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地震でエレベーターに閉じ込められた時の対処法 大橋拓アナが体験

  • 2022年5月30日

もし地震で突然、エレベーターに閉じ込められたら…。
首都直下地震では、停止するエレベーターが、都内で最大約2万2000台と想定されています。今回、実際に体験してみると、エレベーターで孤立する心細さと、「備え」の重要性が身にしみました。大切な3つの対処法とやってはいけないことも、お伝えします。 
(アナウンサー 大橋拓)

突然始まった「エレベーター閉じ込め」

アナウンサーが防災を体験する「#防災やってみた」。今回も、エレベーターに閉じ込められることを事前に知らされない状態で、体験が始まりました。
ビルの4階で打ち合わせがあると言われ、1人でエレベーターに乗ったところ、2階と3階のあいだぐらいで突然停止してしまいます。

慌ててボタンを押しますが、何の反応もありません。扉の向こうは真っ暗。私は、エレベーターに閉じ込められたことを悟りました。
「そういうことか…」

閉じ込められたとき第一にするべきことは?

私の様子を別室で見ていたのが、エレベーターメンテナンス会社の代表の岩本由起子さんです。岩本さんには、閉じ込められたときに必要な行動をモニターでチェックしてもらいました。

なお、今回私は体験が始まる前にスマートフォンをスタッフに預けていたので、電話で助けを求めることはできません。実際の災害では、携帯電話が回線の混雑や圏外で通じなくなる可能性もあるからです。

「まず、何をすればいいんだろう…」

少し考えたあと、目に入ったのが、階数ボタンの上にある「非常ボタン」です。すぐに押してみました。

大切なポイント(1)「非常ボタンで外に連絡」

岩本さんによると、この「非常ボタンで外に連絡」が大切なポイント(1)だそうです。ボタンを押してしばらくすると、オペレーターの「どうしました?」という声が聞こえてきました。

非常ボタンで外と話す大橋アナ

まずこちらの状況を説明し、「助けに来てくれるまでにはどれぐらいかかりますか?」と聞くと、「60分ほど待ってください」とのこと。このとき、私は思わず「60分って、1時間ということですよね?」と聞き返してしまいました。あとから思い返すと、こんな当たり前のことを聞くとは…。冷静になっていたつもりで、かなり気がせいていたようです…。

この1時間、そのとき私には長く感じたのですが、あとから岩本さんに聞くと、災害時に1時間で到着すればいいほうなのだそう。東日本大震災のときには、9時間、閉じ込められた人もいたということです。首都直下地震では、エレベーター会社も被災するため、さらに長くなることが考えられます。一方、非常ボタンを押して、外の人と連絡が取れたことで、ほっとしたことも確か。エレベーターに閉じ込められたら、まず非常ボタンを押すことを覚えておくことが大切です。

今回、岩本さんに、エレベーターに閉じ込められたときにやってはいけないことも教えてもらいました。
そのひとつが、その場から脱出しようと、扉をこじ開けようとしたり、エレベーターの天井から出ようとしたりすること。映画などでよく見ますよね。ただ、事故の危険性が高いということです。
こうした行動にもつながりますが、避けたいのが、「体力を消耗すること」だそうです。むやみに脱出しようとするほか、意外にも、大声を出し続けるのも、やってはいけない行動だということでした。
長時間に及ぶかもしれない、エレベーターへの閉じ込め。体力を温存しながら、外と連絡をとるよう努めることが大事なようです。
ちなみに、私も閉じ込められたあと、ふと天井を見上げましたが、とても出られるとは思わなかったので、真っ先に非常ボタンを押しました。

大切なポイント(2)「防災グッズの活用」

通話を終えてエレベーターの中を見回すと、目に入ってきたのは、エレベーターの壁にあった防災グッズです。

岩本さんの指摘する大切なポイント(2)が、この「防災グッズの活用」です。最近は防災グッズが備え付けられているエレベーターもありますが、中に何が入っているか、知らない人もいるのではないでしょうか。私も今回体験するまで知りませんでした。

防災グッズの中身

開けてみると、非常用の水、食料に加え、簡易トイレや椅子などが入っていました。私が何より安心したのが簡易トイレ。ふだん、エレベーターに閉じ込められることを想像したときに、真っ先に心配になるのがトイレだったのです。

エレベーターが停電したら…

このとき、簡易式トイレの使いかたを見ていると、今度は、エレベーターの電気が急に暗くなり、非常灯だけになってしまいました。

驚いて、再び非常ボタンを押しますが、今度はオペレーターにつながりません。停電したという想定のようです。
突然の暗闇。さらに1度つながったオペレーターと通話できなくなると、急に心配になります。取り残された気持ちになり、先の見通しもわからなくなりました。首都直下地震の場合だと、最初の揺れのあとに、さらに地震が続くことも考えられるので、より不安が増すだろうと感じました。

そうした中で役に立ったのが、防災グッズの中にあった、ラジオ一体型の非常用ライトです。エレベーターの中は非常灯がついているとはいえ、かなり薄暗く、ライトがあれば少しでも安心できます。

ラジオ一体型ライトをつけてみました

また、エレベーターの停止直後は、オペレーターとの通話や、防災グッズの確認に追われますが、一旦そうしたことが落ち着くと、時間がたつのが長く感じてきました。そこでラジオをつけることで、「誰かとつながっている」気持ちもわき、気を紛らわすことができたのです。

トイレがあることの安心感から、今回は水を飲むこともできました。防災グッズ、本当に大事です…。

岩本さんによると、防災グッズが備え付けられているエレベーターは増えているそうです。今回はジッパー式でしたが、代表的なのは、エレベーターの片隅に設けられている三角形のコーナー。この中に入っています。

岩本さんは、閉じ込められてしまった場合、ためらわないで開けてほしいと話していました。
中には、少しでも快適に過ごせるよう工夫されたグッズが入っているためです。
そのひとつが、簡易トイレ。その設置の仕方を教えてもらいました。

(1)ポリ袋を折り畳み椅子に取り付ける
(2)ポリ袋に凝固剤を入れる(種類によっては使用後に入れるものも)
(3)いすをエレベーターの隅に置く
(4)ブランケットをファスナーテープで壁にとめていすを隠す
(5)いすに腰かけて前を隠す

このように、簡易トイレには他の人と一緒でも目隠しできるよう、ブランケットも入っていました。エレベーター用の工夫だということです。
もちろん防災グッズがないエレベーターも多いのですが、今回の体験を通し、ひとつでも導入するオフィスビルやマンションが増えてほしいと思いました。

大切なポイント(3)「大声よりもホイッスル」

体験に戻りましょう。しばらく時間がたち、今度は外から人の声が聞こえました。
「大橋さーん」

ドア越しに意思疎通しようとする大橋アナ

しかし、声がかなり遠く感じます。このとき、後輩のアナウンサーが私を探してくれていたのですが、後輩はエレベーターがどこで停止しているのかわからないため、1階から2階、3階と移動して私の名前を叫んでくれていたそうです。こうしたことは実際にも十分あるだろうなと思いました。

だんだん声が近づいて来ている気はしたのですが、なかなかクリアには聞こえず、こちらから「聞こえますかー?」と応答しても、後輩には届いていないようでした。
オペレーターに「大声で体力を消耗しないように」と言われたことも思い出し、防災グッズの中の「ホイッスル」を使うことにしました。

ここで大切なポイント(3)「大声よりもホイッスル」です。
岩本さんによると、「『助けてください』と声で言うのは聞こえづらいので、ホイッスルを吹いたり、壁をたたいたりすることが必要」ということです。
エレベーターのドアや壁は想像以上に分厚く、私が声を出しても、外にはほとんど聞こえていませんでした。
そこでホイッスルを吹くと、今度は「大橋さん、聞こえました!」との声。また、ドアの横の金属製の部分を手やボールペンで叩いても、声よりもはるかに聞こえやすく、効果があるとのことです。

ようやく脱出…そのときの気持ちは

そして、閉じ込められてから40分後。
突然、エレベーターの扉の上半分から光が見えました。エレベーターの外扉が開いたのです。

「大丈夫ですか?けがはありませんか?」
だいぶ心細くなっていたこともあり、レスキュー隊の方に声をかけられると、本当にほっとしました。

私の行動は果たして…?

エレベーターの外に出たあとに、岩本さんから私の行動を評価してもらいました。
全体的にポイントはおさえることができていたようですが、1つ指摘されたのは、「停止したときには、すぐにすべての階のボタンを押すこと」。これによって最寄りの階に止まり、脱出できることがあるとのことです。
首都直下地震の災害シナリオでは、救助まで半日以上かかる場合もあるほか、混雑した状況でエレベーターが停止するとパニックが発生する可能性もあると指摘されています。
今回、岩本さんが教えてくれた3つのポイントを少しでも知っていれば、いざ自分が閉じ込められたときにも気持ちが違うと感じました。

ふだん持ち歩ける防災グッズを聞いてみた

今回、特に大切だと感じたものが、防災グッズ。ただ、現実にはまだまだ防災グッズがないエレベーターも多いと思います。そこで、外出中に、エレベーターを含め、急に何かの空間に閉じ込められたことを想定し、持ち歩いておきたいものを、防災アドバイザーの高荷智也さんに聞きました。

いつも非常持ち出し袋のような大きな防災グッズを持ち歩くのは、現実的ではありません。そこで高荷さんが勧めるのが、ボトルやポーチに入れられるグッズです。

防災アドバイザー 高荷智也さん

高荷さんが見せてくれたものは400gほどで、500mlのペットボトルよりも少し軽いぐらいと考えれば、持ち歩くことができると感じました。

高荷さんおすすめの持ち歩いておきたいもの

持ち歩いておきたいものリスト
□ 手袋
□ ライト
□ ホイッスル
□ ばんそうこう
□ 携帯トイレ
□ ポンチョ型の雨具(トイレの時の目隠しにも)
□ キャラメル
□ ウエットティッシュ
□連絡先メモ など

どれも100円ショップなどで買うことができるものばかり。こうしたものを、500mlのプロテインシェイカーのようなボトルやポーチにいれておくと、かさばらないということでした。

高荷さんの指摘したポイントは「おでかけで必要なものをまずはそろえてみる。そろえたあとに必要であれば交換する」ということでした。

 

取材後記

今回感じたことは、エレベーターの閉じ込めは本当にいつ遭遇するかわからないということ。そしてそうした状況に陥った時の心細さです。
今回は1時間足らずの短い体験でしたが、急に止まった直後と、外の人と連絡が取れたとき、さらに停電したときと、気持ちの上下が大きかったです。

一方で気がついたのは「自分で備える余地は十分にある」ということ。ふだん使うエレベーターに防災グッズがあるかの確認。そして自分が心配なものを持ち歩くことができれば、不安も和らぎます。私の場合は、携帯トイレを自分のリュックに常に入れようと強く思いました。

今年度も、アナウンサーが災害時に起こりうるさまざまな事態を体験し、それを放送に生かしていきます。「#防災やってみた」へのご意見「こんなことを取材してほしい」といったご要望も、ぜひお寄せください。

ご意見・ご要望は こちら から

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