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災害が起きても事業継続 あなたの職場に「BCP」ありますか?

  • 2022年11月29日

地震や水害への「備え」と聞いて、あなたは何を思い浮かべますか。自宅に食料、水、懐中電灯などを備蓄しているという人も多いと思います。職場ではどうでしょうか。危険を回避し、身を守るだけでなく、上司や同僚と協力して一定程度、業務を続けることが求められる局面が出てくるかもしれません。
こうした組織としての備えを定めたものが、BCP(Business Continuity Plan)、日本語で「業務(事業)継続計画」と言われるものです。
あなたの職場に「BCP」ありますか?
(甲府放送局/記者 関口紘亮)

「BCP」で“リアルな想定” 病院の地震対応訓練

山梨県北部の医療拠点・韮崎市立病院では、BCPに沿って大地震への備えを確認する訓練が行われました。想定は静岡県を震源とする地震で、韮崎市内でも震度6弱の揺れを観測し大きな被害が出たというものです。

院内に災害対策本部が設置されて各部署の担当者が次々と集まり、職員が何人出勤しているか、けが人・ライフラインの被害状況などを報告。集まった情報を基に、院長が対応を指示します。

院長

災害救急医療業務として、救急車の受け入れは重篤な患者を除き制限する。トリアージの準備が完了しだい、被災者の受け入れを開始する予定です。

県内10か所の災害拠点病院のひとつである韮崎市立病院は、大規模災害では、医療の拠点として中心的な役割を果たすことが求められます。

2017年に策定した病院のBCPでは、緊急時に院内の体制をどのように立ち上げて情報共有を行うかや、大勢のけが人に対して「トリアージ」や治療をどのように進めるのかといったことを整理し、毎年の訓練の内容にも反映させました。

今回は、より深刻な事態に対応する訓練も行われました。地震の影響で、院内で火災が起きたという想定です。

患者や職員を避難させたうえで、上層階に取り残された人を消防がはしご車で救助する対応を確認していました。

韮崎市立病院 事務局職員 越石宏幸さん
「寝たきりの患者さんが一番上の階などにいるので、そこでの搬送方法を改めて考える機会になったと思っています。リアルな形でシナリオを作るときも、『ここの部分はできないところだから、現実的なシナリオでいこうね』とみんなに話をしながら進めていっています」

「BCP」策定 進まぬ民間企業

自治体や病院などでBCPの策定が進む一方、道半ばなのが民間企業です。

信用調査会社「帝国データバンク」の調べでは、山梨県内の民間企業の策定率は2022年5月時点で21.1%。策定していない企業からは「必要なスキル・ノウハウがない」といった声が多く寄せられています。

“BCPの策定 考えていなかった”企業が…

策定を進めるにはどうすればいいのか。
山梨県東部の都留市にある、従業員約30人の測量会社を取材しました。
この会社は行政と協定を結んでいて、災害時にはドローンを使った被害調査も担います。

会社では、2020年にBCPを策定し、万が一の事態でも最低限の業務を続けられるよう、優先すべき業務を整理し、従業員の安否確認の方法や、1人ひとりの出勤経路の危険箇所なども検討して、計画に盛り込みました。

こちらは新たに購入した、ドローンなどの充電器。食料や水といった物資も、必要な量を精査して備蓄を始めました。

ただ、会長の小俣政英さんは、もともとBCPを策定するつもりはありませんでした。

測量会社 小俣政英会長
「BCP自体は知っていたんだけど、うちの会社で策定することまで、あまり考えていなかったのが本音です。会社だけの力では難しい。初めてのことばも出てくるし、どのくらいの程度、用意すればいいとかが分からない」

小俣さんに策定を働きかけたのが、都留市商工会の指導課長、若林和彦さんです。若林さんは当時をこう振り返ります。

都留市商工会 若林和彦指導課長
「災害があっても社員が仕事に従事しなければならないと聞いていましたので、何かあってもすぐ事業を再開できる取り組みが必要ではなかろうかと思いまして、紹介したところです」

BCP策定のカギ “想像力を働かせて”

若林さんは東日本大震災をきっかけに、10年前の2012年、企業用のBCPの策定マニュアルなどを整備。個別の企業からの相談にも無料で応じてきました。

商工会の若林さんと小林会長

心がけているのが、企業の人たち自身に緊急事態への想像力を働かせてもらうことです。

都留市商工会 若林和彦指導課長
「個々の事業者にあわせて皆さんで話し合いをしてもらって、あくまでも商工会は支援に重きを置いて、あくまでも事業者の皆さんが作り上げていくということに重点を置きました」

会長の小俣さんは、BCPの策定を通じ、大事な備えが不足していたことを痛感させられたといいます。

測量会社 小俣政英会長
「一番思ったのが、水道が止まるだろうということ。そこで簡易トイレを作ってもらいました。井戸を掘ろうかという計画もしているんですよ。ふだんは絶対考えないことを考えさせてくれたのが、BCPのいいところなのかもしれません」

BCPの考え方は、自然災害だけではなくて新型コロナなど感染症の対策にもつながっています。小俣さんの会社では、リモートワークに必要なシステムをBCPの一環として導入し、感染が広がった時期には実際に活用したそうです。
都留市商工会の若林さんも「コロナ禍の今だからこそ、事業をいかに続けていくかを考えるBCPの役割に目を向けてほしい」と話していました。

  • 関口紘亮

    甲府放送局 記者

    関口紘亮

    2009年入局。報道局でニュース番組の制作などを担当。 ことし8月から甲府局で「何でも屋」の遊軍記者に。

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