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台風19号から2年 “安心して避難生活を”障害者施設の模索 

  • 2021年10月18日

おととしの台風19号で、埼玉県内は各地で川が氾濫し、2000棟余りが床上まで浸水しました。知的障害のある人たちが入所する施設も被害に遭い、多くの人たちが避難を余儀なくされました。障害者は慣れない場所で過ごすと不安になり、パニックを起こしやすくなるため、当時さまざまな困難に直面しました。
あれから2年、障害者が安心して避難生活を送るための模索が続いています。
(さいたま放送局/記者 鳥谷越瑛)

慣れない場所での避難生活難しく…

埼玉県川越市の障害者施設「初雁の家」は、主に知的障害と自閉症をあわせもつ入所者を受け入れています。

おととしの台風19号。埼玉県内では各地で川が氾濫しました。この施設も、近くの川からあふれた水が流れ込み、1階が水につかりました。

入所者は、台風が直撃する前に避難をしたため全員無事でしたが、さまざまな困難に直面しました。

最初に避難した先は、最寄りの指定避難所でした。
1階はすでにいっぱいだったため、4階を使うよう言われました。しかし、エレベーターやスロープがなかったため、ほかの場所に移らざるを得ませんでした。

障害者は、慣れない場所でパニックを起こしやすくなるため、避難生活を送るのは簡単ではありません。当時、入所者たちも、避難所を転々とせざるをえませんでした。

4か所目は、体育館でした。
入所者だけで利用できましたが、広い空間が苦手な人もいます。このため、段ボールで仕切ったり、ベッドを持ち込んだりして、ようやく入所者が落ち着ける環境を整えることができました。

「初雁の家」 水野努 施設長
「入所者自身が、水害に遭っているという状況をイメージしながら避難するのはなかなか難しく、安心できる環境を組み立てるまでに時間がかかってしまった」

“安心してすごせる避難所を”課題は避難先の確保

およそ半年にわたる避難生活のあと、入所者は復旧した施設に戻りました。環境の変化に敏感な入所者に配慮し移転は見送られました。浸水の危険がぬぐい去れない中、課題は、避難先の確保でした。施設は、入所者が安心して過ごせる避難所を確保しようと、川越市に掛け合いました。

その結果、市民センターの2階を用意してもらうことができました。入所者だけが使える専用のスペースで、避難生活が長期に及んでも使えるよう調整が続いています。

川越市防災危機管理室 山田友和 副主幹
「障害の特性を把握したうえで、適切な避難所を中長期的に使えるよう確保していきたい」

生活環境を変えない方法 模索する施設も

環境の変化に敏感な障害者が、どうすれば安心して避難生活を送れるのか。別の方法を模索する施設もあります。
知的障害者などおよそ50人が生活する、さいたま市桜区の「しびらき」です。この施設も、台風19号で1階が浸水する被害に遭いました。

この施設が進めているのが垂直避難です。
生活環境を変えないことで入所者の負担を減らそうと考えたのです。しかし、施設の運営に欠かせない、ちゅう房や事務所などは1階にあります。

このため、そうした設備を上の階に移す、改修する計画を進めています。
事務所については、施設の駐車場になっているスペースに建物を新築し、その2階に移転する予定です。

一方で、建物が浸水して孤立したときの食料や医療支援をどう確保するか、長期の避難を想定した課題は残されているといいます。

「しびらき」相浦卓也 施設長
「集団で別の場所に避難するというのは、相当な覚悟が必要で水害と付き合っていくという判断を今はしているところです」

専門家“地域や行政との連携が必要”

障害者が安心して長期の避難生活を送れるよう模索が続く中、専門家は、地域や行政との連携が必要だと指摘します。

福祉防災が専門 跡見学園女子大学 鍵屋 一 教授
「単独の福祉施設だけで避難先や避難手段を考えることは難しい。まずは、周辺の仲間の福祉施設と協力する必要があるが、防災の専門ではないので、行政も一緒になって、安全な緊急避難やその後の避難生活、復旧復興を見据えながら計画を作っていくことが大切だ」

取材後記

今回2つの障害者施設を取材しましたが、「初雁の家」のように、入所者専用の避難所を確保するのは簡単ではないと感じました。
施設がバリアフリーでなければならないだけではありません。環境の変化に敏感な障害者は、ふだん一緒にいる人たちがいないことにも影響を受けるため、付き添いの職員も含めてまとまって過ごせるだけの広さが必要になってくるからです。
台風19号の教訓を踏まえ、障害者が安心して避難生活を送れるよう、障害者の特性を踏まえたしくみ作りが必要だと感じました。

  • 鳥谷越瑛

    さいたま放送局 記者

    鳥谷越瑛

    2020年入局。県内の事件・事故をはじめ災害や新型コロナなど幅広い分野を取材。

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