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「南海トラフ地震臨時情報」東京 千葉 神奈川 事前避難地域の指定も

  • 2022年3月10日

国は、南海トラフで巨大地震が起きた場合、続いて巨大地震が起きる可能性が高いことから、臨時情報を出して、津波からの避難が難しい住民に事前避難を求めることにしています。関東地方の事前避難の対象地域の情報のほか、自治体アンケートを通じて見えた課題をまとめました。

「臨時情報」事前避難を求められるケースは

「南海トラフ地震臨時情報」は南海トラフ沿いで異常な現象が観測された場合に発表されるもので、3年前の2019年5月から運用が始まりました。
このうち、住民に事前避難が求められるのは、想定震源域の半分程度がずれ動き、マグニチュード8以上の巨大地震が起きた場合です。
南海トラフでは、過去に東側と西側の震源域で巨大地震が相次いで起きた事例が確認されているためです。

事前避難の対象地域 指定済の自治体は57%

「南海トラフ地震臨時情報」への対応を調べるため、NHKはことし1月から2月にかけて、「津波避難対策特別強化地域」に指定されている関東から九州の139市町村にアンケート調査を行い、すべてから回答を得ました。

臨時情報のうち、マグニチュード8クラスの巨大地震が発生した際に、続いて起こる可能性のある巨大地震への備えを呼びかける「巨大地震警戒」が発表されると、津波からの避難が難しい住民に1週間の事前避難が呼びかけられます。

事前避難をする地域の指定について139自治体に聞いたところ、79の自治体が指定済と回答しました。

〇事前避難対象地域の指定*
事前避難地域を指定済     57%(79自治体)
検討の結果 指定必要なし* 33%(46自治体)
指定が終わっていない     10%(14自治体)

下の地図で、赤色に塗った市町村は、事前避難地域の指定を終えたところ、つまり臨時情報「巨大地震警戒」が出た場合に事前避難を呼びかける地域がある市町村です。

それぞれの自治体に事前避難の対象者をたずね、回答された数字をあわせると46万3650人に上りました。
中には「具体的な人数は算出できない」と答えた自治体もあり、実際はさらに多くなるとみられます。

※「事前避難対象地域」
後発地震が発生してからの避難では津波到達までに避難が間に合わないおそれがある地域として、自治体があらかじめ定め、臨時情報(巨大地震警戒)が発表された場合には後発地震の発生に備え、事前の避難が必要となる地域。要配慮者等に限って事前避難が必要となる「高齢者等避難」の場合も含む。
※「検討の結果 指定必要なし」
対象地域に人家が無い、または津波避難タワーの整備等により後発地震発生後の避難でも津波到達までに間に合う等の理由で、事前避難対象地域を指定する必要がないもの。

「事前避難対象地域」関東地方の自治体は

関東地方で「指定が終わっていない」としている自治体と指定を終える予定の時期です。

「まだ指定が終わっていない」(関東)
自治体 指定終了予定
千葉県 鋸南町 2022年3月
東京都 大島町 2023年3月
新島村 未定
神津島村 2022年6月
神奈川県 横須賀市 未定
鎌倉市 2022年3月


関東地方で指定された「事前避難対象地域」の具体的な地域名です。

「事前避難対象地域」に指定
自治体 指定された地域
千葉県 館山市 船形
堂の下・東・仲宿・西・川名
那古
東藤・宿・寺赤・
仲濱・大濱・大芝・辻・
桜ヶ丘・芝崎・川崎・
西郷・正木上・正木下
北条
南町・神明町・新宿・三軒町・
鶴ヶ谷・渚・六軒町・
北条海岸・長須賀・八幡・
湊・湊団地・高井
館山
新井・下町・仲町・上町・
楠見・上須賀・上真倉・
青柳・西の浜・西原・柏崎・
宮城・笠名・大賀・里見
西岬
香・塩見・浜田・見物・
波左間・坂田・洲崎・
西川名・伊戸・根本・
坂足・小沼・坂井
神戸
香取・西町・犬石・佐野・
佐野西・藤原・洲宮・布沼
富崎
神田町・本郷・向・松崎・二斗田
東京都 三宅村 阿古地域・伊ヶ谷地域
伊豆地域
(大久保地区)
神着地域(島下地区)
坪田地域(三池港周辺・坪田漁港周辺)
八丈町 洋望・底土・出廻・
東畑・神湊東・神湊西・
楊梅ヶ原下・八戸・
大里1・大里2・
千鳥1・千鳥2・千鳥3・千鳥4・
洞輪沢(標高 30m以下の行政区)
神奈川県 藤沢市

江の島1丁目~2丁目
片瀬海岸1丁目~3丁目
片瀬3丁目~5丁目
鵠沼松が岡1丁目
鵠沼海岸1丁目~7丁目
本鵠沼3丁目~4丁目
辻堂6丁目
辻堂太平台1丁目~2丁目
辻堂東海岸2丁目・4丁目
辻堂西海岸3丁目 

避難を呼びかけ 避難所の確保は

一方、「指定済み」「まだ指定が終わっていない」と回答した自治体に、避難を呼びかける住民全員を受け入れられるだけの避難所を確保できているか質問したところ、40%の自治体が「確保できない」と答えました。
理由については「対象者が避難所の受け入れ可能人数を上回るため」が78%と最も多く、次いで「浸水想定域の外に避難所が無い・少ないため」が38%などとなっています。

“住民に浸透せず” 8割近くに

また、「南海トラフ地震臨時情報」そのものの周知も課題です。アンケートをとった139のすべての自治体を対象に、運用が始まっている「南海トラフ地震臨時情報」について住民の理解について尋ねたところ、内容について「ほとんど浸透していない」と答えた自治体は14%「あまり浸透していない」と答えた自治体は62%と8割近くが「浸透していない」と感じていました。

自治体から寄せられた声
「社会的な混乱が大きいと思われどの程度社会活動を維持できるのかわからない」
「避難行動と社会活動の両立をどのようにはかるのか、事前の取り決めの必要がある」
「行政職員が極めて少なく、現状では計画を遂行できる状態では決してない」など

専門家“絶対の正解ないコロナ禍の経験を生かして”

京都大学防災研究所 矢守克也教授
「臨時情報によって住民の生活にどのような影響があるのか、具体的に伝えることが重要だ。コロナ禍では絶対の正解がない中少しでも良い社会運営を考える試行錯誤をしてきた。同じ事が臨時情報発表直後の社会にも求められる。日常生活と防災対策をどうバランス取るのかは地域によって答えは違うので多様な関係者が参画して話し合う場を作り、議論を進めておくべきだ」


現在の科学ではいつどこで、どのくらいの地震が起きるかという正確な予測はできません。巨大地震は前触れ無く起きるというのが対応の前提で、臨時情報も、あくまで「ふだんと比べて巨大地震が起きやすくなっている」という状況です。
1週間以上たってから巨大地震が起きることも十分ありえます。場合によっては、経済や社会活動が長期間停止してしまったり、デマやうわさなどによって混乱が起きたりするおそれもあります。地震や津波に備えつつ社会全体としてはできるだけ通常の社会活動も維持するという前提のもと、情報が出た際の具体的な対応をあらかじめ決めておくことが重要です。
 

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