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<span>都政担当記者の</span><span>TOKYO深掘り中!</span>

都庁から紙がなくなる日は来るか

 

最近は通勤電車の中で、紙面ではなく、スマホで新聞を読む人が目立つようになるなど、私たちのまわりで進むペーパーレスの動き。東京都庁でも、小池知事が旗振り役となって、ペーパーレスが進められている。紙の文化が根強い“お役所”で紙がなくなる日は来るのだろうか?

首都圏放送センター・成澤 良

 

知事出席の会議 紙いりません

5月9日、技術革新が進む中での東京のあり方を考える都の有識者会議。出席者の前には、都が用意した紙の資料は一切ない。あるのはタブレット端末で、会議室の一角には大型スクリーンも置かれる。会議の開始前には、事務を担当する職員が次のようにアナウンスする。


都の担当職員

「本日の会議次第および会議資料は、タブレット内に入っております。タブレット内の資料は、説明にあわせて事務局職員が操作いたします」

 

小池知事が出席する会議では、もはや見慣れた光景となった。

この有識者会議で、小池知事は、口癖になっている「3つの“レス”」にも触れつつ、都がペーパーレスを推進していることを強調した。

 

小池知事

「いま、都庁の仕事はペーパーレス化を進めておりまして、(都の)各局ごとに、どれだけ減ったかという競い合いをしているところでございます。まず(都が)“隗より始めよ”で、ペーパーレス、キャッシュレス、ハンコレス(=決裁時などのハンコの簡略化)に落とし込んでいくことで、都民へのサービスをより向上させます」

 

都庁のペーパーレス競争!

都は、都庁本庁舎の各部局で、コピー用紙の使用量を2020年度までに20%削減することを目標にしている。基準となるのは、2016年度の約2億100万枚。これを4000万枚あまり減らすという高い目標だ。

2018年度は10%削減、2019年度は15%削減という段階的な目標も設定している。
2017年度は3.3%の削減で、2018年度の結果は近く公表される見通しだが、都政改革を担当する職員は、「おおむね順調に進んでいる」と自信を見せる。

コピーサービスを使用した枚数や“ペーパーレス会議”の実施状況は、部局ごとの実績も公表される。他の部局との競争ということもあって、“ライバル”の数値を気にする職員もいるという。

 

変わる都庁の働き方

今年1月以降、職員が小池知事に行う日常の事務説明も、紙からタブレット端末に切り替えたという。
さらに、幹部職員への説明や職員どうしの打ち合わせでも、印刷した紙の資料を使うことは減り、職員に貸与されたノートパソコンとモニターの画面をつないで資料を映し出し、意見を出し合う。

紙の資料の準備にかかる時間がなくなったうえ、みんなで同じ画面を見るため、以前よりも活発な議論が行われるようになったという職員の声もある。ペーパーレスによって業務が効率化され、“働き方改革”にもつながっているという。


都政改革を担当する職員

「紙の資料を大量に刷り出して、まとめて、人数分用意して…といった手間がなくなったぶん、仕事が楽になった。ただ、複数のデータを見比べて議論するときなどは、1つの画面だけではやりづらい。工夫も必要だと思うし、だんだん慣れていかないと…」


紙の文化が根強い“お役所”でペーパーレスをさらに進めるためには、職員の意識改革がもっと必要なようだ。

 

ペーパーレスで交通渋滞緩和?

このペーパーレスには別の側面もある。来年の東京オリンピック・パラリンピックで懸念される交通渋滞の緩和策の1つとしても位置づけられているのだ。

「大会までに会議の資料を電子化するなどしてゴミの量を約40%削減すること」
「コピー用紙などの事務用品を大会開始前に納品してもらうこと」

こうした取り組みで、紙の納品やゴミの回収による車の移動を減らそうと考えている。
そして東京大会に向け、都内の企業に対し、都の取り組みを参考にして欲しいと呼びかけている。ペーパーレスだけで交通渋滞が緩和するわけではないが、こうした小さな取り組みの積み重ねが大切なのだと思う。

 

紙がないからこそ…

しかし、会議の資料を中心に紙がなくなっていくことで、行政の情報公開はどうなっていくのだろうか。

都はこれまでも、公文書を紙と電子データの両方で保存しており、電子データが増えても情報公開のあり方は変わらないとしている。また、2017年10月からは、都民が、都の事業などの公文書についてインターネットで情報提供を依頼すると、電子データを無料で提供するサービスも始めている。紙の場合は、コピー代金が1枚10円程度かかることを考えると、利便性が高まっていると言える。

私たち記者に身近なところで言えば、これまで紙で行われてきた報道発表資料の配付もペーパーレスにすることが検討されている。毎日、大量の報道発表資料が渡され、記者の机の上にすぐに積み上がっていく。紙が少なくなるのは歓迎すべきことだ。

しかし、改めて思う。肝心なのは、単に紙をなくすことではない。紙であろうとなかろうと、都が、都民に必要な情報をみずからきちんと保管し、公開していくことだ。「紙もなくなって情報もなくなった」とならないよう、ペーパーレスの拡大とともに、情報公開もさらに進めてもらいたいものだ。

 


 

首都圏放送センター記者
成澤 良
平成16年入局
神戸局、政治部を経て、去年から都庁担当