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育児シェアハウスという選択肢 コロナ禍の子育てでは

  • 2020年11月26日

「育児は家族でするもの」そんな常識をくつがえすような子育ての形が、少しずつ広がっています。
「育児シェアハウス」
家族以外の人たちとゆるやかにつながって、子育てなどを助け合いながら暮らす住まいの形です。コロナ禍の中、新たな子育てを選択した家族を取材しました。
首都圏局/記者 石川由季

“育児シェアハウス”に住んでみない?

育児シェアハウスとシェアハウス、家を複数人で借りて共同生活をするという点では基本的に同じ仕組みです。 
その育児シェアハウス、特徴は子どもも一緒に暮らすことができるほか、場合によっては子育て中の家族どうしが協力しあったり、単身者の手を借りたりするケースもあるという点にあります。

この記事を書いている私が育児シェアハウスの存在を知ったのは、学生時代の先輩からのアドバイスがきっかけでした。

筆者の先輩 福澤涼子さん(慶應義塾大学 SFC研究所 上席所員)

「身近に頼れる人がいないなら、シェアハウスで育児する暮らしがあるよ」

研究者でもある私の先輩は、育児シェアハウスの研究を始めたことがきっかけで、みずからも知人と自宅をシェアしながら生活し、子育てをしているというのです。

想像したことがない暮らしに、私は興味を持ちました。というのも私はこの秋、3歳の長男を連れて東京に転勤になったからです。夫も仕事が忙しく、ほぼ「ワンオペ」の毎日で、実家は遠いうえ、東京にママ友もいません。

筆者と長男

新型コロナの感染拡大で保育園などが休園になってしまったら、仕事と子育てを両立できるのだろうか。私は新生活に大きな不安を抱えていました。
そんな不安の中での、先輩からの紹介。さっそく育児シェアハウスを訪ねてみることにしました。

おむつ替えもまかせて!独身で子どもがいなくても手伝えます

私が最初に訪問したのは東京・文京区にある3LDKの一般の賃貸マンションです。こちらには、松尾力さん・真奈さん夫婦と長男のげん君(3歳)の家族が住んでいます。そして、空いている2部屋に単身の「まきおさん」と、女性1人がそれぞれ入居していました。

松尾さん一家と「まきおさん」

ここで私が目にしたのは、長男のげん君が「まきおさーん!」と、パパではないまきおさんに駆け寄っていく姿でした。
まきおさんと遊ぶげん君。いい笑顔をしています。それにまきおさんも、独身で子どもはいませんが、まるで父親のように自然にげん君と接している姿がとても印象的でした。

げん君と「まきおさん」

聞いてみると、松尾さん家族とまきおさんたちは、時間が合えば食卓を囲むことも。さらに夫婦の記念日など特別な日には、幼稚園へのお迎えから、おむつ替えに、食事や寝かしつけまで、子どもの世話を手伝ってくれることまであるそうです。

松尾真奈さん

「特別な日に手伝ってもらえることも助かりますが、日常的な小さな手助けがいちばん助かっています。 たとえば、家に帰った直後に数分子どもを見てもらえるだけでも、その間に自分の荷物を片付けられる。それだけですごく気持ちが楽になるんです」

一方で、独身のまきおさんにとって、子どもがいる家族と同居することはどういうメリットがあるのか気になり聞いてみると…
手伝いをすることで子育てのイメージを結婚前から持つことができるため、将来のライフプランを考えやすくなった、まきおさんはそう感じているそうです。
もちろん、夫婦と同居人の間でシェアしているので、相場よりも安く広い家に住むことができますが、それだけではないメリットもあるようです。

「シェアハウスに住んだことで自分が将来子どもを持ったときのことを具体的にイメージできるようになりました。子育て中の同僚が子どもの体調不良で仕事を休んだときには“小さな子どもは熱を出しやすいよね”と共感しながら、仕事を助けてあげられるようにもなりました」

コロナで子育て支援が途絶えても

ことしの4月から5月。新型コロナの影響による外出制限や、国の緊急事態宣言で幼稚園が休園になるなどあらゆる子育て支援策が利用できなくなりました。

そのとき頼りになったのが、まきおさんたち同居する2人でした。夫婦が在宅勤務で会議が重なったときなどは、子どもを公園に連れて行ってもらうなど手助けしてもらい、なんとか乗り切ることができたといいます。

松尾力さん

「あのときは本当に助かりました。テレワークになって全部家の中で完結する生活で、1人だったり、核家族で妻と子どもだけだったりしたら、発散のしようがなかったと思いますね」

日々の小さな助け合いで支え合う育児シェアハウスでの暮らしは、想像していた以上に「家族」のようだと感じました。

広い庭にリビングでストレスのない生活を

2軒目に訪ねたのは、横浜市のシェアハウスです。もともとは社員寮だったこともあり、まず台所やリビングがとても広いことに驚かされました。子どもたちが庭を駆け回る姿は、マンション暮らしの私にとっては、とてもうらやましい光景でした。

ここで暮らしているのは、子育て中の家族や、子どものいないカップル、単身者などで、年齢も国籍もさまざま。多いときには6人の子どもが暮らしていたそうです。個別の部屋がありますが、風呂やトイレ、キッチンなどは共用で使っています。ほかの家族の子どもたちをお風呂に入れたり、子どもの食事のおかずをシェアしたり、協力して保育園の送り迎えをするなど、大人たちが、子どもたちを暖かく見守っていると感じました。

感染拡大で外出をためらうような状況でも、普通の家よりも広いリビングや広い庭があれば、のびのびできそうです。ただ、一緒に暮らす仲間たちがそばにいる心強さもある反面、難しさもあるのでは…。大家の戸谷浩隆さんに聞いてみました。

大家の戸谷浩隆さん

「これまで、同居している人たちから、赤ちゃんの泣き声がうるさいとか苦情がきたことは1度もないんです。一緒に生活して育児の様子を日々見ているので”一生懸命子育てを頑張ってるな”という気持ちがあるからだと思います。私も子どもがいて、手伝ってもらいたいと期待しているわけではないですが、日々皆さんがいろいろと手助けをしてくれて、予想外の贈り物がある感じです」

家族の空間を確保し プライバシーに配慮した物件も

子育てを手助けしあえるのは魅力的だけれども、それぞれのプライバシーはきちんと確保できるの?そんな不安を解消できそうな物件にも出会いました。

こちらの町田市にある集合住宅は、ことし”キッズデザイン賞”を受賞しました。キッチンや風呂などは家庭ごとに用意されて、それぞれのプライベート空間が確保されています。同時に、ラウンジや広い庭があるなど共用部分が充実し、自然な形で子育てを協力し合えるように、間取りの面からも交流をうながすための工夫がなされています。

家族以外の人たちと共同生活をするのは少しハードルが高いなと感じる場合には、こんな場所から始めてみるのもひとつの手かもしれません。

「家族以外の誰かに甘えてみよう」

共働き家庭の増加とともに地域のつながりも希薄になってきているのではないでしょうか。職場と家の往復だけの毎日で孤立感を深め、家事や育児にしんどさを感じる人は少なくないと思います。私もそのひとりです。
私が訪ねた育児シェアハウスでは、子育てもそうですが、食事作りや掃除など、日常生活で行わなくてはいけないことをうまくシェアして、皆が笑顔だったことがとても魅力的でした。

慶應義塾大学 SFC研究所 福澤涼子上席所員

「育児は家族だけでするものだという固定された考えを、私たちが強く持っているところが何よりのハードルになっていると思う。思い切って暮らし方を変えなくても、空いてみる部屋に友人を1人招くことからでもいいかもしれない。家族以外の誰かにもっと甘えてみてもいいんじゃないかな」

私の先輩、福澤さんのことばです。

育児シェアハウスという住まい方は、いまならば、普通の家庭以上に新型コロナの感染防止対策をしっかり実行するなど、注意しなくてはならない点はあります。しかし、先行きが不透明な中でも、子育てと日々向き合っていかなければならないという現状において、子育て世帯の孤立を防いだり、育児ストレスを軽減させたりする1つの方法ではないかと感じました。

  • 石川 由季

    首都圏局 記者

    石川 由季

    平成24年入局。大津局・宇都宮局を経て首都圏局。福祉や子育ての問題などを取材。

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