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<span>都政担当記者の</span><span>TOKYO深掘り中!</span>

“議会おじさん”の最後のことば

 

深夜まで始まらない本会議。怒号の飛ぶ委員会。新年度予算案を審議する東京都議会は大荒れとなった。この都議会を最後に、議会担当の都の名物職員が定年退職を迎えた。都に勤務して37年。そのうちの3分の1以上の期間、議会担当をしてきたこの職員のことを知らない都庁担当記者はいないと言っても過言ではない。「記者は議員の懐に入り込んで裏側を探れ!」と叱咤激励する“議会おじさん”。どんな思いで議会と記者のパイプ役を務めてきたのだろうか。

 

大荒れの都議会に助っ人登場

『いったい、いつになったら本会議が始まるのか?』。
2月20日から始まった都議会は、初日から小池知事の都政運営をめぐる都議会の会派間の対立が激化。午後1時から始まり、2時間程度で終わるはずの本会議はいつまで待っても始まらなかった。結局、小池知事の施政方針の表明は予定より約11時間遅れ、翌日の未明に行われる異例の事態となった。
当然、私たち記者は、議会が何時に始まるのか、都議会議員に取材する。しかし、こうなってしまうと、議員たちは部屋から出てこず、携帯にもなかなか出てくれない。私たちは、日程の把握ですら苦労する。

 

都議会の混乱に比例するかのように、この男性職員の動きも慌ただしくなる。
山岸正幸さん、都の議会局広報課の報道係長だ。

 

記者は裏側を探れ!

都議会の各会派が、いま、水面下でどのような交渉や調整をしているのか。
山岸さんは、これまで培ってきた議員人脈をフル活用し、状況を速やかに把握する。
そしてできあがるのが、「山岸メモ」だ。
都議会が今後どのような予定で動くのかが記され、われわれ記者の取材をサポートする「かゆいところに手が届く」メモだ。

 

なぜ、記者たちに丁寧に接するのか。山岸さんに率直に聞いてみると、こう返ってきた。『議会からの公式発表だけだと、絶対に記者さんはわからない。議会は細かい規則がいろいろあったり、会派間の動きがあったり、わかりづらい。議会は基本的にオープンだから、隠すものはないので、わかりきったことは紙で渡してしまって、その裏を探ってもらうのが記者さんのお仕事かなと』。

 

都民と都議会の距離を近く

「山岸メモ」は、都議会の公式発表資料ではない。こうした形で記者をサポートするのは、都の職員の中でも山岸さんぐらいだ。報道係長になってから、ずっと作り続けている。山岸さん自身、学生時代は都議会がどんなところか全く知らなかった。都民に議会や議員が何をやっているのか、もっと知って欲しいという思いで、議会の仕事を続けてきたという。

『なるべく都民に、議会を近くして、議員を近くしたいなっていうのがあってね。従来の都議会の職員は、「議会の結果だけわかりゃいいじゃない」というのが主流だったけど、私は違う。都民にわかってもらえないと、都政じゃないんで。自分たちだけで満足しているのは、都政じゃないでしょ』。

 

第2の人生も都議会

2月に還暦を迎えた山岸さんは、3月末で定年退職となった。4月からは再任用という形で働くが、またもや職場は都議会。都議会の資料を閲覧できる都議会図書館だ。そんな山岸さん、都議会への思いは変わらない。

『今度は図書館だから、過去の資料を調べることが主な仕事。報道の現場に出ることは、まあ、ないんじゃないかな。記者さんには、ぜひ議員に食い込んで欲しいね。議員さんはわれわれが知らない情報をいろいろ知っていて、きっとおもしろい話が聞けるよ』。
山岸さんは、そう笑顔で話してくれた。

ちなみに、「都議会のドン」とも呼ばれ、自民党の実力者だった元都議の内田茂さんも、山岸さんにかかれば、「非常に優しいおじいちゃん」だそうだ。
実は山岸さん、どんな記者よりも人に食い込む力を持っているのかもしれない。

都議会のニュースは、もめたときや混乱したときがどうしても多くなり、ふだんの議会はなかなかニュースになりにくい。それでも、山岸さんのような職員に接して、私も、都民と都議会の距離を近くする、そして、「かゆいところに手が届く」報道のために何ができるのかを追求していきたいと思う。

 


首都圏放送センター記者
成澤 良

平成16年入局
神戸局、政治部を経て、去年から都庁担当