首都圏ネットワーク

  • 2024年3月27日

大地震発生! そのときどう行動する? 井上裕貴アナが体験

#防災やってみた
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キャスターとして、日々、番組で「備えの大切さ」を伝える私。しかし、残念なことに「どんなに備えていても、想定外のことが起きる」のが災害です。不測の事態にどう対応するのか?そんな“瞬発力”が問われる防災訓練に参加しました。後半には、読んでいる皆さんにも考えていただく質問があります。
ぜひ、私と一緒に訓練に参加したつもりで読み進めてください。(アナウンサー 井上裕貴)

次々に発生する想定外! “対応力求められる” リアル防災訓練

これまで多くのアナウンサーが自らの防災力を試されてきた「#防災やってみた」。突然の災害を想定して「体験者は何も知らされず」に体当たりで防災に挑むコーナーです。ついに順番がやってきてしまいました…。

「防災の取材だ」と聞かされ、都内の中学校を訪れた私。ディレクターから取材対象者が来るまで教室で待機するように言われました。そして数分後、インタビュー相手の人が教室に入ってきた、そのときでした…。

「緊急地震速報です!強い揺れに警戒してください!」

校内に響く地震発生のアナウンスと、あの緊急地震速報の音。
その一方で、スタッフは冷静にカメラを回しています。
慌てて机の下にもぐりながら、この日のロケは、私が取材される側なのだ、と気がつきました。

じつは、この日、中学校で行われていたのは「リアル防災訓練」。学校の全面協力のもと、私はもちろん、生徒や先生も対象とした訓練でした。

監修するのは、防災教育が専門の慶應義塾大学の大木聖子准教授。この訓練は、実際の災害時に起きた事例などを元に、大木准教授の研究室の学生たちが仕掛け人となり“パニックになる人”や“けが人”など、災害時の混乱をリアルに表現し、参加者の対応力を見ることが目的です。

大木准教授

今回の訓練では、まず災害時に“どんな状況になるか”を知ってもらう。さらに、混乱する中でも “適切な対応ができるか”。救命救急とか応急手当といったテクニカルなことというよりは、もっと前の段階の“状況の把握”や恐怖する人への“声かけ”など、そういうことを学ぶ訓練です。

CASE(1)“パニックになる人”に遭遇したら…

そんな「リアル防災訓練」に参加することとなった私。訓練だとわかっていてもドキッとする緊急地震速報が流れた直後、インタビュー相手の生徒役である仕掛け人の女性に異変が…。

生徒役

はぁ・・・はぁ・・・

井上アナ

大丈夫ですか?落ち着いてください!どうしたら…。

 

なんと女性は、地震への恐怖からパニック状態に!息もしづらそうになり、過呼吸になっているように見えました。
私は「大丈夫ですか?」「落ち着いて!」と声かけを行いますが、聞こえているのか、いないのか…。

皆さんも、自分の目の前でパニックになる人を想像してみてください。
私は、女性の状況につられるように、少しパニック状態になってしまいました。

CASE(2)“新たに傷病者”が出現 刻々と変化する状況

そんな女性の対応に追われる中、新たな仕掛人が…。足取りがおぼつかない様子で現れた男性。
なんと「腹部を打ってしまった」と言うのです。

生徒役

おなかを打ってしまいました…。

 

私ひとりで、2人の対応は難しい・・・と思っていたところ、男性が「大丈夫」と答えてくれたので、ちょっとの間教室を出て応援を呼ぶことにしました。
ちょうど、廊下で訓練に参加していた中学校の先生に遭遇。すぐに教室に案内しました。
人手も増え、ホッとしたのも束の間。
先ほど「大丈夫」と答えた、腹部を打ったという男性に異変が…。

なんと意識を失い、倒れこんでしまったのです。実はこの時男性は、臓器を損傷している状態だったのです。
“受け答えができたこと”や“血など、目に見える外傷がなかったこと”から、そこまでのけがとは、思いもしませんでした。

先生の指示の元、教室には担架が到着。すぐに教室のある4階から2階の保健室へ運びます。
私は、初めて担架で人を運びましたが、力が抜けた人はとても重くてバランスが取りにくい状況で、一緒に運ぶ全員の息を合わせないと、搬送者を落下させてしまう危険があると感じました。

その後、なんとか保健室に到着。ただここでも、自分の足りない部分を痛感する出来事が…。

学校関係者

どういった状態ですか?何が起きたんですか?

井上アナ

えっと、おなかを打ってしまったようで…。

 

医療機関に引き継ぐため負傷した男性の詳しい状況を聞かれましたが、私が話せるのは「腹部を打った」という情報のみ。「どの程度の高さから落ちたのか?」「腹部のどのあたりが痛いのか?」「どのくらいで意識を失ったのか?」など、治療に必要な情報を伝えることができませんでした。
そもそも、彼の名前は・・・?

ここで、約20分の「リアル防災訓練」が終了。体感的には倍以上の時間の経過を感じた訓練でした

井上アナ

無力でした。いざ目の前に生の人を目にすると、それぞれの対応が異なるので難しかった。すごく視野が狭くなっていたなって思いました。

今回の私の対応はどうだったのか?訓練終了後、監修した慶應義塾大学の大木聖子准教授と共に、訓練を振り返ります。

ADVICE(1)目的をしっかりと!安心させる「声かけ」とは…

まず指摘されたのが、パニックになった女性への「声かけ」について。

大木准教授

声かけは対象者の気持ちになって行うことが大事です。井上さんの声かけが間違っているわけではありませんが、学校の先生の声かけと比べると違いがわかりますよ

どのような違いがあるのか、皆さんも実際に聞いて「どちらが安心できるか?」判断してみてください。

違いは、私は「大丈夫?」と尋ねてしまいましたが、先生は「大丈夫!大丈夫!」と断言した言い方になっていますよね。
どちらが正解というわけではありませんが「大丈夫!」と断言したくれた方が、安心しませんか?

先生

災害時はいつも以上に不安な気持ちになる。すべてはぬぐえないけど少しでも安心させたいと思いながら声かけをしました。また、声をかけ続けることで、そばにいることも伝えられます。

大木准教授

“安心をさせるために声がけをする!”っていう目的がはっきりしています。私たちは医師ではありませんので。また、受け答えができない場合もある中で、言い聞かせるように“大丈夫!”っていうのが、よりよい声がけだと思います。

井上アナ

確かに、全く違いますね。反省しました。ことばをなりわいにしているのに…。

ADVICE(2)刻々と変化する状況~あなたの行動が命を救う!?

続いて指摘されたのが、腹部の痛みを訴えた男性からの“情報収集”についてです。

大木准教授

第一発見者、接触者が、どんな医療従事者より“命を助ける”情報を持っているということもある。その人の意識がある場合は情報収集を!なくてもその時の状況を伝えられるようにするのが大事です。

大木准教授が具体例として挙げてくれたのは「メモを取ること」や「スマートフォンの録音機能に情報(状況)を吹き込むこと」などです。
また、状況を整理する際は、「地震から〇〇分後に出会った」「出会ってから〇〇分後に意識を失った」など、“時間の経過”を確認することが大事だとも話していました。
取材者として現場に出る際は、必ず時間を確認する習慣がありましたが、今回のように気持ちが動転していると、目の前の人に手一杯で全く意識が向いていませんでした。もし彼の名前も聞いていたら、もっと安心につながる声かけに変わっていたはずです。

あなたならどうする!?担架での搬送

さらに、ここで、もう一つ大木准教授から“担架で搬送”に関する、アドバイスが…。

井上アナ

担架で運ぶ際に、協力者と息を合わせるのに苦労しました!

大木准教授

担架での搬送では、ある程度のルールがあるので、おさらいしましょう!

 

まず、大木准教授が教えてくれたのは、担架搬送する際の“向き”。
平坦な場所では“運ばれる人の足側を進行方向”にします。
ただ、階段では、下りの場合は同じように足側を進行方向にしますが、上りの場合はその逆、“頭側を進行方向”にするのが基本だといいます。「傾斜があるところでは、頭が高くなるようにする」と覚えておきましょう。

もう一つ、搬送について! 
今回、私は上下両脇の4人で担架での搬送を行いました。この時、「せーの!で上げます」「階段です!」など。タイミングを合わせるための声がけをするのが大切だと思いました。

じつは、この声がけを行う人は、一般的に決まっているそうです。
では、ここで記事を読む皆さんに問題です。下記のイラスト「A~D」でタイミング合わせるための声がけをするのは、どの人でしょうか?自分が搬送をしなくてはいけない状況だと思って、考えてください。

おっと!いまスクロールしようとしたアナタ!いま、まさにあなたも“リアル防災訓練”の参加者です!
どうぞ一考の上で、解答を見てくださいね!

 

 

 

正解は「B」の頭側の人です。大木准教授によると「頭側の人が一番、患者の状態を見ることが出来る」ことや、「運ぶ際のスピード調整を行いやすい」などの理由があるそうです。
あくまで“一般的には”ということなので、もし足並みがそろわない場合などは、思い出して積極的に声かけをできるように覚えておくといいかもしれません。実際、私はこの日、合わせて3回担架で搬送を経験しましたが、最後の組では全員で「イチ、二、イチ、二・・・」と声を出すことで歩調をそろえて、スムーズに搬送することができました。   

想定外は当たり前!災害は決まりきった備えではなく…

今回、私にとって多くの学びがあった「リアル防災訓練」。参加した中学校の生徒たちにも聞きました。

 

警報がなったら校庭に避難など、決まった行動の備えを行ってきましたが、
リアル防災訓練で、違う視点での備えを学べました。

 

適切な行動は、状況によって変化することを知ることができました。中学生でもできる対応をしっかり行いたいと思います。

 

今回は授業中を想定した訓練ですが、部活中や学校外など、色々な状況を想定して何ができるかを考えていきたいです。

 

応急処置なども学んだので、災害時でもいかせるようにしたいと思います。

 

大木准教授

予定調和で“うまく時間内に終わりました”っていう訓練ではなく、困った状態にどうすればいいかを考えるのが大切です。災害が起きる前提に立って訓練でも行動し、思考してほしいです。
こうした一つ一つの学びが、自分の命はもちろん、家族や大切な人を守ることにつながります。

ドキドキの“防災やってみた!”を終えて

「大丈夫!」といった声かけ、そして「ケガの状況」や「時間」などの情報収集。災害や緊急時において、私たちがよく知っている「担架で運ぶ」や「救急車を呼ぶ」といった“大きな”アクションの間には、こうした命をつなぐための数々の“小さな”アクションが重要であることを改めて痛感しました。声かけだけでは無力では?と思う方もいるかもしれませんが、声をかけ続けることで相手の安心につながるだけでなく、わずかな体調の変化も見逃さず、いち早く対応できるといいます。

もちろん、非常時にすべてを意識することは難しいかもしれません。ですが、専門的な知識がなくても、一つ一つの声かけを通してなら、誰しもが支え役、伝達役を担うことは可能ではないでしょうか。訓練に参加した、生徒や私をも安心させてくれた担任の先生の言葉が思い出されます…。

「被災して相当不安が強い中で、全部は拭い切れないけれども、少しでも安心してもらおうと、とにかく声をかけ続けました」

微力だけど、無力ではない。どんなときでも、声の力は“リアル(本物)”だ。
生活者として、そして伝え手としても、心からかみしめた防災体験でした。         

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