シュトボー
  1. NHK
  2. 首都圏ナビ
  3. シュトボー
  4. “荒ぶる川” 「荒川上流」 命を守るための3つのポイント

“荒ぶる川” 「荒川上流」 命を守るための3つのポイント

  • 2021年8月4日

首都圏各地の川のリスクをお伝えする「かわ知り」。
今回は「荒ぶる川」とも言われる、荒川の上流についてです。埼玉県戸田市から秩父市までのエリアは、本流のほか大きな支流ごとに4つの地域に分かれます。おととしの台風19号では荒川の支流の各地で決壊が起き、大きな被害が出ました。
この川の特徴と命を守るための3つのポイントです。
(さいたま放送局/記者 宗像真宏 首都圏局/ディレクター 関根幸千代)

台風19号 6か所で堤防決壊

埼玉県奥秩父を源流とする荒川の全長は173キロ。荒ぶる川と言われ、昔から治水対策が進められてきました。その一端が垣間見えるのが、鴻巣市と吉見町の間にある日本一の川幅。治水対策の一環で、川があふれたときに備えて、広大な河川敷が設けられ、その幅は、2500メートルほどもあります。

この荒川上流のエリアには、たくさんの支流が流れこみ、本流のほか入間川、新河岸川、鴨川と大きな支流ごとに4つの地域に分かれます。

おととしの台風19号では入間川流域の5つの観測所で次々に氾濫危険水位に到達。6か所で堤防が決壊し、あわせて878棟が浸水するなど大きな被害が出ました。

命を守るポイント(1) 地域の支流の水位を正しく知る

荒川上流での水害から命を守るために、気をつけるポイントは何か。
「荒川上流河川事務所」の米沢拓繁さんがあげたのが、支流も含め、自分の地域の支流の水位を正しく知る事です。

荒川上流河川事務所 米沢拓繁さん
「荒川といっても、降る場所によってどこに水がくるのかが異なります。さまざまな支流が合流するため、支流ごとにチェックすべき観測所の水位があります。どこに降った雨がどこの流域の影響を受けるか把握していただくことが被害軽減の第一歩だと思います」

米沢さんがチェックすべきと挙げた支流ごとの観測所がこちら。

水色で示した「荒川本線流域」は、「熊谷」と「治水橋」。
ピンク色で示した「入間川流域」は、「菅間」。
黄緑色で示した「新河岸川流域」は、「宮戸橋」。
紫色で示した「鴨川流域」は、「鴨川排水機場」と「日進上」。

自分の住んでいる地域にどこで降った雨が流れこむかを把握することで、川がどのような状況かを知ることができます。

命を守るポイント(2) 川の合流点に注意

おととしの台風19号で大きな被害が出た入間川流域。決壊した6つの堤防のうち、5つが支流同士の合流点でした。増水した川の水が合流点で行き場を失ったからです。
その1つ、都幾川と越辺川の合流点の近くで、堤防が決壊する様子を間近で目撃した人がいます。

東松山市に住む高橋佳男さんは、決壊した都幾川と越辺川の合流地点の近くにあった神社の管理をしていたため、その確認に来ました。都幾川から越辺川に流れ込んだ水が行き場を失って流れると、あっという間に決壊したといいます。

高橋佳男さん
「ぐるぐると渦を巻いて、越辺川が流れないために都幾川の水がここで止まったみたいですね。まさか堤防が切れると思わなくて慌てて逃げた。自分の命が助かったのはまぐれ」

堤防が決壊してわずか30分後には腰の高さまで浸水。高橋さんが住んでいた早俣地区の多くの場所で浸水被害が出ました。
川の合流点付近では水の逃げ場がないため、浸水が深く、長い間続くことが多いと言います。

荒川上流河川事務所 米沢拓繁さん
「住んでる場所によって浸水の深さや、万が一決壊した時に水がたまってる時間が異なります。また流れ込んでくる方向も違ってきます。そういう意味で、自治体の洪水ハザードマップを事前に確認していただくことが重要です」

さらに米沢さんは、合流点だけでなく、自分が住んでいる地域の「地形を知ること」も大切だと指摘します。

「上流で決壊したときに地形によって流れていく場所が変わっていきます。地形にそって水は低い所に流れていくので、決壊した場所から遠くに住んでいたとしても被害を受ける事がある。自分が住んでいる場所が、高い所なのか低い所なのか地形を知る事も大切です」

命を守るポイント(3) 目視はNG 監視カメラを活用

台風19号で決壊した場所では緊急で堤防の整備を行ったものの、堤防幅は狭いままです。こうした場所に国や県は簡易型のカメラの整備を進めています。カメラは合わせて105台。
国土交通省の「川の防災情報」で、スマートフォンやパソコンなどで誰でも確認することができます。

おととしの台風19号では、自宅の様子を見に行こうとして死亡した人もいました。
米沢さんは、こうした事が二度と起きないよう、こうしたカメラなどを活用してほしいと呼びかけています。

荒川上流河川事務所 米沢拓繁さん
「令和6年を目標にさまざまな治水対策を進めているが、十分な整備がなされない区間もあります。監視カメラや水位の情報を使いながら、速やかな避難行動につなげていただければと思います」

荒川上流のかわ知り 3つのポイント

この記事では以下の3つのポイントをお伝えしました。

(1)地域の支流の水位を知る
(2)川の合流点に注意
(3)監視カメラを活用!

川の特徴を知り、国土交通省の「川の防災情報」や、NHKの「ニュース・防災アプリ」を利用することで、自分がいる場所の近くの川の水位の情報を確認して、いち早く危険を察知することが大切です。被害を減らすために自分たちに何ができるのか、改めて確認しましょう。

「川の防災情報」 https://www.river.go.jp/index
「NHKニュース・防災アプリ」 https://www3.nhk.or.jp/news/news_bousai_app/
  • 宗像真宏

    さいたま放送局 記者

    宗像真宏

    2016年入局 4年間の県警担当を経て、現在は県政・災害担当。

  • 関根幸千代

    首都圏局 ディレクター

    関根幸千代

    2006年入局。福井局、制作局、大阪局、さいたま放送局などを経て 現所属。主に生活情報番組を担当。

ページトップに戻る