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どうなる東京五輪・パラ 緊急事態宣言延長や森会長発言の影響は

  • 2021年2月19日

2月上旬、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が東京など10都府県で延長された。東京オリンピックの開幕まで半年を切り、大会の準備に残された時間も限られる中、影響も懸念されていた。こうした事態に追い打ちをかけたのが、大会組織委員会の森会長(当時)から飛び出した、女性蔑視ともとれる発言だ。
新型コロナの影響も続く中で、大会関係者が繰り返し強調する「安全・安心な大会」は実現するのか。そして宣言延長や“発言”の影響は?都への取材から、大会の行方を展望する。
(都庁担当/岡部 咲)

冷静に受け止めた宣言延長 その直後に「絶句」

「すぐ解除すれば、また感染者数が増えるかもしれない。感染が収まることが第一だ」
「感染が落ち着けば社会全体が落ち着く。その結果、安全に大会を開催できたらいい」

3月7日までの緊急事態宣言延長の決定に、都のオリパラの担当者は「黙々と準備を進めるだけ」と冷静に受け止めていた。

小池知事の臨時会見(2月2日)

「コロナとの長い闘いに、つらく苦しい思いをしている方も多いと思うが、もう、このようなことは終わらせなければならない」

政府の延長決定の直後に、開催都市のトップである小池知事も力強く呼びかけた。

しかし、その翌日、小池知事が「絶句した」と吐露した、思わぬ事態が飛び込んできた。
大会組織委員会の森会長が「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と発言したのだ。「女性蔑視だ」などの批判が瞬く間に国内外から強まり、森会長は、発言を撤回し、謝罪。ただ、その後も批判は収まるどころか拡大の一途をたどり、発言から9日後の2月12日、森会長は辞任表明に追い込まれた。

東京大会組織委 森喜朗会長(2月12日)

「大会の開幕まで半年を切る中で、会長の交代は想定していなかった。世論がどうなるか…」
「コロナで暗雲が立ちこめていたところに、思いもしなかった発言問題で、しっかり立て直さないと混乱や批判が続く」

取材に対し、都の担当職員は、落胆の色を隠せなかった。

懸念通り、辞任発表後も発言への批判は収まっていない。
「人種、肌の色、性別、性的指向などを理由にしたいかなる差別も否定するオリンピック・パラリンピックの精神に反する」とも指摘された発言に対して、都の担当部署には抗議や意見の電話やメールが殺到。2月17日午後5時の時点で、2396件にのぼった。
大会運営の柱のひとつで、都が募集した「都市ボランティア」を辞退するという連絡も、187件、寄せられたという。
このほかに、組織委員会が募集した「大会ボランティア」も、辞退した人はおよそ740人にのぼっていて、活動する日時の見直しが必要になる可能性もあるという。

宣言延長 都のオリパラ事業に影響

そもそも、新型コロナの感染拡大による緊急事態宣言の3月7日までの延長は、都が関わる東京大会に向けた事前イベントに影響を及ぼしていた。

その1つが、都内62区市町村で実施予定だった聖火リレーのトーチの巡回展示だ。
大会への機運を盛り上げるためのイベントだが、緊急事態宣言とその期間延長により、15の区と市で延期となった。3月25日に福島県からスタートする予定の聖火リレーに水を差す形となった。

また、競技会場の活用にも影響が出ている。大会の1年延期を受け、東京都は、東京大会で使用する競技会場を競技団体に貸し出していた。

大井ホッケー競技場

しかし、1月の宣言発出により、「大井ホッケー競技場」(品川区・大田区)や「夢の島公園アーチェリー場」(江東区)では、新規の予約受付を中止。

こうした施設では、大会に向けた仮設の工事が2月中から順次始まるため、貸し出しができなくなる。宣言の延長で施設の利用機会がさらに減ってしまう状況となっている。

いつ見える大会の姿  “発言”の影響も

新型コロナに加えて森会長の辞任が引き起こした事態は、大会の姿を決める日程にも影響を及ぼしている。
東京大会までの主な日程を見てみると、2月から3月にかけては、IOC=国際オリンピック委員会などが大会のコロナ対策の準備状況を確認する会議や、IOCの総会など、重要なイベントが目白押しだ。

大会のあり方に大きく関わる観客について、都や組織委員会は、人数の上限と、海外からの受け入れを、ことし春までに判断するとしている。これについて、都の幹部は、2月中の決定には否定的な見方を示す。

「観客に関する決定には根拠もあわせて示す必要があるが、感染状況も変化していて、緊急事態宣言も延長されたので、おそらく3月のギリギリまで引っ張るだろう」

大会の姿を大きく左右することになる「観客の有無」の決定が大会の開幕に近づけば近づくほど、影響は少なくない。
延長された緊急事態宣言の新たな期限は3月7日。その3月以降には、大会関係者や観客の円滑な輸送に向けて、実際に車両を走らせて運行を検証するテストイベントが予定されている。仮に観客の人数が少なくなれば輸送計画の見直しも迫られ、必要な車両やドライバーの調整などの作業を急ピッチで進めなければならない状況に追い込まれることになる。

こうした準備を着実に進めなければならない局面を迎えようとしていた矢先に、突如として立ちふさがった森会長の発言問題。
小池知事は「今ここで会談をしても、あまりポジティブな発信にはならないと思うので、私は出席することはない」と述べ、2月17日の開催で調整していたIOC・組織委員会・東京都・国の代表による4者会談への出席を「拒否」。
今も会談の日程は未定で、開幕まで半年を切った中での会長辞任という極めて異例な事態は、大会準備にも影響を与えている。

都の幹部も、さすがに焦りを見せる。

「これから重要な判断を迫られる時期なのに、トップの辞任問題で全体がうまく回らなくなったら、当然、都の準備にも影響が及ぶ。大会の1年延期とコロナの感染拡大に加え、今回の発言問題が、大会に向けた盛り上がりに冷や水を浴びせることになりかねないと危惧している」

大会開催をめぐり都議会は

東京都議会

一方、2月17日からは都議会の定例会が開会。「感染が拡大する中、ことしの夏に大会を開催するのは現実的ではない」として、第4会派の共産党は、小池知事に対し、ことし夏の開催の中止を要求している。
都が東京大会開催で負担する費用は1兆4000億円を超える見通しで、都がこれまでに組んだ新型コロナ対策の予算のうち、都の負担分に匹敵する(※)。新型コロナ対策費は、感染状況次第ではさらに増える可能性があり、都の財政を考えれば、東京大会に使うことができる予算には限界がある。大会開催の是非などをめぐって、論戦が見込まれる。

※注 新型コロナ対策予算=総額2兆8000億円余、国と都がおおむね半分ずつ負担(都による 2月18日現在)

感染状況次第 残された時間は

先日、都の幹部は、今後の見通しについて、こう語ってくれた。

「まったく何もやらない=中止は、IOCも決断できないと思う。かといって、フルスペックでやるのは現実的ではないだろう。ことしの夏は、一般向けのワクチン接種の時期とも重なる。すべては感染状況次第だ」

今から1年近く前、大会の1年延期が決まって以降、「中止」「再延期」「無観客」といった悲観的な見方をはじめ、先日の森会長の発言など、さまざまな報道が世界中で飛び交っている。

大会への高い関心の裏返しとも言える状況の中で、開催都市・東京の小池知事の視野には、現段階で「中止」の2文字はない。

小池知事(2月5日定例会見)
「それぞれ感染症の拡大の状況にもよりますけれども、東京都とすれば、開催都市としての責任がございますので、それにきちんと見合うように、これからも皆さんのご協力を得て、進められるように準備をしておくことが何よりも重要であります。これはもう粛々と進めるというのが、開催都市でございますので、それについては今申し上げた通りであります」。

大会の具体的な姿が見えるのはいつになるのか、感染状況が鍵を握る。大会まで半年を切ったいま、判断を示すまでに残された時間はそう多くはない。 

  • 岡部 咲

    首都圏局 都庁クラブ

    岡部 咲

    2011年入局。宮崎局、宇都宮局を経て、20年9月から都庁担当。

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