ページトップへ

<span>都政担当記者の</span><span>TOKYO深掘り中!</span>

小笠原のチョウも育てています!

 

ゾウやキリン、そしてパンダ・・・、さまざまな動物を見ることができる動物園。その役割は、都市で生物に接することができるだけではありません。小笠原諸島から奥多摩まで、広大な地域を持つ東京の動物園には、絶滅の危機にさらされている生物を保護し、人との共存を図るという重要な役割があるんです。

首都圏放送センター・小倉 真依

 

絶滅の危機 小笠原のチョウ

オガサワラシジミ
オガサワラシジミ

鮮やかな青紫色の羽が特徴のチョウ、「オガサワラシジミ」。大人の親指ぐらいの大きさで、世界で小笠原諸島にしか生息していない貴重なチョウです。

世界自然遺産に登録されている小笠原諸島。東京都内ですが、都心から1000キロも離れる自然豊かなこの島には、長い時間をかけて独自に進化をとげてきた生物が数多く生息しています。

「オガサワラシジミ」もこうした生物の1つですが、島の外から入ってきたトカゲに食べられるなどして、生息数が激減。母島でわずかに見られるだけになってしまいました。

 

繁殖の拠点は多摩地域

このチョウの保全活動が行われているのは、小笠原から遠く離れた東京・多摩地域にある多摩動物公園です。

この動物園で、世界で初めてとなる「オガサワラシジミ」の人工繁殖が始まったのは2005年。島からチョウの卵や幼虫を運び、繁殖の挑戦が始まりました。

遠く離れた地での繁殖は苦労の連続でした。まず、えさの問題。「オガサワラシジミ」の幼虫は、小笠原に自生するオオバシマムラサキという植物を食べています。当然、小笠原以外にはない植物で、動物園は人工繁殖と同時に、この植物も育て、チョウの数を増やしてきました。

 

謎に包まれた生態

ガサワラシジミ幼虫
オガサワラシジミ幼虫

しかし、安定した人工繁殖がすぐにできたわけではありません。野生ではなく、人が飼育した場合に、どのような条件で交尾をするのかが、それまで分かっていませんでした。

動物園は人工繁殖用のハウスを整備。温度や湿度などを繰り返し見直し、繁殖を試みましたが、安定した繁殖ができるようになるまでには11年もかかりました。

最近も今月19日に卵から孵化しましたが、動物園は繁殖技術の確立に専念しているため、一般公開はしていないということです。

 

飼育担当の古川沙織さん
古川紗織さん

飼育担当の古川紗織さん

「気候や湿度などを同じように管理しても、まだスムーズにいかないこともある。どうしたら安定的に繁殖できるのか、今後も継続的な観察が必要。万一、オガサワラシジミが絶滅するようなことがあっても、人工繁殖したものを小笠原に返すことができるようにと考えて飼育している」

 

小笠原諸島の生物を知って!

アカガシラカラスバト
アカガシラカラスバト

その一方で、多摩動物公園で見ることができる小笠原の生物もいます。

国の天然記念物で赤みがかった頭が特徴のハト「アカガシラカラスバト」。小笠原に生息する野生のネコなどが原因で、一時は40羽程度まで減ったとみられ、2007年から多摩動物公園で繁殖の試みが始まりました。

動物園で飼育されたハトは産卵をしたものの、親鳥が卵をあたためることをせず、ひなを育てるまでに至らない時期が長く続きました。その後、小笠原で保護された野生のハトと、改めてペアリングを行ったところ、ようやく4年前に繁殖に成功しました。今では19羽が飼育され、一般公開されています。

多摩動物公園は、「小笠原諸島は東京都。そこに生息している固有の生きものを守るのは都立の動物園としての役割だと感じている。小笠原の動物について、もっと多くの人に知ってもらいたい」と話しています。

 

始まる全国の動物園の連携

アジアゾウ
アジアゾウ

多摩動物公園を含む4つの都立の動物園・水族園は、そのすべてが貴重な生物を保全する取り組みを行っていますが、最近は都外の動物園と連携する動きも始まっています。

都立の動物園を運営する東京動物園協会は今年2月、名古屋市の東山動植物園との間で、動物の保全に向けた連携協定を結びました。その取り組みの1つは、アジアゾウの保全です。

アジアゾウは、世界の野生生物の保護を目指すIUCN=国際自然保護連合のレッドリストで、絶滅危惧種として指定される一方で、日本で繁殖に成功したのは10例あまりしかありません。日本で飼育される頭数が少なく、繁殖の相性のよい相手を見つけることが難しいということで、アジアゾウを飼育する動物園どうしの連携が不可欠になっているのです。

生物を保全するために動物園どうしが連携し、ノウハウの共有などを行おうというネットワーク作りも進められているのです。

 

人と動物の共存を

貴重な生物を守ろうという取り組みが広がっているものの、開発や外来種の繁殖などで絶滅の危機にある生物は増え続けているのが実情です。貴重な生物を次の世代につなげていくために、動物園の役割はますます大きくなっています。動物園を貴重な生物を守る拠点として見ることは、人と生物が共生できる環境づくりを考えるきっかけになるかもしれません。

 


 

首都圏放送センター記者
小倉 真依

鳥取局・大阪局・盛岡局を経て、去年から都庁担当