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<span>都政担当記者の</span><span>TOKYO深掘り中!</span>

“スムーズビズ”って何ですか?

 

いよいよ来年に迫った東京オリンピック・パラリンピック。この大会に向けて、東京都が新たに打ち出した取り組み「スムーズビズ」。定着した「クールビズ」。少し聞いたことがある「時差Biz」。今回の「スムーズビズ」とは、いったいどんな取り組みなの?

首都圏放送センター・早川 沙希

 

今度は“スムーズビズ”?

小池知事
「キャッチフレーズは『住んでいる人も訪れる人も、より快適な東京へ』。東京大会の時から働き方変わったよね、おまけに生産性も上がったよね、こういう循環に回っていくことを大変期待している。スムーズビズが大会を成功させて、レガシーとなることを祈念しています」

5月29日、東京・丸の内のオフィス街に企業関係者など約300人を集め、開かれたイベント。東京都は、企業などに対して、スムーズビズへの参加を呼びかけました。

スムーズビズとは、“スムーズ=円滑”な通勤や物流などの実現に取り組むこと。

具体的には、

時差Biz
鉄道が混雑する時間を避けて出退勤する
テレワーク
ネットなどを使って通常の職場から離れた場所で働く
TDM=交通需要マネジメント
混雑を緩和するために、道路や鉄道の交通量を抑制・分散する

を合わせた取り組みだと言います。

要するに、多くの企業や働く人などが参加して、来年の東京大会で懸念される道路や鉄道の混雑を緩和し、大会後にも生かすことができる、“働き方改革”や“生産性の向上”を行おうというのです。

環境大臣の時代に「クールビズ」の旗振り役となり、おととしから「時差Biz」を推進してきた小池知事。「次はスムーズビズだ」と力を入れています。

 

混雑は大丈夫?東京大会

混雑緩和の重点取り組み地区
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来年の東京大会では、どの程度の混雑が起きるのでしょうか?

都によると、東京大会の期間中、大会関係者や観客など、のべ1000万人が訪れるとみられています。

競技会場の多い臨海部を通るりんかい線やゆりかもめは、通勤時間ではない時間帯でも混雑が発生し、首都圏の鉄道の利用者は通常より約1割増加するとみられています。
また、首都高速道路では、このまま何も対策をとらないと、混雑が2倍近くになると予想されています。

都や組織委員会などは、大会運営と経済活動を両立するため、競技会場が集まる臨海地域や新宿、渋谷など都内の16地区について、交通量を30%程度減らす目標を掲げています。大会期間中に向けては、首都高速道路の一部で、通行料金を値上げすることも検討されていますが、道路や鉄道の利用を強制的に抑制することは難しいのが実情です。

 

ロンドンに学べ!

このため、交通量の抑制に参加することが、みずからのメリットにつながるかもしれないと感じてもらうことが必要になります。

都がその参考にしているのが、2012年のロンドン大会です。

ロンドンでは、大会の前にさまざまなキャンペーンを打ち出すことで、企業や鉄道の利用者に、大会期間中、交通が混雑するということを強く意識づけました。
その上で、移動手段の変更などの対策を段階的に呼びかけたのです。

この結果、ロンドンでは、大会の期間中に80%あまりの企業がテレワークを実施するなどして、交通混雑の緩和につなげることができました。

去年秋にロンドンを視察した小池知事は、会談したカーン市長から「大会をきっかけにテレワークが定着し、その後も働き方が柔軟になった」という説明を受けました。大会での取り組みが、そのまま、働き方改革につながったという経験を、東京でも取り入れたいと考えています。

 

この夏にトライアル

働き方改革が叫ばれる今、東京でも大会を前に、積極的に取り組む企業が出ています。

例えば、冒頭のイベントに参加した大手信託銀行。今年の夏に可能な社員が原則、時差出勤を行うほか、半分の社員がテレワークを実施、さらに夏の2週間は、主要な会議を原則禁止する「ブラックアウト期間」も設けて、休暇を取りやすい環境を整えるといいます。取り組みの状況を見た上で、継続していくか、検討するということです。

都などは、大会1年前にあたる来月22日から9月6日を取り組みの推進期間に位置づけ、来年夏をにらんで、スムーズビズへの参加を呼びかけています。

 

課題も山積、レガシーなるか

ところが、このスムーズビズについて企業に取材をしていると、「協力したい気持ちはあるが、取引先の理解が必要になり、自分の会社だけで検討するのは難しい」という声をよく聞きます。

働き方改革は、会社の制度や社員の意識の改革で実現できる部分もありますが、配送などは取り引き先の都合もあり、簡単に変更することが難しいようです。

都内の企業を対象にした調査では、東京大会の期間中の輸送を円滑にする取り組みに約80%の企業が「協力したい」と答えましたが、物流面の対策を社内や取引先との間などで何らかの検討を始めたと答えた企業はわずか11%でした(東京商工会議所の調査・今年3月)。1年先のことを、まだ考えることができないという企業も多いようです。

しかし、ずっと先に開かれるイベントと感じられていた東京大会まで、まもなくあと1年です。

大会期間中に“商品が届かない”“部品の搬入が遅れた”“商談に間に合わない”といったトラブルに巻き込まれないため、そろそろ準備が必要な時期が来ているのではないでしょうか。

そして、東京大会をきっかけに、無意識のうちに習慣となっている業務の進め方や取り引きを見直し、業務の効率化や働き方改革につなげることができるかもしれません。

聞き慣れない“スムーズビズ”は、その名前の定着より、中身を充実させていくことが求められていると思います。

東京大会で混雑が予想される鉄道や道路、地域は、都のホームページにも随時掲載されています。1年後の自分を想像しながら、東京大会でどのように行動するのか、考えてみてもよいかもしれません。

 

< 東京大会の輸送影響度マップ(都のHP) >
(NHKサイトを離れます)

 


 

首都圏放送センター記者
早川 沙希

新潟局、名古屋局を経て、おととしから都庁担当