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台風19号から2年 川崎市「分散避難」の備え 避難所以外の選択を

  • 2021年10月11日

各地で大きな被害が出たおととしの台風19号から10月12日で2年です。当時、各地の避難所には多くの人たちが避難し、中には廊下にまで人があふれかえった避難所もありました。
コロナ禍で避難所の「密」を避けるために知っておきたいのが、親類宅や友人の家など、「避難所以外の場所」への避難をあらかじめ考える分散避難です。分散避難に備える川崎市の住民の動きを取材しました。
(横浜放送局/記者 佐藤美月)

避難所の密を防ぐ「分散避難」

おととし10月、台風19号のときの川崎市内の避難所の写真です。当時、市内の避難所には3万3000人が避難し、避難してきた人すべてを収容できず、別の避難所に移動してもらった避難所もありました。

想定を超える人たちが避難所に避難してきたことを踏まえ、市は新たに、県立高校2校を水害時の避難所として活用することにしました。

さらに、コロナ禍での避難所の「密」を避けるため、新たにチラシを作って配っています。
チラシでは、「自宅が安全なら、自宅にとどまる」や、「小さい子どもがいるなど、避難所に連れて行くのに不安がある家庭は、親類宅に避難する」など、それぞれの家庭の状況にあう形で避難場所を考えるよう伝え、分散避難への協力を呼びかけています。

分散避難とは、浸水しないマンションの上の階などでは自宅にとどまるほか、親戚・知人の家やホテルなどに逃げることで、結果的に避難所の密も避けられるという考え方です。

川崎市危機管理室 井上裕文 担当係長
「台風19号のときには、例えばマンションの高層階に住むなど、避難所への避難が必要ないと思われる人たちも避難所に避難していました。改めて、ひとりひとりの状況にあった避難行動をふだんから考えて欲しいと思います」

避難所への避難が必要か考え直す

災害時、本当に避難所に行く必要があるのか、子どもたちに考えてもらう授業を始めている学校があります。川崎市の市立上丸子小学校では、去年から、総合学習の時間を使って、5年生の児童が、災害時の行動を考え、「マイタイムライン」を作っています。

地域のハザードマップを確認したり、市の防災担当者や家族などから話を聞いたりして、自宅周辺の状況を把握したうえでどこに避難すれば安全か考えています。

「家が川に近いから、おばあちゃん、おじいちゃんの家に避難する」

 

「避難しようか迷ったけど、停電のリスクもあるので避難せず自宅にとどまった方が安全だと思った」

 

「お母さんと確認して、避難するのではなくて、家でいた方が安全だなと思った」

 

マンションから通う児童が多いこの学校では、自宅にとどまることを選んだ子どもが多くいました。
授業ではさらに、災害時、自宅にとどまる場合に備えて、普段から水や食料などを十分、保存しておくことや、こまめにニュースをチェックして正しい情報を得ること、マンションのほかの階の人と交流するなどが大事だといった意見が出されていました。

上丸子小学校 齋藤靖拡 教諭
「子どもたちは、避難所に行くことだけが避難ではないことをこの学習を通して学びました。自分の命を守るひとつの大切な視点として持てたのかなと感じています」

マンションで安全に避難できるよう備える

台風19号では道路が冠水。浸水して、停電したタワーマンションもありました。
そこで、避難所に行かなくても、自宅に安全にとどまれるように備える取り組みも広がっています。

武蔵小杉駅に近い、およそ2000人が暮らしているタワーマンション。このマンションでは、水の侵入を防ぐ「止水シート」を駐車場の入り口に置きなんとか浸水を免れましたが、浸水する寸前だったと言います。
災害時に浸水や停電を防ぎ、マンションの中でも安全に過ごせるよう、ことし、新たに止水板を12枚、購入しました。住民たち自らが、止水板を設置する訓練も繰り返し行っています。

参加した住民

みんなで取り組んでいるので住民として安心です。わがこととして備えないといけないと思いました。

マンションの管理組合の防災副委員長の松田能亜さんは、災害時に、できるだけ多くの住民がマンションの中でも安全に避難できるよう、取り組んできました。

松田さん
「ものはそろえたけど、使えなかったら意味がないので、それをちゃんと使えるように練習していく必要があると思っています」

さらに、マンションの管理組合の防災委員たちで集まって、災害時、どう行動するかも話し合っています。およそ2000人が同じ建物の中に暮らす大規模なコミュニティで、皆が納得しながら災害に備えられるよう、止水板を設置するタイミングやその際の周知方法をどうするのかなど、細かな部分も話し合って決めて、マニュアルにまとめていきます。

また室内が壊れるなど、自宅にとどまれない住民が出た場合に備え、マンションに2つある共有スペースも避難場所として使うことも決めました。共有スペースには、マットや防寒シートなどを購入し災害時に温かく過ごせるように備えていると言います。

エレベーターが動かなくなってしまっても、足の不自由な住民が、高層階から、安全に階段を下りて避難場所などに避難できるよう、運搬器具も備えました。

地域との連携も始めています。近隣のマンションや町内会などと、災害時に、被災状況などについて情報共有できるよう携帯無線機を使った訓練を行っています。こうした取り組みを通して、松田さんたちは自宅に避難できる人たちはマンションにとどまり、必要な人が避難所を利用できる体制を、地域全体で作れればと考えています。

松田さん
「マンション地区の人たちが、避難所にできるだけ避難しない。状況が違えば、助けに行く事もできますし、助け合いができたらいいなと思っています」

取材後記

子どもたちが作ったマイタイムラインには、3日前から、どう行動するかがびっしり書き込まれていました。自宅での避難を想定している子どもは、「もし窓ガラスが割れてしまったら自宅で安全に過ごせないので、窓ガラスのそばにものを置かない」など、災害時に起こりうる被害を想像して先回りして準備を進めていました。
マイタイムライン作りを通して、自分たちも、家族や、地域の人の命を守れるのだと気づいた子どももいました。こうした子どもたちからは「(マンションの)下の階の人たちが上の階に避難するかもしれないので、日頃からコミュニケーションをとる」など、災害時に、自分だけでなく周りの人の命も守るために、日頃の行動を変えていきたいといった声も聞かれました。
皆さんも、あらためて避難所への避難が必要かどうかを見直し、ご自身やご家族の命を守る行動について考えてみませんか?

  • 佐藤美月

    横浜放送局 記者

    佐藤美月

    2010年入局。甲府局、経理局を経てことし7月から横浜放送局。児童福祉や教育などをテーマに取材。

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