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災害時 あなたはペットと避難できますか?“同行避難”準備のすすめ

  • 2021年1月22日

いざ災害が起きたときに、飼い主がペットと一緒に避難することを「同行避難」といいます。環境省は、この「同行避難」を原則とし、各自治体や地域の避難所でも受け入れの準備が進められていますが、現実の受け入れには限界もあります。
ペットが原因で飼い主が避難を躊躇したり、逆にペットが取り残されるようなことがあってはいけません。事前の具体的な備えやふだんの飼育の心がけなど、ポイントを取材しました。
(横浜放送局/記者 山田友明)

同行避難できますか? 山下公園で聞いてみた

全国でも有数の数のペットがいる横浜市の中心部。
週末の昼下がり、横浜市中区の港沿いにある山下公園には、さまざまな種類の犬が飼い主たちと散歩を楽しむ姿が見られます。しかし、災害が起きた時に備えた「避難」については、どう考えているのでしょうか。

30代の男性
「ペットは家族なので優先して避難させたいが、多くの人がいる場所への避難は不安です」

40代の女性
「避難所の中にペットと入って、他の人に迷惑を掛けるのが心配です」

返ってきたのは、「実際に避難所にいくのか」「どういう計画を持っているのか」、具体的には決めていないという声ばかりでした。

準備はしているけど…

横浜市港南区の金子芳子さんは、5年前からイタリアングレーハウンドの「伊太朗」くんと暮らしています。去年から犬用の食料やトイレ用品などをまとめた防災バッグを用意するなど災害への備えを進めています。しかし、いざ実際に避難しなければならなくなったらどうするのか。近くの小学校への避難も想定しましたが、多くの人がペットと「同行避難」することでスペースが不足し、避難所に入れなくなるのではと不安を感じています。

金子芳子さん
「新型コロナウイルスの感染が広がった去年、近所で新しく飼われ始めたペットの数が増えたと感じています。ワンちゃん、ネコちゃんで避難所がいっぱいになったらどうしようという不安があります。家の庭にいるしかない状況になるのかもしれません」

犬と猫で36万頭 いったいどこに避難?

災害時をペットの避難を想定した展示

避難所の受け入れ体制はどのように進められているのか。
横浜市内では登録されている犬だけでもおよそ18万頭、同じくらいの数と見られる猫も加えると36万頭ものペットが飼われているとみられています。

横浜市では、台風などの風水害で短期の避難が想定される場合、原則として、市が開設する避難場所で受け入れる方針です。ただ、必ずしも、全ての避難所で受け入れの体制が整っているわけではありません。その際、ペットの一時飼育場所は、犬や猫にアレルギーがある人やペットが苦手な人を考慮して、避難者が生活を送る場所とは離れたところに設ける方針です。また、ペットを収容するケージやトイレ用品、食べ物などの必要なものは、すべて飼い主自身に用意してもらう必要があります。

さらに、コロナ対策で人の三密対策も求められるなか、ペットの飼育スペースの確保は難しくなっているといいます。横浜市でも、多くのペットが避難してきた際には、ペットのストレスの原因になるものの、限られたスペースにケージを積み重ねるなどの対応をせざるを得ないと考えています。

横浜市動物愛護センター 高畠正義さん 
「横浜市のような都市部だと、避難場所のスペースはどうしても限られてきます。どうしてもケージを積まなければいけない状況も出てきてしまうかもしれません」

避難所以外の避難先を確保して!

「ペットの飼い主はあらかじめ複数の避難先を検討する必要がある」

そう指摘するのは、ペットの防災や避難についての啓発を行っている、NPO法人アナイス理事長の平井潤子さんです。おととしの台風19号で、実際にペットともに避難した場所について行ったアンケート調査の結果では、自治体などの避難所よりも、実家や親戚、友人や知人宅に避難した人が多かったことがわかったといいます。背景には、自治体の避難所がペットを受け入れていなかったケースや、飼い主自身が受け入れてもらえる避難所を知らなかった人も多かったためと見られています。自分が住んでいる地域の避難所の受け入れ体制を調べたうえで、災害リスクに応じて避難先を複数確保することが肝心だと指摘します。

平井潤子さん
「感染症の流行対策としての三密防止や高齢者などの災害弱者の受け入れといった検討課題が山積みとなっているなか、ペットの受け入れのハードルは高くなっています。本当に避難所にペットとともに入れるかは保証されていないのが現状です。自宅での在宅避難に加えて、実家や友人などの家や職場のオフィスなど、複数の避難先の準備をしてほしい」

東日本大震災のような長期の避難への備えも忘れずに

さらに、東日本大震災のような大規模災害を教訓に、長期の避難を想定した備えも必要だと指摘します。長期の避難が想定される大地震などでは地域住民が避難場所の運営の中心的な役割を担います。大きなポイントを3つ、まとめてもらいました。

1「ペットフードやトイレなどの消耗品は1か月単位の備えを」
東日本大震災では、半年間ペットの支援物資が届かなかったケースもあります。使ったら使った分だけ新たに買い足して一定量を備蓄する「ローリングストック」で、まずは「自助」の備えを万全にしてください。

2「ふだんからケージに入る練習を」
長期の避難では、ケージの中で過ごす時間が長くなりがちです。ペットのストレスを減らすためにも、日頃からケージに慣れさせる必要があります。長期の避難用の十分な広さのケージに加えて、緊急時に持ち出す用として比較的軽くて持ち運びがしやすいソフトケージを用意しておくと便利です。

3「地域の防災活動への参加を」
地域の住民が運営する避難場所では、飼い主たちでペットの飼育管理をする必要があります。日頃から避難訓練や避難所の運営訓練などに参加することで、地域の住民たちとペットの避難について話し合う機会を作ったり、近所の飼い主たちで協力体制を作ったりしておくことが必要です。

平井さん
「まずは自分とペットの命を守るという『自助』の意識をしっかりと持っていただき、その上で避難所運営のマンパワーとして地域の防災・復興に参加するなどの『共助』の準備を進めていってほしい。『何がしてもらえるか』ではなく、『何ができるか』という心構えが、ペットの命を守ることに繋がります」

飼い主でない人にも知って欲しいこと

ペットが原因で避難を躊躇したり断念したりして、飼い主が被災することは絶対に防がなければいけないことです。さらに、東日本大震災では、自宅に取り残されたり飼い主とはぐれたりして、放浪・野生化したペットが大きな地域問題となりました。
逆に、避難場所でペットがいることで避難住民たちの癒やしになる効果も指摘されています。飼い主の責任はもちろんですが、飼い主でない人々にとってもペットの防災対策や「同行避難」について理解を深めることは大切だと感じました。

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