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線状降水帯で大雨確認 「顕著な大雨に関する情報」ってなに?

  • 2021年6月29日

6月29日に大雨に見舞われた沖縄。このニュースを見て、「顕著な大雨に関する情報」という耳慣れないことばを聞きませんでしたか?
気象庁が出す新しい情報で、発達した積乱雲が帯状に連なる「線状降水帯」による大雨が確認された場合、土砂災害や洪水の危険性が急激に高まったことを知らせるもので、6月17日から運用を始めています。
これからの大雨や台風の季節に備えて知っておきたい、このことばと意味を解説します。

線状降水帯による大雨確認で発表

「線状降水帯」は2020年の7月豪雨や2018年の西日本豪雨など、これまでの豪雨災害で繰り返し確認され、短い時間で状況が悪化する危険性があります。しかし、現在の技術では「線状降水帯」の十分な予測はできないため、気象庁は実際に「線状降水帯」による大雨が確認された場合、「顕著な大雨に関する情報」を出して厳重な警戒や安全の確保を呼びかけることになりました。

6月17日から運用開始 29日に沖縄で初めて発表

情報の運用は、17日午後1時から始まり、3時間の解析雨量や雨雲の形などから「線状降水帯」の発生を判断し気象情報として発表します。情報が発表される基準は、3時間の解析雨量が100ミリ以上になっている範囲が500平方キロメートル以上あることや、その領域の形状が「線状」であることなどと決められています。ただ、台風本体の雨雲が近づいた時など、「線状降水帯」とは言えない状況でも発表されることがあります。

29日午前2時49分、沖縄本島地方に出した「顕著な大雨に関する情報」が、初めての発表になりました。

防災メモ:記録的短時間大雨情報とは
気象庁が出す情報で、すこし名前が似たものに「記録的短時間大雨情報」があります。
数年に一度程度しか発生しないような短時間の大雨を観測したり、解析したりしたときに発表します。この情報は、現在の降雨がその地域にとって土砂災害や浸水害、中小河川の洪水災害の発生につながるような、まれにしか観測しない雨量であることをお知らせするために発表するものです。雨量基準は、1時間雨量歴代1位または2位の記録を参考に、おおむね府県予報区ごとに決めています。
(気象庁HPより抜粋)

情報が出たらどうする?

この情報が出た場合は、自治体からの避難の情報に基づき、周囲の状況を確かめて早めの避難をするほか、すでに避難場所までの移動が危険な場合は、崖や沢から離れた近くの頑丈な建物に移動したり、建物の2階以上など浸水しにくい高い場所に移動したりするなど、身の安全を確保することが重要です。

すでに外が危険な場合も

注意が必要なのは、この情報が発表された際、すでに外に出ることすら危険になっているおそれもあることです。

気象庁が過去の災害事例で検証したところ、「顕著な大雨に関する情報」を発表する基準に達していない段階でも、大きな被害が出ていた事例があるということです。

また、情報が出ていない地域でも雨雲が移動し、急激に状況が悪化するおそれもあります。このため気象庁は、避難情報に直結はせず、危機感を高めてもらうための情報だとし、5段階で運用されている大雨警戒レベルでは「レベル4“相当以上”」だとしています。
その上で、情報を待つことなく、気象庁のホームページで確認できる危険度分布や河川の水位情報などをもとに、早めの避難を心がけてほしいと呼びかけています。

専門家「大切なのは自らの命を守る判断力や対応力」

「顕著な大雨に関する情報」について災害情報が専門で、気象庁の検討会で委員を務めた東京大学大学院の片田敏孝特任教授は「西日本豪雨で大きな浸水被害が出た岡山県倉敷市の事例では、今回の情報の発表基準を満たしていないなど、災害が起きる前にこの情報が必ず発表されるとは限らないということを理解しておく必要がある」と指摘した上で次のように話しています。

東京大学大学院 片田敏孝特任教授
「降水量が増え、集中的に事態が悪化することもある中、その場所に適した情報を、適切なタイミングで出すことは難しくなっていると思う。『防災気象情報が充実化しているから、それに任せればいい』という依存心が出てくることは心配で、情報を活用しつつも大切なことはみずから身の回りの状況を確認し、自分や家族の命を守るという判断力や対応力だ」

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