シュトボー
  1. NHK
  2. 首都圏ナビ
  3. シュトボー
  4. 首都直下地震 帰宅困難者支えるエリア防災はどこまで進んだ?

首都直下地震 帰宅困難者支えるエリア防災はどこまで進んだ?

  • 2021年3月24日

東日本大震災の直後、都内のターミナル駅周辺には多くの帰宅困難者があふれ、大混乱となりました。今後予想される首都直下地震は、さらに深刻です。
大地震直後の混乱を回避し、「帰宅困難者」をいかに安全な場所に退避させることができるか。そのカギを握るのが「エリア防災」という考え方。この課題に14年前から向き合ってきた新宿駅周辺地域の取り組みからは、WEBサイトによる誘導システムや一時滞在施設を開設するためのグッズなども生まれています。帰宅困難対策、最前線からの報告です。

防災訓練 新宿の空に飛び交うドローン

ことし2月、ふだんはドローンの飛行が認められていない新宿区の新宿中央公園に4機のドローンが飛び交いました。
首都直下地震を想定した防災訓練で、公園に集まった帰宅困難者がどれくらいいるのか映像を通じて確認し、さらにドローンからの音声案内などで一時滞在施設まで誘導するためです。

許可を得てドローンを飛ばしています

首都直下地震が発生し、交通機関が停止した場合、都の想定では新宿駅周辺には最大で37万もの人々が滞留し、そのうち買い物客など約5万人が行き場を失うとされています。
ただ、こうした人たちを地元の行政だけで支えるのは困難です。災害時、地域によって異なる課題に、行政だけでなく地元の事業所などが連携して対応する「エリア防災」という考え方が大切になってきます。新宿駅周辺地域の帰宅困難者の対応訓練は、こういった考えに基づいて14年前から繰り返し行われており、ドローンの活用などのユニークな対策も生まれました。

この取り組みの中心となっているのが、新宿区にキャンパスのある工学院大学の村上正浩教授です。

工学院大学はこの地域で、災害対応活動の支援拠点になる現地本部の役割を担っています。大学が地域防災の大切な役割を果たすようになったきっかけは10年前の東日本大震災でした。

一斉の帰宅が首都圏の混乱を引き起こした

これは震災発生の当日の、工学院大学の様子です。
新宿に帰宅困難者があふれたため、大学では1階キャンパス内の広場に、家に帰る手段を失った人たち、およそ700人を受け入れました。しかしこうした帰宅困難者や学生などの対応に追われ、災害時の現地本部を立ち上げることができず、地域の情報収集と発信を行うことができませんでした。

また各事業所も、帰宅困難対策の一番の基本「慌てて帰宅せずその場にとどまる」ことや、帰宅困難者の受け入れができず、結果として、周囲には数え切れないくらいの帰宅困難者があふれかえってしまいました。

帰宅手段を失った人々 新宿駅

村上教授は当時の様子をこう話します。

村上教授
「当時、多くの方が、駅から行き場を失って出てきたわけです。当然このビル街にも多くの方がいらっしゃって、その方々が行き場がないというか、会社とかこの地域としての全体的な方針があったんですが、それもなかなか周知できてなかったので、混乱を引き起こした。一斉の帰宅が、新宿だけではなくて、首都圏全体の混乱につながったと思うのです」

村上教授は震災以降、地域ではさまざまな訓練や講習会を実施。震災で浮き彫りとなった課題、災害時のルールの周知と徹底、そして現地本部を中心とした地域連携の取り組みを進めてきました。

安全な一時避難場所がわかる「エリア災害対応支援システム」

10年近くにわたって帰宅困難対策を検討してきた結果、村上教授たちが開発し2017年頃から試験的に導入をはじめたのが、「エリア災害対応支援システム」です。

このシステムは、新宿を訪れていた人が地震にあい帰宅困難になった際、スマートフォンなどで一時的に受け入れてもらえる施設を簡単に探せるものです。

その仕組みです。

▽まず、帰宅困難者の受け入れが可能な事業者に事前に登録してもらいます。
▽いざ、地震が発生したら、事業者は施設の被害状況やライフラインの状態をWEBページに入力します。
▽この結果は、一般に公開されているため、誰でもその情報を得ることができ、安全な一時滞在施設に向かえるのです。
※WEBページは近日公開予定

事業者が入力する画面

このシステムを使うことで、事業所自身が情報を入力できるため、より少ない人数で情報の収集を行うことができ、利用者へもこのシステム上で地域の一時滞在施設の状況を素早く案内することができます。

受け入れ先企業のための簡単“開設キット”

村上教授は、事業者が帰宅困難者を受け入れやすくし、エリア防災に多くの企業が参加してもらうためのグッズも開発してきました。

「一時滞在施設開設キット」です。
●支援物資を受け入れる役割のスタッフが一目でわかるようにする「ゼッケン」
●スタッフが優先的にやることを簡潔にまとめた「手順書」
●建物が一時避難施設であることを明示する「プレート」
●立ち入ってほしくないエリアに貼る「立ち入り禁止の札」
このように、一時滞在施設の一連の運営を支援するためのグッズが入っています。

東京都は一時滞在施設を開設するためのマニュアルをまとめていますが、緊急時に防災の専門家ではない企業の社員などが、施設を開設するのは簡単なことではありません。見ず知らずの人を大勢受け入れることに不安を抱いている企業も少なくありません。だからこそ、ハードルを低くするこうしたキットが必要なのです。

村上教授
「避難所も専門の人間が常にいるわけではないです。災害時に、ビルにいる普通に働いてる方々が一時滞在施設の立ち上げをしていくわけです。それを支援したいっていうところから生まれたのが一時滞在施設の開設キットなんです」

村上教授たちは、このキットを使った訓練を新宿駅周辺の地域で2回実施しました。

また、横浜市のみなとみらい21地区でも、次年度の採用を検討しています。

エリア防災 現在の課題

帰宅困難者の支援に向けて新宿を舞台に10年以上にわたって取り組んできた村上教授。システムや施設の開設キットなど新たなツールも生まれた一方で、まだまだ課題は多いと言います。

大きな課題は、エリア防災の担い手を増やしていくことです。

東京都全体では、約92万人分の一時滞在施設が必要とされていますが、今年1月時点で確保できているのは、約43万人分で、民間の協力をどう得ていくかが課題になっています。

村上教授
「首都の直下地震を考えると被害の及ぶ範囲はかなり広域になるわけですよね。新宿だけでなく、大きな駅間がお互い連携しなければ、帰宅困難者の問題であったり、いろんな救助、災害の対応っていうのはできないと思ってるんですね。そこを考えれば、こうした取り組みや連携の輪っていうのは、どんどんどんどん広がっていくべきだと思います」

ページトップに戻る