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30センチの高さの津波に耐えられる?林田理沙アナが体験

  • 2022年3月16日

「低い津波でも危険」
アナウンサーとして、もちろん知っていました。
しかし、今回初めて、そのことを実感しました。
私が体験したのは、高さわずか30センチの津波。思いがけない恐怖を感じたのです。
(アナウンサー 林田理沙・鈴木貴彦)

地下の部屋にある巨大な水槽

アナウンサーが防災に体当たりで挑むコーナー「#防災やってみた」。
今回、私・林田が訪ねたのは、東京・文京区の中央大学後楽園キャンパスです。
「津波を体験する」と聞かされてきた私。建物の地下2階に降りると、そこには巨大な水槽のようなものがありました。

ここは、津波を再現する実験施設だそうです。
どんな津波が来るのか…。その大きさに、否応なしに緊張が高まります。

安全に万全を期して「水槽」の中へ

実験を監修してくれたのは中央大学の有川太郎教授です。
胴長をはき、流されても大丈夫なように、ハーネスと安全ベルトをつけ、ロープと固定します。
身の安全には万全を期した上で、有川教授から実験の注意点を伺いました。
この施設では色々な方が同じような実験をしているとも聞きましたが、それでも不安でいっぱいです…。

そして、いざ水槽の中へ。
ロープにつかまって、その時を待ちます。

30センチの津波の威力とは?

「3、2、1」

有川教授のカウントダウンとともに、目の前にはすごい勢いで水が迫ってきました。
その様子は、下の動画でご覧ください。津波を想起する映像が流れます。

水の流れは、私の足元、わずか30センチの高さでした。しかし、あっけなく流されてしまったのです。

“30センチの津波”体験時に感じたこと

改めて、「津波」に流されたときのことを振り返ります。

水が迫ってきたとき、私は一瞬驚き、ひるみましたが、流されるまいと必死に踏ん張りました。

「水のかたまり」にぐいぐい押されるような感覚。ものの数秒で、必死に踏ん張る足と地面の間に下敷きを滑らせされたかのように、水が入り込んできました。

「まずい」と思い、さらに足に力を入れようとした瞬間。踏ん張った力が地面に伝わることなく、つるっと滑った感覚で、気づいたら倒れていました。

再び体勢を立て直したいとロープにしがみつき力を入れたものの、全く体が言うことをききません。
ただただ水の流れに身を任せることしかできませんでした。もし安全帯がなかったらと思うと、ぞっとします。

水のかたまりの前には抵抗すらできない…。無力感と水の力の恐ろしさを痛感しました。

1メートルだと思っていた私

実は今回、私は事前に詳しい津波の高さは聞いていませんでした。

体験のあと、今回の津波の高さを問われた私は「1メートルくらい」と答えました。それだけ、迫ってくる水の勢いはすごく、恐怖を感じていたのです。
正解の「30センチから40センチ」を聞いたとき、私は唖然としてしまいました…。

「体力に自信あり」鈴木貴彦アナも体験

私のあと、同じ体験を鈴木貴彦アナウンサーも行いました。

左:林田アナ(身長154センチ) 右:鈴木アナ(身長170センチ)

「体力に自信がある」という鈴木アナは体格もよく、身長は私より16センチ高くなっています。私とまったく同じ条件で行った実験です。

最後まで持ちこたえましたが、数十センチ、足が流されていました。

鈴木アナ

気がついたら足が浮いているような状態になって、足がずるずると流されてしまいました。10秒くらいだったのでギリギリ踏ん張れたと思うのですが、ずっとあの水流が来たら、転んで、そのまま流れていたのではないかと思いました。30センチでこんなに自分の体が動かされるのは、生まれて初めて味わった感覚でした。

鈴木アナ2回目の体験 50センチの津波とは?

続いて、鈴木アナウンサーは50センチの津波も体験することに。その様子です。

 

数字の上では30センチから50センチ、たった数十センチの差ですが、ほんの数十センチかさがあがっただけで、あっという間にそれが命取りの津波になるとよくわかりました。正直怖かったです。終わった後、足が震えました。もし転んだら、その時点でなすすべはないと思いました。何十センチという深さでも、もうそれを受けた時点で、そのまま流されるかもしれないって思わなければいけない。

数十センチは「津波注意報」級

今回、私たちが数十センチの津波を体験した理由。それは、「津波注意報」級の津波だからです。次の表を見てください。

津波注意報が発表されるのは、20センチメートルから1メートルの高さの津波が予測されるときです。そして私たちアナウンサーは津波注意報が発表されたとき、「海岸や川の河口付近に近づかないでください」と呼びかけます。

今回、私はその意味を痛感しました。2011年の東日本大震災のときに発表された大津波警報のように、町全体に水が流れ込むようなことはなくても、海岸で巻き込まれてしまったら、命を落とすおそれもあると感じたのです。

上記参考:「NHK災害列島サイト」

有川教授に聞く 「低い津波」の注意点

最後に、有川教授に注意すべきことを伺いました。

林田アナ

津波注意報が出た時、私たちはどのように行動すればよいでしょうか。

有川教授

津波注意報が発表されても、海岸の堤防の背後まで入ってくることは考えにくいのですが、とにかく海のそばからは離れることが一番大事です。海岸沿いにいる人はもちろん、場合によっては河川の際にいる人も危ないときがあります。川を遡上してくる津波も比較的多く見られますので、川のそばからも逃げるということが大事です。

 

海のそばに住んでいない人も多いと思いますが、そうした人が気を付けるべきことはどのようなことでしょうか。

 

普段水に接しない方は、例えば夏場のレジャーなどで海岸に行くときは水の怖さを理解し、津波警報や注意報が出た場合には逃げることが大事だと思います。
泳ぎに自信がある方も、単純に泳げるから大丈夫ではありません。津波の場合、がれきなどが一緒に流れてきますので、場合によっては、命を落とすこともありえます。流されるということ自体が危険だと考えてもらえればと思います。

津波の研究をして20年近くになるという、有川教授。国内外の被災地を調査してきましたが、逃げ遅れた人に話を聞くと、口を揃えて「自分は大丈夫だと思った」と話すといいます。

だからこそ、「ひとたび津波に捕まったら流される可能性があること、そして一旦流されるとどうなるかわからないこと」を知ってほしいと強調していました。

今回の体験を通して

「ひざ下くらいでも、立っていられないほどの力があります」

これまで津波注意報が発表されたとき、このように呼びかけてきました。そのことを今回、実感を持って体験しました。

「来る」とわかっても耐えられない、津波の恐ろしさ。「たかが数十センチ」と思ってしまいがちですが、ひとたび「水に捕まる」と、なすすべもないのです。

私自身、これから津波警報や注意報で行動を呼びかけるときは、「水から離れて、逃げて」ということをきちんと言葉に乗せてお伝えしなければいけないと、強く思いました。

そしてこの記事を読んでくださった皆さんにも是非、心にとめておいてほしいと思います。

  • 林田理沙

    アナウンサー

    林田理沙

  • 鈴木貴彦

    アナウンサー

    鈴木貴彦

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