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災害時に小さな子どもをどう守る?保育園に防災ハンドブックを

  • 2022年3月15日

子どもを保育園に預けている間に、大地震があったら。不安に思ったことはありませんか。幼い子どもたちの命を限られた園の職員で守るために。ことし、かつて消防職員だった保育園長が防災ハンドブック作りを始めました。
(横浜放送局/記者 齋藤怜)

保育園の防災、具体的なポイントは

神奈川県内の保育園で作成中の「保育防災ハンドブック」です。地震が起きた時、幼い子どもがどうやって身を守るのかや、応急手当のしかたなどがコンパクトにまとめられています。
小さな子の心肺蘇生をする際は、あおむけにして指で胸を圧迫することなどがイラスト付きで紹介されています。

作成しているのは、保育園の園長、藤實智子さん(44)です。おととし、横浜市内に保育園を作りました。

藤實さんは高校卒業後、高校を卒業後、消防署の職員として働いていました。保育園のほか、小中学校や事業所などを回って、避難訓練や防火対策について指導に当たっていました。

結婚後、大好きな子どもに携わる仕事をしたいと、保育士に転職し藤實さん。都内の保育園に勤務していた時に、東日本大震災が発生しました。

経験したことのない揺れに、保育園の建物は安全なのかや、電話もつながらない中で子どもたちを無事に保護者に引き渡せるのか、大きな不安の中で対応にあたりました。

保育園の園長 藤實智子さん
「自分の判断で子どもたちを守らなければならず、不安もたくさんありましたし、災害時の対応についてもっと事前に確認しておけばよかったと反省しています。私がかつて消防官として指導していたことでは、きっと子どもたちの安全を守ることはできないなというのも、保育士になって初めて気付きました」

おととし4月、藤實さんは横浜市鶴見区に自らの保育園を開所しました。3階建てのビルの1階に入る小規模の保育園で、0歳児から3歳児までの園児を対象に保育しています。
自分が責任者となり、幼い子どもたちを預かる中で、災害にどう備えて、万一の際にはどう対応すればいいのか、改めて考えることになりました。

「現場で使える」防災ハンドブックを作りたい

幼い子どもたちを守るため、どうやって備え、万一の際にはどうすればいいのか。
ほかの園の保育士や防災士の人たちと意見を交わしたり、インターネットでアンケートを行いました。

園児を連れての散歩中に災害があったらどうするかや、何に注意して訓練すればいいのか分からないといった悩みを多くの人が抱えていることがわかりました。
こうした悩みに応えられるハンドブックを作りたいと考えたのです。

藤實さんはハンドブックの中身については、現場目線で保育士の疑問や不安の声に応えるものにしたいと考えています。
この日は課題を洗い出すため、実際に防災訓練を行いました。

STEP1)地震発生
保育士たちは、揺れがおさまるまで園児たちを地面にかがませて、両手で頭を守る「ダンゴムシのポーズ」を取るように呼びかけます。

STEP2)揺れが収まったら
園児たちを公園の中央の広い場所に集めます。そのうえで、驚いた子どもが外に飛び出たり、被害を見てパニックになるのを防ぐため、園児たちの頭上にシートをかぶせて落ち着くのを待ちました。

STEP3)安全確認と避難
園児たちの人数やけがをしていないかを確認し、保育園に連絡します。
公園から保育園に戻る際には、落下しそうな看板やブロック塀の位置など、地震が起きた場合に危険となる箇所についてチェックしました。

訓練での教訓を盛り込んで

その日のうちに反省会を行うと、注意しなければいけないポイントが、次々に見つかりました。

反省点のうちの一つは、揺れがおさまったあとに園児たちを集めた場所でした。街灯のすぐ真横で滑り台との距離も近く、余震でぐらぐらと倒れてきてしまう恐れがあるという意見が出ました。子どもたちを集める場所についても事前の訓練で確認しておくことが必要だと気づきました。

また、避難をしている際の様子についても意見が出ました。保育士が歩いて避難する園児たちを車などから守ろうとして、その子に体を向けていると、背中におぶった園児が車道側に向いてしまいました。道路に対して、背中を向けない意識が必要であることを、保育士同士で共有しました。

反省点に加えて、会ではよかった点についても意見が上がりました。それは、ある保育士が「園児が怖がらないようにしましょう」と呼びかけたことでした。この呼びかけに、ほかの先生たちも園児を不安にさせないようにと、「大丈夫だからね」と声をかけながら避難することができました。保育士のちょっとした気遣いで、みんなが落ち着きを取り戻しました。

アレルギーや発達障害など、注意必要なポイントも

一方、藤實さんは、保育園だからこそ災害時に特に気をつけなければいけないポイントもあるといいます。それは、アレルギーや発達障害など、特別なケアが必要な子どもたちです。
また、脱臼をしやすかったり、熱性けいれんを起こしたことがあったりする子どもなどについても、ハンドブックにまとめておき、いざという時にも対応できるようにしておくことが必要だといいます。

ハンドブックにはこうした園児の情報を書き込んでおくスペースも設けることにしています。

藤實さんは、このハンドブックを全国の希望する園に配付したいと50万円を目標としたクラウドファンディングを行い、去年12月に達成しました。
ことし5月をめどにハンドブックを完成させて、5000部を配付するとともに、ケアが必要な子どもへの対応や応急手当のしかたなどを伝えるオンラインの講座も開くことにしています。

保育園の園長 藤實智子さん
「保育士さん1人ともかけず、みなさんが子どもたちの命を守りたい、その思いっていうのは絶対あると思ってるんですよ。そういう保育士たちのためにも、保育士を守るためにもこのハンドブックを持ってほしいなと思っています」

取材後記

東日本大震災以降、待機児童の解消などのため、都市部を中心に保育園の数が増えています。

今回の取材では、それぞれの園が子どもたちを守るための備えを園児や職員の数、立地場所などに合わせて、考えて進めていく必要を改めて感じました。

  •  齋藤怜

    横浜放送局 記者

    齋藤怜

    2016年入局 初任地の水戸局では震災や原発を担当し、去年11月からは横浜局で県警担当として事件事故の取材にあたる

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