2年前までは単身赴任だった私。自炊はしていたものの、ごはんを炊くときはいつも炊飯器任せ。決まった分量の米と水を入れて、スイッチひとつでおいしくごはんを食べていた。しかし、ライフラインが止まってしまったら、炊飯器を使うことはできない。
炊飯器を使わず、いちから「ごはんを炊く」。
挑戦してみて思ったのは、ちゃんと自分の頭で考えて、一度、意識的に作ってみることが何より大事だということ。他人事ではいつまで経ってもうろ覚え。
自分で実践してみることが、いざという時、自分を助ける唯一にして最大の近道だと思った。
(アナウンサー 近藤泰郎)
アナウンサーが防災を体験する「#防災やってみた」。
今回も私と浅野里香アナの2人は事前に何も知らされないまま、渋谷のとあるビルの3階に連れていかれました。部屋に入ってみるとそこはキッチンスタジオ。戸惑う間もなく、「震度6強の地震が起きました。電気・ガス・水道は一切使えません。ここにあるものを使って、近藤さん、ひとりでごはんを炊いてください」と突然、言い渡され、今回の「#防災やってみた」がスタートした。
「さあ、どうしたものか…」
ふと目に留まったのは、卓上タイプのガスコンロとガスボンベ。
「これがあればいけるか…」
実は近藤家。2年ほど前に炊飯器を処分し、ふだんからガスコンロでごはんを炊いているのだ。
「だったらチョロいもんじゃない?」とお思いかもしれないが、私はどうにも自信が持てない。
なぜなら、わが家のビルトインタイプのガスコンロには、“ごはんを炊くための専用ボタン”があり、“火加減”も“時間”もすべて勝手に調整してくれる、なんとも優れた代物だったのだ。
「うーん、どうしよう…」
後輩であり、部下でもある浅野アナの前で弱音は吐いていられない。
必要な米と水、ガスコンロとガスボンベはある。あとは鍋だ。手ごろな大きさのものはないか?とあれこれ探していたところ、引き出しの奥からなんと土鍋を発見!
「土鍋で作ったらおいしそうじゃない?」
見た目がおいしそうだし、それだけでテンション上がる!ということで、即採用。
災害時でも“気分が上がる食事”というのは大事!
炊くのは1人1合として2人分なので米は2合。
ふだんからお酒を飲んでいる私は、1合180mlという知識だけは持ち合わせていた。
だが、米2合に対しての正しい『水の分量』がわからない。
単身赴任時代、炊飯器の内釜に線が書いてあり、そこに合わせて入れるだけでよかったが、いま目の前にあるのは土鍋。書いてあるわけがない。
私も自宅で何度かガスコンロで炊いたことがあるが、毎回のように「水は何mlだっけ?」と妻に聞き、教えてもらった分量を何も考えずに入れていただけなので、覚えていないのだ…。
かすかな記憶を頼りに「1合に対して…200ml?」と自信なさげにしていると…。
「この人、ほんとに大丈夫?」とでも言いたげな浅野アナの疑念に満ちた目。
「だって覚えていないんだもん。しょうがないじゃん!」
なんて先輩であり、上司である私が言えるわけもない。
「水も限られているし、最近の米は精米技術も上がっているから災害時は研がなくてもOK」などと違った話で気をそらし、土鍋をコンロにセッティング。
そして、ここでも、また大きな壁が…『火加減』と『時間』だ。
いつも重宝して感謝しきりのわが家の優れたガスコンロを、この時ばかりは恨んだ。
私の記憶にあるのは「あ、ごはんがない」「20分もあればできるよ」「じゃあ、いまから急いで炊くか」という妻とのうろ覚えのやり取り。
頼れるのは不確かなうろ覚えの記憶のみ。
「確か20分…くらい?ただ蒸らしの時間も入れて20分…だったかな???」
「じゃあ、炊くのは15分で、蒸らしは5分…くらいかな???」
これまた自信なさげにしていると、再び疑念に満ちた目でみつめてくる浅野アナ。
「もう完全に信用されていない(涙)」
まずは『火加減』。
これが、成否を大きく左右することは誰にとっても明白だ。
「強火か?」「弱火か?」「浅野里香?」なんて言っている場合ではない。
最初は「ある程度強め。ぐつぐつさせる必要がある」気がする。
そこに関しては、珍しく浅野アナも同意。
中火で待つこと7分。
土鍋のふたの穴から出てくる湯気と水分が徐々に力強さを増してくる。これは吹きこぼれてしまうかも…。しかし、ここでふたを開けたらダメになってしまうのではないか。数十年前に行った林間学校での飯ごう炊さんの記憶が…。
吹き出し口を懸命に手であおぎ、吹きこぼれをおさえようとしていると。
「火を弱めればいいんじゃないですか?」と冷静な浅野アナ。
なるほど、まったくもってその通り。さすが「強火か?」「弱火か?」「浅野里香?」である。
ということで、弱火にして8分。
計15分が経ち、火を止めて、残り5分を蒸らしの時間に充てた。
「果たしてこれで本当に炊けているのか?」
「カタくて芯が残っていたらどうしよう?」
「やわらかくて、べちゃべちゃだったらどうしよう?」
いずれにしても、失敗したら浅野アナからのカタい信頼も、やわらかなまなざしも、もう2度と得られないだろう…。などと考えながら、いよいよ土鍋のふたを開ける瞬間が。
「せーの!!!」「おーーー!!!」
なんだ、この輝きは!?
米が輝いている!ふっくらしている!
こ、これはもしや…うまく炊けているのでは!?
さっそく浅野アナに食べてもらうと…
目を見開き、うなずきながらひと言…「私の一番好きなかたさです!」
やったーーーーー!
後輩であり、部下である浅野アナの信頼をなんとか失わずに済んだ!
そして、改めてふだんからガスで炊いている妻と優秀なガスコンロに感謝と尊敬の念を送った。
みなさん、さっそくきょう「ごはん炊いてみませんか?」
近藤アナは土鍋をチョイスしましたが、防災士で料理研究家の今泉マユ子さんによりますと、金属の鍋、フライパンなどでも大丈夫とのこと。
水の量も、お米の1センチくらい上まで入れるのを覚えておくといいでしょう!
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