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  • 2024年3月7日

「災害救助犬」2024年能登半島地震から見えてきた課題

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災害時に行方不明者を探し出す救助犬。わずかな生存者のにおいを嗅ぎつけ迅速な救助につなげるのが役割です。全国にはおよそ250匹いて、ふだんは一般家庭で飼育され、育成を担う民間団体が定期的に審査や訓練を行っています。
能登半島地震でも出動しましたが、思うような成果が挙げられず課題を残した例もありました。災害救助犬を効果的に活用するにはどうすればよいのか。能登半島地震での経験を踏まえ、新たな取り組みを始めた東京の団体を取材しました。(アナウンサー/田中逸人)

生存者を発見できず

東京に本部を置き、救助犬の運用を行っているNPO団体の代表、津田光さんは能登半島地震発生の翌日(1月2日)救助犬とともに石川県に入りました。

到着した珠洲市では建物が広い範囲にわたって倒壊していました。建物の中には入れないため倒壊した屋根の部分から生存者を捜索することが多かったということです。

こうした現場では救助犬が生存者を発見すると消防などの救助隊がその部分に穴を開けて救出しますが、作業には時間がかかるため間違った場所を知らせると大きなロスになります。このため早く、正確に、生存者のいる場所を絞り込む能力が必要とされ、津田さんは現場でその重要性を痛感したといいます。
 

NPO法人災害救助犬ネットワーク 津田光 理事長
「辛い現場ですよね。(生存者が)必ずいると。そこにね。『主人なり子どもなりがいる』と
 家族から聞くけれど犬は反応しなかった」

今回、津田さんたちは生存者を発見することはできませんでした。

「ピンポイントで生存者の場所を絞り込む」 新たな訓練

津田さんが代表を務めるこの団体は、被災地での経験を踏まえ、群馬県の廃校になった小学校を使用して新たな救助犬の訓練用の施設を作りました。

室内には人のにおいが染みついた使い古しの家具などを配置して実際の倒壊した家屋に近い状況を作り出しています。また、屋根からの捜索訓練もできるように、床下にも人が隠れられるようにしました。これまでよりも捜索の難易度を高めています。

救助犬の捜索能力も向上させようとしています。先月(2月)、この施設で行われた訓練。
捜索を始めた救助犬が人の匂いをかぎつけ、盛んに吠え始めました。従来ではここで訓練は終了していましたが、捜索終了のサインは出ませんでした。
人が隠れているのは矢印の先にある床下で、まだ範囲を絞り込めていなかったからです。

犬はさらに捜索を続行し、最終的に、真下に人が隠れている場所まで絞り込みました。
こうした訓練を繰り返すことで、生存者のいる場所をピンポイントで伝える能力が身につくといいます。

津田さん

(生存者がいる範囲を)絞り込むというところでお手伝いしてレスキューを早めるというところにつなげたいと思います。

災害救助犬の効果的な運用を

発災から2日半が経過

もうひとつの課題が「救助犬の迅速な運用」です。今回、津田さんたちが救助犬で捜索を始めた時には発災から2日半が経過。生存率が大きく下がるとされる72時間が迫っていました。

救助犬は、災害時、各地域の消防や警察などと行動を共にします。しかし、中には救助犬の運用の方法に慣れていない部隊もあり、迅速な救助活動に結びつけられないところもありました。

こうした課題を解決しようと、この団体では各地の消防などに救助犬の訓練に参加してもらっています。この日も、福島県いわき市から消防隊員が参加しました。

訓練に参加した消防隊員
「実際の検索訓練を見たことがなかったので。災害救助犬がともに活動することで(捜索の)範囲が狭められるので、活動時間がぐっと短くなって要救助者の方を助けられる可能性も高まると思います」

NPO法人災害救助犬ネットワーク 津田光 理事長
「消防救助隊が救助犬をうまく使ってくれる、タイムリーに効率的に効果的にという事さえあれば1人でも多く救えると思っています」

取材を終えて

救助に当たる部隊が「救助犬の能力を理解し適切な投入判断をする」。この点が、数々の災害を経てなお、救助現場の課題であり続けていると津田さんは指摘していました。
訓練を重ねて救助犬が能力を高めたとしても現場への投入を判断するのは人間です。首都直下地震などの大規模な災害に備えてより救助犬の力を生かせる体制作りが重要だと感じました。

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