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台風19号から2年 神奈川 海老名市 ダムの緊急放流に備える

  • 2021年10月18日

こちらの画像はおととし、台風19号が接近したときの相模原市の城山ダムの画像です。
神奈川県では、相模川の城山ダムで、流れ込んだ大量の水を下流に流す「緊急放流」が行われ、大規模な水害のリスクが急激に高まった下流域の8つの市と町で避難指示などが出されました。関東甲信越で甚大な被害が出た台風19号から2年がたちました。当時の教訓を踏まえ、自治体や住民が進める対策を取材しました。
(横浜放送局/記者 岡肇)

高い場所がない!避難先を確保する住民たち

およそ7500人が暮らす神奈川県海老名市の河原口地区です。緊急放流などで、すぐそばを流れる相模川が氾濫すると、最も深いところで5メートルほどの浸水リスクがありますが、近くに高い建物はほとんどありません。

地区の連合自治会の会長の荻原益寿さんは、「台風19号のときは、地域住民のみなさんがどこに逃げていいのかわからず、かなりパニックになっていた」と当時を振り返ります。
2年前の経験を踏まえて、荻原さんたちの自治会では、住民が緊急に避難できる場所を確保しようと取り組んできました。

水害の危険が迫った際、車で避難してきた住民に、およそ700台が止められる3階以上の駐車場を開放してもらえるよう、同じ地区にあるパチンコ店と交渉を重ね、協定を結びました。

9月から運用が始まったのを受けて、水害時には店の立体駐車場を使うことができると、近隣住民に説明しています。この日、「車での避難もできるので、ぜひ使ってください」と呼びかけました。

1人も犠牲者を出さない!避難できない人たちを支援

海老名市役所でも、自力での避難が難しい住民への対策が始まっています。海老名市の西部には、低い土地が広がり、市内を流れる相模川が氾濫すると、水害が起こるおそれがあります。台風19号のとき、避難所には過去最多のおよそ5000人が避難した一方、高齢者など自力での避難が困難な人からは、市に支援を求める連絡が相次いだといいます。

海老名市 二見裕司 理事兼危機管理担当部長
「市の西側半分には、約5万6000人の市民が住んでいるので、緊急放流を経験して、その避難対策が本当に大きな課題になりました」

相模川氾濫対処タイムライン

このときの教訓を受け、市ではことし7月、緊急放流が行われるまでの行動方針を時間軸に沿って定めたタイムラインを作りました。緊急放流から1時間後には、相模川で氾濫が起こると推測して前倒しで動き、危険が迫った地域の住民を避難させる計画です。

危機管理課職員

市民の犠牲者を、1人も出さないという思いでこれを作成しています

タイムラインを作るにあたって、市が重視したのが、台風の直後に市民を対象に行ったアンケート調査の結果でした。

足腰が悪くて避難が難しい、ペットがいて避難所には行けないなど、危険が迫っていても避難をためらう人が少なくないことが分かったのです。

調査結果を踏まえて、市は新たに部局横断で3人1組の50チームを結成することにしました。緊急時には、支援が必要な人たちのリストをもとに、相模川が氾濫したら住宅ごと流されるおそれがある地域の住民に、各チームが分担して連絡して、避難ができるかどうか確認します。そして、必要があれば車で駆けつけて、避難も手伝うことにしました。緊急放流の3時間前までには、住民の避難を終えることにしています。

海老名市
職員

逃げ遅れゼロというのを念頭に置きながら、日頃から手順の確認をして、同じチームになる職員とコミュニケーションを図っています。

台風16号が接近 タイムラインの出番か?!

首都圏に、台風16号が接近していた9月30日。海老名市危機管理課では、台風の進路と雨や風の影響に警戒を強め、タイムラインを初めて使うか否か検討が行われていました。

結果的に、当時の状況から判断してタイムラインは活用されませんでした。しかし、市では、今後も日頃から職員どうしの連携を図って、ダムの緊急放流に備えたいとしています。

海老名市 二見裕司 理事兼危機管理担当部長
「避難のタイミングが生死を分けるポイントになると思いますので、定期的にタイムラインの見直しをして、さらに対応方針を進化させていかなくてはいけないと考えています」

取材後記

地震や火山の噴火などと違って、台風などによる風水害は、ある程度予測を立てて、事前の準備ができる災害です。2年前の緊急放流の際には、海老名市内では幸い大きな被害は出ませんでしたが、自治体も住民もこのときの経験を教訓にして、備えを進めていました。被害が出てからでなく、被害が出る前に動く。その姿勢が、自分や家族の命を守るために大切なのだと改めて感じました。

  • 岡 肇

    横浜放送局 記者

    岡 肇

    平成24年入局。岐阜局、秋田局を経て30年から現職。県央地域や相模原障害者殺傷事件を担当。

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