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コロナ禍での大学サークル活動とは 早大アイスホッケーの場合

コロナ禍のリアル4
  • 2020年11月20日

コロナ禍で自粛を求められたものの一つが、学生のサークル活動だ。
30年ほど前の学生時代にアイスホッケーに夢中になっていた私としては、感染拡大防止のために仕方ないこととはわかっていても、今の学生のかけがえのない日常がないがしろになっているのではないかと思ってしまう。取材に訪れた早稲田大学のアイスホッケーサークルの部員は、こう言った。「ことしの新人はたった1人です」(映像センター/カメラマン 山﨑章由)

練習開始は夜11時半から

取材に向かったのは新宿・高田馬場、時間は午後11時過ぎだ。ボーリング場やカルチャーセンターなどが併設された建物の1階にアイススケート場がある。

中に入ると、ほおに伝わるひんやりとした空気が懐かしい。学生時代に通ったこのスケートリンクは、少し改装されてはいるものの、雰囲気はほとんど当時のままだ。深夜に練習を始めるのは、一般客が利用しない早朝か夜でないと貸し切ることができないためだ。

コロナ禍での練習

ここで練習をしているのが60年近く続いてきた「早稲田ポーラーベアーズ」だ。
ロビーでは、選手たちのミーティングがはじまっていた。
ことし4月に活動自粛を求められ、ようやく再開したのが8月。ただ、サークル活動がもとで感染が広まるようなことがないよう、対策は念入りだ。入り口にはアルコールが置いてある。全員が既にマスクを着用し、着替え中も間隔をあけていた。

まもなくすると、リンクで練習がはじまった。赤いユニフォームがポーラーベアーズだ。
でも、すぐに違和感を覚えた。
氷上の格闘技と呼ばれるホッケーにしては、掛け声が控えめでいささか物足りない。その理由を3年生の雁田皐太さん(20)が教えてくれた。 

雁田さん
「大きな声を出し合ったほうが士気もあがるし、連携もとりやすいですけど、屋内の競技ですし、感染防止のため、なるべく控えめにしています。水分補給用のボトルも共用のものから個人用に切り替えました。僕たちの中から感染者を出すわけにいきませんから」

それでも尽きないアイスホッケーの魅力

このサークルでは1時間半の練習を週2回つづけている。練習が終わるのは午前1時、家につく頃には午前3時をまわる。 しかも練習に来るにはプロテクターやスケート靴など荷物も多い。帰るときには電車もないため自動車がないと通えない。決して楽なサークルではないのだ。しかし、めまぐるしく攻守が入れ代わる展開の速さと激しいぶつかり合い、そして豪快にゴールを決めた時の爽快感を体験すると、この練習も苦にはならなくなる。 

このままでは存続すら危うい

アイスホッケーの魅力にとりつかれた学生たちは、いつもの年であれば、春と冬の年2回開かれる、東京都アイスホッケー連盟主催の同好会リーグ戦に参戦し、5チームの中で優勝を目指して競い合う。しかし、春のリーグ戦は感染防止のため中止。さらに取材に訪れた10月中旬になっても、冬のリーグ戦の実施予定も定かではなかった。1試合もせずに、学生たちは1年を終えることになるかもしれないという。

また、コロナ禍でオンライン授業になりキャンパスでの勧誘活動ができなかったことも、チームにとって深刻なことが分かってきた。

雁田さん
「僕らのチームは未経験者中心のチームなので、いつもなら入会体験で魅力を知ってもらってから仲間に加わってもらうんですけど、それができないと一気にハードルが上がってしまうんです。練習は深夜だし、防具はそろえないといけないし、お金はかかるしで。SNSで入会を呼びかけましたけど、今のところ新入生はたったの1人です」

入会を呼びかけるTwitterの画面

アイスホッケーは、ゴールキーパーを除き、5人が氷上でパックを奪い合うスポーツ。消耗が激しく、およそ1分交代で次々に選手が入れ替わるため、少なくとも10人はいないと体力が続かず試合にならない。現在2年生以上の選手は12人いるが、4年生が卒業すると7人になってしまう。このまま新入生が入らなければ、試合どころか選手がいなくなってチーム自体がなくなってしまうかもしれないのだ。

雁田さん
「ほかのサークルの中には、まだ再開できなかったり、人が集まらず潰れてしまったところもあると聞きます。歴史あるチームを自分の代で終わりにしたくないのですが・・・」

お金がないなら辞めるしか…

現役の選手もアイスホッケーをつづけられるのか悩んでいた。
大学2年生のゴールキーパー、荒畑達さん(21)だ。

去年10月から企業のインターンシップに参加して収入を得ていたが、4月の非常事態宣言後から徐々に仕事が減りつづけ、5月を最後に雇用が打ち切られてしまったという。
アイスホッケーはスケート場を貸し切って練習するため会費のほか、合宿費などを入れると月によっては2万~6万円はかかるという。

「レギュラーを目指して、これまで仲間たちと頑張ってきたけど、お金がないなら辞めるしかない・・・」

大好きなアイスホッケーではあるが、その出費を考えると、収入がないままでは練習をつづけられないと、悩んでいた。

チームは現役選手たちだけのものではない

コロナ禍で1人の時間が増えたことで悩みも一層深まっていたという荒畑さん。
ある日、新人の頃から世話になっている先輩に悩みを打ち明けにいくとこう言われたそうだ。

「ホッケーを続けたい気持ちがあるなら、仲間のためにも絶対に辞めるな。お金のことは俺たちが何とかする」

先輩はその力強いことば通り卒業生にも掛け合い、資金の支援をお願いして回ってくれた。歴史あるサークルだけあって、OBと学生の集まりなどは定期的にあり、つながりは深い。これまでにも何度か選手の減少などでチームの危機を迎えたことはあったものの、OBたちが資金面だけでなく人材の確保などチームの存続に力を貸し、乗り越えてきたのだという。

OBたちとの交流会

荒畑さんもその後、徐々にインターンシップの募集も再開され、アイスホッケーを続けられる見通しが立ってきたそうだ。

荒畑さん
「もう感謝しかないです。この気持ちを裏切ることはできません。最後まで頑張ります」

大学を卒業して何十年たった今も、昔と変わらぬ思いを持ちつづけているOBたちは多い。チームは現役選手たちだけのものではない。

ついに大会が開催!

10月の終わり、ことし最初のリーグ戦が開かれることが決まった。無観客ではあるが、待ちに待った大会だ。

東京都アイスホッケー連盟のHPに掲載された大会日程

ライブ配信で応援

深夜23時半すぎ、試合前の練習の様子が、スマートフォンから流れはじめた。無観客試合のため、マネージャーたちがライブ配信をしてくれたのだ。本当に便利な時代になったものだ。30年前では、こんなことは考えもしなかった。
私は自宅で応援することにした。

初戦の相手は慶応大学のチーム。感染防止のため他大学との練習試合も制限されてきたので、ほぼぶっつけ本番だ。

「ピピーッ」

ホイッスルが鳴り、いよいよ試合がはじまった。

マネージャーがスマホで撮影した試合

序盤、互いに試合感覚が戻りきらない様子だ。時間ばかりが過ぎる展開がつづいていた。なにせ1年ぶりの試合だし、緊張もするだろうな・・・と画面の向こうに思いをはせる。試合開始から、まもなく20分になろうとしたその時だった。

「ゴール!」

おお~っ、決まった!アシストは雁田さんだ!

ゴールが決まった直後の様子

右サイドから放ったシュートが相手のゴールネットを突如揺らしたのだ。これまでの苦労が一気に吹き飛んだかのように選手たちは喜びを爆発させていた。
試合はこの1点を守りきり、なんとか早稲田が、ことしの初戦を飾ることができた。

新入生が入りました!

その後、雁田さんから、うれしい知らせが届いた。

「先日、SNSの呼びかけに新入生から連絡があり、新たに4人入って5人になりました。あと来年1月には、OBたちが集まって持続的な支援ができる仕組みをつくろうと話が進んでいます。少しずつ先が見通せるようになってきました」

第3波 大切な場所を守る力

この記事を書いている最中にコロナの第3波がやってきた。
しかし今回の取材で、現役生や卒業生たちの大切な場所は、これからも守っていけると確信できた。
どんなに世の中が変わろうとも、人との関わり方が変わろうとも、決して変わらないもの。
“人と人とのつながり”こそ、様々な困難を乗り越えていける力になると感じた。

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