6月に入って全国で行楽中の水の事故が相次いでいます。本格的な夏に向け、ことしは久しぶりに海や川のレジャーを楽しもうという人もいるかもしれません。水の事故から、どうやって命を守ればいいのか。水難事故に詳しい専門家に聞きました。
東京・渋谷区のアウトドア用品店では、去年の3倍以上の数のライフジャケットを店頭に並べています。新型コロナの行動制限の緩和もあり、去年、おととしと比べて、売り上げが好調だということです。
店では、大人用から子ども用のものまで、さまざまなサイズが販売されていて、自分の体にあったライフジャケットを選ぶことが大切だとしています。最近は、ガスのボンベが付いたライフジャケットもあり、センサーが水に反応すると自動的に膨らむ仕組みで、持ち運びに便利で動きやすいことからニーズが高いということです。
サンスイ渋谷店 加藤賢司店長
「水遊びをする際は、危険と隣り合わせだということを意識しながら楽しんでほしい。1件でも水難事故を減らせるよう、これからも店では、ライフジャケットの着用を呼びかけていく」
水難学会の理事を務める東京海洋大学の田村祐司准教授にライフジャケット着用の注意点を教えてもらいました。
ライフジャケットを着るときは、まずはしっかりチャックをして、ベルトをしっかり締めて密着しているような感覚にすることが大事です。ベルトが緩いとすぽっとライフジャケットが体から抜けることがあるからです。
そのうえで、岸から離れた場所に落ちたり溺れたりした場合には、足を抱えて体を縮める「ヘルプ姿勢」で救助を待つことが大切だとしています。
「ヘルプ姿勢」
顔が水面よりも上で保てるほか、体温が下がるのを防ぐ効果もあるということです。
一方、ライフジャケットを身につけていない場合は姿勢が異なります。騒いだり、無理に泳いだりせず、あおむけのまま力を抜いて浮く、「背浮き」の状態で救助を待つことが好ましいとしています。あごをあげておへそを突き出すような、背筋を伸ばす姿勢でいくと体が浮いてきます。呼吸をゆっくりしながら浮いて待つことが大事です。
「背浮き」
服や靴を身に着けた状態で水に落ちた場合は、浮力を得ることができるため、脱がずに浮いて待つことが重要だということです。
一方、周りにいる人は、消防に救助を要請するとともに、サッカーボールやクーラーボックスなど、身の回りにある水に浮くものを、救助を待つ人に向けて投げ渡すことが有効だとしています。衣服やタオルを詰めたゴミ袋でもいいということです。
東京海洋大学 田村祐司 准教授
「これまで新型コロナウイルスで外出を控えていた人も、自粛ムードが緩和され、暑くなると水遊びに行くことが予想される。いざという時に対応できるよう、あらかじめ身の回りで、水に浮くものは何かを考えておいてほしい」
いざというときに体を浮かせる要素になるもの
・ペットボトル
・クーラーボックス
・バケツ
・ボール
・衣服などを入れてしっかりと口を閉めた袋など
政府や国も、水の事故を防ぐための注意点をホームページなどで紹介しています。水の事故を防ぐためのポイントです。
・出かける前に天気や目的地の情報をチェックする
行く前に、目的地の川や海の情報や天気をチェックすることが大切です。悪天候が予想されている時は、無理をせず、中止または延期しましょう。
・危険を示す掲示板、水流が速い・深みがあるところは避ける
川の地形は複雑で、同じ川でも場所によって流れが速くなっていたり、急に深くなったりする場所があります。「危険を示す掲示板」がある場所では遊ばないようにしてください。海でも同様です。危険な場所には、「危険」「遊泳禁止」などと案内されていることが多いので、海岸や海水浴場の掲示や標識などを確認してください。
・子どもだけでは遊ばせない
水深が浅い場所でも、転倒して溺れたり、流されたりすることがあります。特に子どもだけでの水遊びは大変危険なので注意してください。