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新型コロナ 罰則付き条例案に波紋 都民ファーストの会の狙いは

  • 2020年10月20日
「感染して外出しないよう求められたのに従わず、他人に感染させたときに5万円以下の過料を科す」。
えっ罰則!?さぁ皆さんはどう思いますか?
終息の兆しが見えない新型コロナウイルス。全国の都道府県で感染の確認が最も多い東京都の議会では、最大会派の都民ファーストの会が打ち出した、ある条例案が波紋を広げている。(首都圏局/記者 成澤良・古本湖美)

要請に従わなければ罰則!?

事の発端は、9月9日にさかのぼる。
東京都議会の最大会派で、小池知事の都政運営を支える「都民ファーストの会」が開いた記者会見。

2020年9月9日の会見

目的は、新型コロナウイルスに関する独自の条例案の発表だった。
条例案のポイントは以下のとおりだ。

▼新型コロナウイルス感染症対策強化に関する特別措置条例案

行政罰(5万円以下の過料)

◇陽性者が就業制限や外出自粛要請に従わないで他人に感染させた場合
◇事業者が休業や営業時間短縮の要請に従わないで一定人数以上の感染を生じさせた場合
◇感染の疑いがある人が正当な理由なく検査を拒否した場合

 

都民ファーストの会は、これまでの感染拡大の局面に対応するなかで、国の特別措置法に基づく要請に強制力がないなど、現行法令の実効性の問題点が明らかになったとして、上記のような罰則を盛り込んだ条例案を、「議員提案」の形で議会に提出し、制定させようというのだ。
都民ファーストの会によると、新型コロナウイルス対策で罰則付きの条例が制定されれば全国初だという。

条例案の受け止めは? 反対>賛成

都民ファーストの会のホームページより

こうした条例案を都民や国民はどのように受け止めているのか。
都民ファーストの会は、独自の「パブリックコメント」として、ホームページに専用の入力フォームを設けて意見を募り、9月12日から10月13日までに寄せられた分を、中間まとめとして公表した。

主な意見は以下のとおりだ。

賛成・条件付き賛成

▽真面目にやっている事業者が報われるようになるので賛成
▽国が特措法の改正に動かないので東京都でぜひお願いしたい
▽罰則対象を広げてほしい 外出やガイドライン不遵守で即、罰則を適用すべき
▽感染拡大防止には一定の強制力が必要
▽時限的な条例にすべき

反対

▼罰則を付けることは人権侵害だ
▼営業権の侵害だ
▼補償とセットにすべき
▼誰が誰に感染させたかを証明することは不可能
▼差別を助長する 差別対策も必要

 

ホームページの入力フォームを通じて寄せられた意見の総数は2719件。
都民ファーストの会は、「条例案への賛否ではなく、課題についての意見を伺っている」として、「賛成」と「反対」の具体的な数は明らかにしていないが、会派の対策プロジェクトチーム(PT)の責任者を務める伊藤悠都議は、「あえて言えば、反対意見のほうが多い」と話している。

罰則付き条例案 他の会派や小池知事は…

では、条例案が可決・成立する見通しはどうなのか。都議会の会派構成(10月20日時点)を見てみよう。

都民50・自民26・公明23・共産18・民主5・東み3・無(生ネ)1・無(自守)1

都民ファーストの会の議席は10月20日時点で50。条例案を可決させるためには、過半数の64が必要で、都民ファーストの会単独では届かない。つまり、他の会派の協力が欠かせないというわけだ。
しかし、とりわけ、国の特別措置法にも盛り込まれていない「罰則付き」という内容には、抵抗感を抱く都議も多く、今のところ、他の主要会派から賛同する声は聞こえてこない。

「来年夏に迫った都議選に向けて、都民ファーストの会が存在感を示そうとしているだけだ」。

こんな冷ややかな見方さえ出ている。

では、東京都側の動きはどうか。
都は、都議会の動きに先んじて、9月~10月の都議会定例会に条例案を提出した。
審議の結果、可決・成立した条例は、都民に対し、感染が確認された場合は入院や療養をした上でみだりに外出しないことなどを求める内容だが、強制力のない“努力義務”にとどまっている。
小池知事も、都民ファーストの会の条例案については、賛否も含めて具体的な言及を控えたままだ。

理解は得られるか 他の会派に協力要請へ

都民ファーストの会は、都議会の動きや、「パブリックコメント」で寄せられた意見を踏まえ、条例案の一部を見直す考えを示している。
「時限的な条例にすべき」という意見には、都の対策本部が設置されている期間に限定することを検討し、「誰が誰に感染させたかを証明することは不可能」という意見に対しては、複数の人への感染の場合に限定することを検討しているという。ただ、「罰則付き」の旗は降ろしていない。

10月14日

伊藤悠都議(都民ファーストの会 政務調査会長代理)
「条例案の狙いは、1つ1つに対して罰を科すことよりも、罰のある条例をつくることによって皆さんに自制を促したいということだ。(感染が確認された人が)飲み会をやるとか、わざわざ会食をするとか、飲み屋に行くとか、こういう行為は控えていただきたい。そうした行動がいかに極端な迷惑行為にあたるかということを認識いただきたい」。

都民ファーストの会は、「感染状況を見ながら」としつつも、12月に開かれる次の都議会定例会に条例案を提出する方針だ。それに向けて、近く、都議会の他の会派に正式に協力を求め、条例案の内容について協議したいとしている。

「罰則付き」は感染自体を否定的に捉えることになり、「感染が確認された人への差別を助長しかねない」という指摘もある中で、都議会の最大会派が制定を目指す条例案。他の会派だけでなく、“都民の理解を得る”という丁寧なプロセスを踏むことも求められるのではないだろうか。
 

【追記】(令和2年12月2日)
制定を目指している罰則付きの新型コロナウイルス対策の条例案について都民ファーストの会は、他の会派の協力を得られず可決の見通しが立たないことから、現在、開会中の都議会への提出を見送ると発表しました。そのうえで、今後、会派の間で条例案についての勉強会を設けたうえで、次の議会での提出を目指すとしています。

  • 成澤 良

    首都圏局 都庁クラブ

    成澤 良

    2004年入局。神戸局、政治部を経て、2018年夏から都庁担当。

  • 古本 湖美

    首都圏局 都庁クラブ

    古本 湖美

    2011年入局。岡山局、大分局を経て、2019年夏から都庁担当。

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