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4代目の警察犬指導士デビュー さいたま市で70年続く民間訓練所

  • 2024年5月23日

この春、さいたま市の警察犬訓練所で、18歳の若き指導士がデビューしました。この訓練所、一家で70年にわたって運営を続けています。4代目としてのプレッシャーを感じながらも、事件や事故の現場で活躍したいと奮闘する指導士に密着しました。

さいたま放送局記者/平岡仁

警察犬の育成は2種類

事件の捜査や行方不明者の捜索などで活躍する警察犬。警察が直接管理する「直轄警察犬」と、民間の訓練所が育成する「嘱託警察犬」がいます。埼玉県では、2019年に「直轄警察犬」が導入されるまで「嘱託警察犬」が現場を担ってきました。

親子4代で70年続く訓練所

さいたま市にある「浦和第一警察犬訓練所」は、埼玉県内で最も歴史のある民間の訓練所です。
創立は1954年。この訓練所、実は親子4代にわたって運営を続けています。

4代目の若き指導士デビュー

羽鳥雄太さん(18)

4代目となる羽鳥雄太さん(18)は、この春、高校を卒業して警察犬指導士としての道を歩み始めました。ペアを組むのは、警察犬としてはベテランとなるアレックスです。

この日行われていたのは、土に埋められた「証拠」を探す訓練で、地面からのにおいを頼りに見事に埋められていた靴下を掘り当てました。 

羽鳥さん

「アレックスの方が先輩です。最初は彼にリードしてもらっていましたが、なるべく早く慣れて、犬の足を引っ張らないようにしたいです」

2代目・3代目から指導受ける

左から3代目・羽鳥さん・2代目

羽鳥さんは2代目の祖父・敏雄さん、3代目の父・文仁さんのもとで訓練を重ねています。
デビューしたてで、犬とコミュニケーションを取るのにまだまだ苦労しています。

2代目

「犬のくせが分かるようになるまで多少時間がかかります。一生懸命やっていることは分かるんですが、実践的になるとまだ足りないところがあるかな」

訓練を終え自宅に戻った後も、先代からの指導が続きます。

3代目

「訓練場で一度した話を、もう一回自宅で繰り返すこともあります。ただ、言われているうちにだんだん食欲が落ちてくるんですよね。それは歴代、経験しています」

数多くの感謝状

1年間の出動件数が100件を超えたこともあるという訓練所。事務所には、壁一面に感謝状が飾られています。警察庁長官から贈られる「警察協力章」もあります。

社会的反響が大きい事件を担当することもありました。2008年に起きたさいたま市で、飼い犬を殺処分された一方的な恨みから元厚生事務次官らが殺害された事件。当時、2代目の祖父と3代目の父が現場に出動し、犯人が使用した車を見つけるなど事件解決に貢献しました。

3代目で父親の文仁さんは、羽鳥さんが指導士の仕事を継ぐことになったことについて、喜びとともにこう話します。 

3代目

「警察犬と一緒に現場に出たときは、対象となる方の命や生涯、人生というものを全部背負い込んで現場に立たなければいけない。いろいろな責任を背負う仕事なので、責任の重さを自覚しながら頑張ってほしい」

先代と同じ道を志す

4代目としての重圧も感じるという羽鳥さん。
それでも誇りを持って働く父や祖父の姿を見て同じ道を志したといいます。

羽鳥さん

「プレッシャーはもちろん感じているんですけど、現場に出て活躍する姿を見て、かっこいいなと思っていました。大変なのはわかっていたんですが、自分もやりたいと思いました」

指導士には訓練の技術に加え、犬の健康管理も求められます。訓練所で管理している犬はあわせて9頭。
犬の異変にすぐに気づけるように動物看護の専門学校にも通い、必要な知識を学んでいます。

羽鳥さん

「犬にムダに負担をかけたくないので、健康管理は一番気をつけたいです」

埼玉県警本部

5月、埼玉県警で指導士の嘱託式が行われ、羽鳥さんは緊張した面持ちで式に臨みました。

父や祖父と同じ制服に袖を通した羽鳥さんは、式後、改めて決意を語りました。 

羽鳥雄太さん

「自分ができることを1つ1つ正確に、積極的に活動に取り組んでいきたい。
 1人でも多くの困っている方を助けられるように日頃の訓練から頑張っていきたいです」

取材を終えて

事務所の数え切れない感謝状を見たとき、70年という歴史の積み重ねを感じずにはいられませんでした。また、「先代と同じように自分も誰かの助けになりたい」と語る羽鳥さんが、とても印象に残りました。仕事は異なりますが、「伝えることで社会が少しでもよくなれば」と願っている私も、羽鳥さんと同じように頑張っていきたいと思います。

  • 平岡仁

    さいたま放送局/記者

    平岡仁

    2022年入局 。この春、新人記者を迎え初めて後輩ができました。犬派。

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