WEBリポート
  1. NHK
  2. ちかさとナビ
  3. WEBリポート
  4. コロナ禍の子ども食堂 食材配布で見えた厳しい現状

コロナ禍の子ども食堂 食材配布で見えた厳しい現状

  • 2020年11月13日

「しえんをありがとうございます。お米がいただけてお肉が買えます」

これは、コロナ禍で思うように活動できなくなった神奈川県鎌倉市の子ども食堂が、困っている家庭に食材を無料で配布する取り組みを新たに始めたところ、子どもから受け取った感謝の手紙です。活動を通じて見えたのは、家庭や仕事の事情で支援を必要とする人たちが直面している厳しい現状でした。

横浜放送局 鎌倉支局/中村早紀

子ども4人の母子家庭 “お米はすごく助かります”

10月25日の日曜日。子ども食堂の活動を続けてきた団体が、ひとり親家庭に食材の配達に行くと聞いて、筆者も同行させてもらいました。

訪れたのは、小さな赤ちゃんを含む4人の子どもがいる母子家庭です。

玄関先で米などを受け取った母親はこう語りました。

「うちは子どもが多いのでお米はすごく助かります。夜勤をやらないと社員になれないので、子どもが小さいうちはパートで頑張るしかありません」

4人の子育てだけでも大変なのに、仕事まで…。一家の大黒柱としてひとりで家族を支えるお母さんの苦労をかいま見た思いでした。

コロナ禍で子ども食堂は4か月間の休止に

食材を届けたのは、鎌倉市で子ども食堂の活動を続けてきた「ふらっとカフェ鎌倉」の代表、渡邉公子さんです。

もともと渡邉さんの団体は、新型コロナウイルスの感染が広がる前は、毎週、休日の飲食店を間借りして子ども食堂を開き、老若男女、大勢の地域の人が集う交流の場となっていました。しかし、感染拡大を受けて、およそ4か月の間、活動を休止せざるを得ませんでした。

その間も、新聞やテレビ、それにインターネットでは、連日、生活に困窮する人たちのニュースが報道されていました。

「鎌倉も例外ではなく、困っている家庭がいるに違いない…」

渡邉さんたちは、コロナ禍でもできることは何かを考え、8月から食料の無料配達に乗り出しました。来る人を待つのではなく、こちらから外に出かけて、手を差し伸べる活動を始めたのです。

公園の水飲み1日1食の家庭を知った

ひとり親家庭を対象に食料の配布の希望を募ったところ、支援を求めるメールや電話が寄せられました。

3か月前、渡邉さんたちが最初に配達をしたのが、3人の子どもがいる家庭でした。

その家庭では、公園の水道の水を飲み、1日1食しか食べることができなかったといいます。渡邉さんは、直接食材を届けるという新しい活動を通じて、支援の必要な人たちの存在に改めて気づかされたといいます。

「ふらっとカフェ鎌倉」渡邉公子代表
「実際にみなさんとお話してわかったのは、ひとり親家庭のお母さんにパートの方が多いということです。コロナ禍で解雇されてしまったという家庭もありました。中学生と小学生のいる家庭で、夏休みだったからかもしれませんが、1日1食だったので助かりますって言われたのが、ちょっと涙しましたね」

“無料でもらって恥ずかしい”

筆者が配達に同行したこの日。渡邉さんは、さらに2つの家庭に食材を届けました。

3人姉妹の母子家庭を訪れた際、母親は食材をもらうことに対して戸惑いを見せました。

「今回、初めて食料をいただいてとてもありがたいです。でも、無料でもらってしまって恥ずかしいという気持ちがちょっとあります」

「遠慮しないで相談ちょうだいね」

渡邊さんはこう声をかけていました。

さらに、用意してきた炊飯器で作れるチャーハンや、さつまいもご飯の手書きのレシピを一緒に手渡していました。

コロナで月4万の減給

また、3人の子どもがいる別の母子家庭では、食料を受け取りに出てきた小学生の男の子が、大好物のあんパンを受け取り大喜びをしていました。

母親
「元々薄給なんですけれど、コロナの影響で月4万円の減給になりました。週末、子どもたちと公園にペットボトルを持って水を取りに行ったこともあります。でも支えてくださる方が多くて、精神的には寂しくないかもしれません」

この時、渡邉さんは子どもたちから感謝の手紙を受け取りました。

車のなかで見てみると、チューリップのイラストの下にかわいらしい字で「しえんをありがとうございます。うれしいです。お米がいただけてお肉が買えます」と綴られていました。

パンの配達業務に見えるように

この活動を支えているのは、地域の人たちです。
配布されるのは地域から寄せられた米やパン、それに野菜や乾物などの食材です。新たな取り組みを知った地元の商店や家庭からは、以前にも増して寄付が集まるようになったといいます。

食料を届ける配達も地元のボランティアが担っています。
渡邉さんの頼れる相棒が「かまくらベーカリー」の店主、山本眞揮さんです。

配達する車は、パンの配達に使う業務用の車です。食料を受け取る家庭が気兼ねすることがないように、通常の配達業務に見えるようにとの気配りです。

市内の幼稚園や福祉施設にパンを届けていた経験から、鎌倉の交通事情にも精通しています。

「かまくらベーカリー」の山本眞揮さん
「鎌倉で長年ずっとパン屋をやってきたからね。配達先の子どもたちにおいしいパンと喜んでもらえてうれしいよ」

弁当の無料配達へ 市も活動資金募る

鎌倉市によると、ことしに入り、失業や休業で家賃を払うことが困難になった世帯に支給する住宅確保給付金の申請は急増しています。昨年は1件だった申請数は、ことしは10月末現在で280件に上っています。

団体では、およそ20世帯を対象に月に1、2回、食料を届けていますが、さらに活動の幅を広げて、無料の弁当の配達も始める計画です。

鎌倉市も、団体の活動を支えようとガバメントクラウドファンディングで活動資金を募っています。集まったお金は、無料で配る弁当の容器を購入するための費用や、配達の車の燃料費などに使われるということです。

配達と食堂の2本柱で

「ふらっとカフェ鎌倉」は、9月から一部の活動を再開しましたが、開催の頻度は減り、感染防止のため、まだ参加人数も限られています。

取材した10月下旬の夕方は、開催場所となった鎌倉駅前のカフェでは、大人数が一度に集まらないように事前に予約をしてもらったうえで、家族連れなどの利用者には来店時間をずらして店に来てもらうようにして対応していました。

渡邉さんは、配達の活動を通じて新しく関わりのできた人たちにも子ども食堂に来てもらい、地域での支援につなげていきたいと考えています。

渡邉公子さん
「コロナだから何もできないと言っては前に進めませんので、この中でどうやったら進んでいけるかを考えようと思っています。貧困だとか貧困でないとかではなく、交流場所が必要なんです。食べることはうれしいし、みんな楽しくなるので、食を介したところが賑やかになるんだと思います。食材の配達と子ども食堂の2本柱で活動して、市内の小学校区ごとにふらっとカフェを作りたいです」



鎌倉市では、ふるさと納税を活用したクラウドファンディングで支援を呼び掛けています。
「余ってしまう食材を必要としているところへ!~鎌倉で食を通じた地域のつながりを~」
(2020年11月15日まで)

「問い合わせ先」
鎌倉市生活福祉課 
0467ー61ー3958


 

ページトップに戻る