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「コロナで極限」子育て世帯が孤立する

  • 2020年12月4日

「朝から晩まで家で子どもと2人きりで、息が詰まりそうでした」
緊急事態宣言中のことし5月、夫の転勤で知り合いのいない東京に引っ越してきた女性の話を聞いて、育児休業中に、自分の勤務地から夫の勤務地に引っ越した自分(記者)が重なりました。当時、孤独な自分を支えてくれたのは近所の子育て支援施設でしたが、ことしはコロナで多くの施設が臨時休館になったはず。
「赤ちゃんを育てている人たちは大丈夫だろうか」心配になって取材をすると、想像以上の親子の孤立が見えてきました。
首都圏局/記者 石川由季

緊急事態宣言で相談相手も作れず…

東京・大田区に暮らす草野さとみさん(41)は、9か月の男の子を育てる新米ママです。

関西出身の草野さんは、夫の転勤で緊急事態宣言のまっただ中のことし5月、友達や親せきのいない大田区に引っ越してきました。

幼い長男を抱え、外出制限で買い物などの外出さえもままならない上、初めての育児でわからないことばかりでしたが、近くで新しい友人や相談相手を作る機会もなく、不安や孤独を感じる日々だったと言います。

「頼る人も近くにいない中、子どもが泣いているときはどう機嫌を取っていいのかとか、何から何までわからないことだらけの毎日でした。子どもはもちろんかわいいのですが、夫は仕事で、朝から晩まで家の中で子どもと2人きりの日が続くと、息が詰まりそうになりました」

地域子育て支援拠点「私が笑顔のままでいるために」

そんな草野さんが、子どもの4か月健診の時に保健師から悩みを聞かれ「知り合いがほしい」と答えたことろ、紹介されたのが地域子育て支援拠点でした。

「地域子育て支援拠点」は、子育て中の親子の孤立を防ごうと、主に0歳から3歳くらいの小さな子どもを持つ親子の交流の促進や育児相談などを行う場所です。「子育てひろば」などの名称で、児童館をはじめとした地域の身近な施設にあります。
国の集計では昨年度の時点で全国で7500か所以上に設置されています。

11月下旬、大田区の施設を訪ねると、室内の遊び場が開放され、カレンダー作りなどの催しも開かれていました。小さな子どもを連れたママたちが輪になって、施設の職員も交えながら楽しそうにおしゃべりしていました。

話を聞くと、多くの親子がこの場所を日々の生活のよりどころにしていることがわかりました。

「月齢が近い子どもを育てるお母さんたちと、育児の相談をしあえて助けられています」

「実家が遠くて話し相手もいないときに通い始めました。誰か大人としゃべっていないと子どもたちに怒ってばかりになるので、私が笑顔のままでいるために必要な場所です」

草野さんも、10月から施設に通うようになり、月齢の近い子どもを育てるママ友を作ることができました。

「ここに来ると2時間弱くらい過ごすのですが、子どもも遊んでくれるし、他のお母さんたちとも話ができて、自分もリフレッシュできるのですごくよかったです」

新型コロナで利用者3分の1に激減

草野さんが通っている施設も、ことし3月上旬から5月末まで、新型コロナウイルスの感染拡大の影響でおよそ3か月間の休館を余儀なくされました。

NHKでは都内23区に、地域子育て支援拠点の運営状況についてアンケート調査を行い、23区内の643の施設について回答を得ました。

その結果、ほとんどの施設が緊急事態宣言期間中に臨時休館や支援事業の縮小を余儀なくされていたことがわかりました。
こうした影響から、ことし4月から9月の間、施設を利用した親子の人数は、のべおよそ105万人。のべおよそ342万人だった去年の同じ時期と比べ、3分の1以下に減少していました。

さらに、感染の状況が比較的落ち着いていたことし10月末時点でも、多くの施設が、人数を制限するために事前の予約制にしたり、大人数が集まるイベントを中止するなど、例年通りの子育て支援を実施できていない状況だということもわかりました。

「手を上げてしまう」深刻な相談も 孤立化進む親子

アンケートからは、こうした事業縮小に加え、外出自粛や、保育園などの臨時休園なども重なり、子育て中の親子が不安や悩みを深め、孤立が深刻化していることも見えてきました。

生活にコロナの影響を受けるようになって以降、23区の子育ての相談窓口にどんな相談が寄せられているかを聞いたところ、保護者自身が泣きながら「子どもがずっと泣きやまない」と助けを求めてきたなど、さまざまな声がよせられていました。

「外出自粛の影響でママ友が作れない」

「ママ友と会えず育児の悩みが共有できない」

「子どもと過ごす時間が増えイライラしてしまう。手をあげてしまうこともある」

「こういうときに親子を守れなければ子育て支援とは言えない」

一方で、休館などの期間中、親子を孤立させまいと、施設側も親子にどうにかアプローチしようと試行錯誤の取り組みを進めていたこともわかりました。

▼電話での相談対応は継続した(多くの区から同様の回答)
▼直近2か月の施設利用者に電話をかけて生活の状況を聞き取ったほか、近隣の公園に出向き親子に声をかけて回った(大田区など)
▼オンラインでの子育てひろばを実施(練馬区など)

ある施設のスタッフたちは、相談を受けて親の孤立や窮状を肌で感じ「こういうときにこそ親と子を守れないのであれば、子育て支援とは言えない」と話し合い、感染防止の策をとりながら、どのような形であれば支援を続けられるかどうか、日々模索を続けているそうです。

専門家「たった1時間でも安心感 一斉閉鎖しないで」

子育て支援に詳しい恵泉女学園大学の大日向雅美学長は、地域で子育てを支える場が閉鎖されると保護者の孤立化が心配されるとして、前回の緊急事態宣言下のように施設を一斉に閉じるようなことはするべきではないと指摘します。

「コロナ禍において、狭い家の中で子育てやリモートワーク、それに家事の両立を続けることは極限状態に陥りやすい。自治体ごとの感染やその地域の保護者の状況に応じて施設の開館について対応を決めてほしい。たった1時間でも支援施設に来ることができると、『地域や行政に守ってもらっている』いう保護者の安心感につながる。コロナ禍で疲労と孤立感を強めている親たちにとっては最も必要な支援だと思う」

絶対に孤立させないために

いま再び感染の拡大が進んでいます。「また施設が休館になるのではないか」と不安を感じている保護者も多いのではないでしょうか。子育て中の親子を、絶対に孤立させないためにどのような形で支援を継続させていくか。感染者が再び増加するなか、社会全体で考えていくべきだと感じています。

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