シュトボー
  1. NHK
  2. 首都圏ナビ
  3. シュトボー
  4. 東京 豊島区東池袋4・5丁目の防災 命を守る「防災公園」

東京 豊島区東池袋4・5丁目の防災 命を守る「防災公園」

  • 2022年7月7日

地域の詳しい防災を伝える「#3丁目の防災」。今回は東京 豊島区東池袋4・5丁目です。木造住宅が密集しているこの地域は、火災が発生した場合、延焼の危険性が指摘されています。こうしたなか、命を守るカギとして完成したのが「防災公園」です。整備を実現したのは住民の長年の願いと、行政の地道な取り組みでした。
(首都圏局/記者 桑原阿希)

“サンシャイン”すぐ近くの住宅地

JR池袋駅から1キロほど東にある東京 豊島区東池袋4丁目と5丁目。池袋サンシャインシティに近いこの地域には約5700世帯が暮らしています。

地域のリスク: 木造住宅が密集 狭い道による火災延焼のおそれ

戦後、交通の利便性の高さを背景に多くの人が移り住んだというこの地域には、古くからの木造住宅が密集して建ち並び、狭い道が多くあり、ひとたび火災が起きれば延焼するおそれが指摘されています。

“逃げ込める場所がほしい”長年の地域の願い

この地域で生まれ育ち、東池袋5丁目東町会の会長を務めている國府田房義さん(69)は、20年ほど前に、近所で火災を目の当たりにし、延焼の恐怖を身をもって感じたといいます。

東池袋5丁目東町会 会長 國府田房義さん
「小屋から出火して延焼はあっという間でした。まわり近所、全部燃えるのではないかと思うくらい火の勢いはすごかったです」

地域の道幅は狭いところが多いため、消防車がすぐに駆けつけられないことも想定し、町会では区が設置した小型ポンプなどを使って初期消火の訓練を定期的に行っています。ただ、長年の課題となっていたのは、万が一のときに逃げ込める、広い場所の確保だったといいます。

國府田房義さん
「消防のかたにも『背が高い火が出たら逃げて下さい』と言われていました。火事が起きた時に、避難できる広い場所がないと危ないと思っていました」

地域の防災対策: 長年の課題解決へ「防災公園」整備

住民から逃げ込める場所を求める声が幾度となく上がるなか、豊島区もその思いを受け止め、検討を進めてきました。9年前、町内にあった造幣局の移転が決定すると、跡地の一画に防災公園の整備を計画しました。

グランドオープンの時

そして、2020年の12月に完成したのです。

豊島区 公園緑地課 片山裕貴課長
「“オール豊島区”で取り組んできた大きな成果だと思う。『首都直下地震』がいつ起こるのか分からないなかで、地域に住んでいる方々にとっては大きな安心材料になると思う」

地域の防災対策 :“フェーズフリー”が減災のカギ

完成した防災公園の広さは1.7ヘクタールで、災害時の一時避難場所として約2500人を収容することができます。

「イケ・サンパーク」の愛称で親しまれ、週末などには多くの家族連れでにぎわいます。この防災公園を整備するなかで、豊島区が重視したのは、平時と災害時の境目をなくす「フェーズフリー」という考え方でした。

30代女性
「家が近いので、ほぼ毎日寄って子どもを遊ばせています」

30代男性
「ふだん遊んで行き慣れているところが避難場所になっているのは子どももわかりやすいと思います。両方の機能を兼ね備えているのは親としては安心です」

防災公園にはどんな機能が?

機能(1)非常用トイレ

公園にはさまざまな機能が備わっています。こちらは災害時のほか、大型イベントなどの際にも使うトイレです。断水した場合、自動で貯水槽の水が流れるようになっています。災害時、ふだんと変わらないトイレを使えると、不安な気持ちも少し和らぐのではないかと感じました。

機能(2)防火樹林帯

一見、ふつうの並木道ですが、「防火樹林帯」と呼ばれます。燃えにくいとされるシラカシの木を、住宅地と接する公園の一部の沿道に植えていて、延焼を防ぐ効果が期待されています。

機能(3)深井戸

万が一、公園近くの住宅などから出火した場合の備えもあります。火を消すための水を深さ200メートルの地下から汲み上げる井戸が確保されています。

機能(4)ヘリポート

ふだんの週末などには子どもたちが駆け回る広いスペースは、けが人などを搬送するヘリポートとして使うことを想定しています。救援物資の拠点などの役割も担うことになっています。

“ふだんから親しむ”「防災公園」が命を守る

孫とよく遊びに来るという町会長の國府田さんは、この公園が地域住民の安心につながっていると感じています。

國府田房義さん
「これだけ大きな公園があれば安心して退避できると思います。ふだん行き慣れているから子どもたち、孫たちも安心して集まれる。間違いなく助かる命は増えると思います」

これからも公園をいかした訓練などを行って防災意識を高めていきたいと話す國府田さん。防災公園を中心とした東池袋4丁目と5丁目の取り組みは続きます。

取材後記

5月の週末、公園を初めて訪れたときに、ピクニックをする親子や木陰で読書する人の姿を見て、住民の憩いの場として定着していることがうかがえました。平時と災害時の境目をなくそうというこのような取り組みの今後の可能性を感じました。

  • 桑原阿希

    首都圏局 記者

    桑原阿希

    富山局を経て、2020年から首都圏局。 福祉や子どもの問題などを取材。

ページトップに戻る