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「緊急安全確保」大雨警戒レベル5 そのときどうする?

  • 2021年7月5日

先週土曜日に起きた静岡県熱海市の土石流による被害。この大雨により、神奈川県平塚市でも、大雨警戒レベルで最も高いレベル5の「緊急安全確保」が出されました。2年前に導入された大雨警戒レベルですが、ことし5月から変更され、これに合わせて導入されたのが「緊急安全確保」です。そのときにどうすればいいのか、新しい避難情報について改めてまとめました。

平塚市で緊急安全確保 そのとき何が

静岡県や神奈川県、千葉県などで記録的な雨量となった今回の大雨。
神奈川県平塚市は、市内を流れる金目川で氾濫が発生している可能性があるとして、午前7時に流域の住民を対象に「緊急安全確保」を出しました。

「緊急安全確保」は、5段階の大雨警戒レベルの中で最も高く、レベル4の「避難指示」より、さらに上の情報です。既に災害が発生しているか、発生している可能性が高く、「氾濫発生情報」などが発表されるような状況です。

「緊急安全確保」が出された時間、金目川の観音橋観測所では、「氾濫危険水位」を33センチ超える2メートル53センチまで水位が上昇していました。
午前6時の水位に比べるとおよそ1メートルも増えていて急激に水位が上がったことがわかります。こうしたことから市は、金目川の流域で氾濫が発生している可能性があると判断し、住民にただちに安全な場所への避難を呼びかけるため「緊急安全確保」を出したということです。
その後、観音橋観測所では、水位が下がり、7時40分には「氾濫危険水位」を下回りましたが、市民から住宅が浸水しているなどの連絡が寄せられていたため、発令を継続し、解除となったのは午後2時半でした。

避難したのは1%未満

5日午後、市の職員らが被害状況を確認するため河川流域の住宅などを調べた結果、金目川沿いの南金目地区で住宅18棟の床下浸水の被害が確認されたほか、軽トラックが水没するなどの被害が確認されました。

平塚市は、緊急安全確保を出すおよそ5時間前に避難指示を出して、対象地域の住民19万8690人に対し避難を呼びかけたものの、避難したのは1%にも満たない143人にとどまったということです。
また、住民からは、「緊急安全確保」でどのような行動を取ればよいか分からなかったという声も聞かれたということです。

近くに住む40代女性
「夜中に避難と言われても危険なので避難できなかった。レベル5という情報についても知らなかったので、どうしていいか分からなかった」

市は今後、避難情報を出すタイミングも含めて、住民の速やかな避難行動につなげられるよう検討したいとしています。

専門家は住民が情報の意味を知って、いざというときの行動について考えておく必要があると指摘しています。

災害時の避難行動を研究 東京大学大学院 片田敏孝 特任教授
「『緊急安全確保』が出された初めてのケースだったので、住民が十分認識できていなかった点はやむをえない部分がある。今回のケースを機に、改めて情報が出たときに自分や家族、地域がどう行動すべきか検討しなければならない。
自治体側も、避難の情報の内容について住民に知らせる必要があるが、住民側も防災の情報は行政からのサービスだと期待せず、対応するのは自分だと自覚して主体的に行動することが大事だ」

熱海市でも緊急安全確保 しかし土石流発生のあと…

静岡県熱海市でも「緊急安全確保」が出されました。熱海市は、土砂災害が発生するおそれがきわめて高まったとして、市内全域の2万957世帯の3万5602人に午前11時5分に「緊急安全確保」を発令しました。しかし、発令されたのは、土石流が起きたと見られる時間のあとでした。

大雨警戒レベル5「緊急安全確保」 命助かる行動を

大雨警戒レベル5の「緊急安全確保」が出された場合、すでに災害が発生しているか、発生している可能性が高く、避難場所への移動は手遅れになっているおそれがあります。

▽周囲の状況を確認し、避難場所までの移動が危険な場合には、近くの頑丈な建物に移動する
▽外に出るのがすでに危険な場合は、建物の2階以上や崖の反対側など、少しでも安全な場所で命が助かるような行動を取る。

レベル5待たずに避難完了を

2019年に導入された「大雨警戒レベル」。ことし5月、よりわかりやすく情報を伝えようと、一部変更されました。大事なことは、「レベル5を待たずに レベル4までに避難を終えること」です。

▼レベル1 最新情報に注意(変更なし)
気象庁は「早期注意情報」という情報をホームページで発表しています。数日先までに気象警報が出る可能性について示した情報です。レベル1の段階ではこうした情報をチェックするなど大雨に関する最新の情報に注意してください。

▼レベル2 避難方法など確認(変更なし)
気象庁からは「大雨・洪水注意報」が発表されるような段階です。実際に避難することになった場合に、どう行動すればいいのか改めて確認してください。自分が住んでいる場所で起きやすい災害の種類をハザードマップで調べたり、避難場所や避難の経路を確かめたりすることが重要です。

▼レベル3 高齢者など避難(変更)
自治体が「高齢者等避難」の情報を出します。
これまで、「避難準備の情報(避難準備・高齢者等避難開始)」でしたが、情報の対象をより明確にするため、名称が「高齢者等避難」に変わりました。大雨・洪水警報や川の氾濫警戒情報が発表されるような状況です。高齢者や体の不自由な人などは避難を始めてください。このほかの人も避難場所の確認や持ち出す物の準備を進め、危険を感じたら自主的な避難を始めてください。

▼レベル4 危険な場所から全員避難
自治体が「避難指示」を発表します。
これまでは同じレベル4に「避難勧告」と「避難指示」がありましたが、「避難指示」に一本化されました。大雨によって土砂災害の危険性が、さらに高まり、「土砂災害警戒情報」が出されたり川の水位が上昇して「氾濫危険情報」が発表されたりするような状況です。高齢者などに限らず、危険な場所にいる人は全員避難する段階です。
避難場所に限らず、自宅近くの頑丈な建物などでも安全を確保できる場合があります。あらかじめハザードマップなどを確認してください。

▼避難はレベル4まで! レベル5待たないで
注意が必要なのは、「緊急安全確保」は発表されないことがありますし、この段階では安全が確保できないおそれがあることです。あくまで避難し遅れた人に「次善の行動」を求める呼びかけだと考えてください。「まだレベル5があるから大丈夫」と思わず、身の危険が迫る前に、レベル4の段階、つまり避難指示が出たら避難をしてください。

 

避難場所への移動が困難な時は

猛烈な雨が数時間降った時などには一気に状況が悪化して、高齢者等避難の情報や避難指示が間に合わないこともあります。すでに周囲で浸水が始まるなど、遠くの避難場所に逃げると かえって危険な場合には、近くの安全な場所や建物に逃げることも選択肢の一つです。すでに外に出るのが危険な場合には、少しでも命が助かる可能性が高い行動として、建物の2階以上や崖の反対側移動する方法もあります。

山あいの中小河川が氾濫した場合には、川からの距離やわずかな標高の差で被害の程度に大きな差が出ることもあります。また、川に近い場所や、浸水が深くなるおそれのある地域のうち、住宅が倒壊したり流されたりする危険性がある場所は国などが「家屋倒壊等氾濫想定区域」に指定します。
この区域では、2階にいたとして助からないことがあります。少しでも安全な場所を探して下さい。

命を守るのは自分 “避難スイッチ”を作って

防災機関や自治体などは様々な情報を発表します。しかし、脅威が間近に迫っているときに行政が一人一人を助けに行くことはできません。私たちも情報を受けるだけでなく、情報を行動につなげられるよう どこに、どのタイミングで逃げるのか、「避難スイッチ」をあらかじめ考えておくことが重要です。
ふだんから住んでいる地域の災害リスクに関心を持ち、災害のおそれがある場合には早め早めに避難の行動を起こしてください。

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