま子ども食堂(去年の様子)

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