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埼玉は“東京の北どなり” インバウンド 外国人観光客にPR

  • 2023年09月26日

“Just North of Tokyo”
インバウンド需要の回復が見えるなか、外国人観光客向けに埼玉県が打ち出したキャッチフレーズです。「埼玉」の文字は脇に追いやられていますが…。
心配いりません。これは、あえて「埼玉」を前面に出さずに観光客を呼び込もうという埼玉県の戦略なんです。

(取材:さいたま局記者 藤井美沙紀)
(リポーター:首都圏ネットワーク 牛田茉友)

"Nobody knows Saitama!?"

ことし8月、日本を訪れた外国人旅行者は、推計で215万人あまり。3か月連続で200万人を超え、インバウンド需要の回復が、いっそう鮮明になっています。

東京・浅草で取材する牛田アナウンサー

取材クルーが訪れたのは、日本を代表する観光地、東京・浅草です。
ここなら、日本の文化や伝統に関心の高い外国人観光客が大勢いるはず。
そんな彼らに、ズバリ聞いてみました。

牛田アナ

埼玉県、知っていますか?

外国人観光客

いいえ

外国人観光客

いいえ

外国人観光客

(さいたま)スーパーアリーナ?

観光ガイド

埼玉、誰もきいたことない

外国人観光客

ニッコウ?

日光は、栃木県・・・

観光客の女性に、ガイドブックを見せてもらうと…。
 

鎌倉、箱根、Mt.Fuji(富士山)… 埼玉載ってない(苦笑)

浅草を訪れた外国人観光客10組にインタビューしましたが、埼玉という地名を知っていたのは、2人だけ。テレビできいたことがあるというタイからの観光客と、母親が日本人だというイギリスからの観光客で、2人とも、実際に埼玉に行ったことはありませんでした。

こうした状況を裏付けるようなデータもあります。
日本政府観光局の調査では、新型コロナウイルスの感染拡大前の2019年に日本を訪れた外国人旅行者のうち、東京都を訪れた人は47%だった一方で、埼玉県を訪れたのは、わずか1%だったのです。千葉県や神奈川県とも比べて、大きな差が出ています。
 

埼玉は“東京の北どなり”でPR

こうしたなか、1人でも多くの外国人観光客を取り込みたいと、対策を強化しているのが埼玉県です。コロナ後の「インバウンド元年」と位置づけた今年度、新たなプロモーションを展開しています。

キーワードは“Just North of Tokyo”。
日本語で「東京の北どなり」という意味です。都心からの近さをアピールし、いわば東京の知名度を借りて誘致する戦略です。

9月には、都内の旅行代理店やホテルの担当者に、埼玉の観光の魅力をPRするイベントを開きました。東京を訪れる外国人観光客に接する機会の多い彼らに、埼玉の魅力を伝えてもらおうという狙いです。

イベントの冒頭で大野知事は、時折冗談を交えながら、埼玉と東京との近さを強調しました。

埼玉県 大野知事
「埼玉県は東京からの日帰り小旅行に最適です。東京から近いのに、こんなにすばらしいところがある。東京から近いのに、こんな特別な体験ができる。そういうところをPRして、インバウンドのお客様に、埼玉にお越しいただきたいと考えています」

「インバウンドのお客様をご案内するなら、まず京都かと思う方、手をあげて…ああ、いませんか?やっぱり埼玉ですよね!(笑)」

「東京都心から県内では一番距離がある秩父だとしても、1時間半足らずで行けます。でも、京都だと、片道2時間半かかります。日帰りはなかなか難しい」

埼玉県の新たな戦略を、出席者はどう感じたのでしょうか?

都内の旅行会社の担当者
「移動に時間を割かれるのはもったいないので、やはり東京から近いというのは、大きいと思います。あとは埼玉県は自然や、京都のような風景、日本を感じる文化が体験できたりもするので、そういった魅力を伝えたい」

都内のホテル営業担当者
「埼玉県はホテルが少ないと実感しているので、東京に泊まった人がどうにか埼玉に行けるような施策はないかなと検討しています。また、そういったものを求める企業さまとのコラボも探っていきたい」

埼玉県観光課 インバウンド担当 難波明寛主幹
「東京には外国人観光客の方が多く訪れているので、そこから一部の人に埼玉県に足を伸ばしていただくだけでも、かなり増えると考えています。都内のホテルでのキャンペーンなども行って、Just North of Tokyo、東京の北どなりを前面に頑張っていきたい」

確かな需要 日帰り旅行の外国人観光客

川越を訪れる牛田アナウンサー

こちらは、江戸の情緒あふれる歴史的建造物や文化財が残る、川越市。去年、およそ550万人の観光客が訪れました。

地元の観光協会は、外国人観光客を増やそうと、英語や中国語、それにドイツ語やフランス語など、さまざまな外国語で、市内の地図を作成していますが、見渡すかぎり、外国人観光客の数は多くはありません。

しかし、取材を進めると、箸づくりを体験できる店では、箸づくりに挑戦するスウェーデンからの観光客2人がいました。

2人は、2週間の日本での滞在中に東京、京都、それに広島を観光したあと、明日帰国するというタイミングで、日帰りで行ける観光スポットを探していました。

そして、SNSのインスタグラムで、アメリカ人の観光客がこちらの店を紹介しているのを見つけ、店を目当てに川越を訪れたということでした。
2人は、日本の文化に触れられる体験に、満足した様子でした。

2人が参考にした英語の説明書

観光客の女性
「川越は、美しい住宅が立ち並んでいて、魅力的です。東京と比べると、人も少なくて静かで、良いところです。とても楽しんでいます」

『日帰り旅行で、日本文化を感じられる』。
私たち取材クルーも、外国人観光客のニーズを実感しました。

小江戸川越観光協会 根岸督好 専務理事
「正直に言って、東京などの『ゴールデンルート』と言われるところからは、ちょっと外れていて、なかなか周知されていません。日帰りで旅行するときなどに川越を選んでもらえるように頑張っていきたい」。

取材後記

あえてお隣の“東京”の知名度を借りる戦略で、勝負に出た埼玉県。
埼玉県を知らなくても、訪れたら魅力的な観光地がたくさんあります。

紹介したイベントの他にも、物産観光協会がインバウンドを対象とした専用の窓口を設けたり、都内の旅行業者を対象とした観光ツアーを行田市で開くなど、さまざまな取り組みが行われています。

そして、いつか功を奏して、将来、浅草にいる外国人観光客のガイドブックに、埼玉県内の地名が載る日が来るのでしょうか…。取材した1人1人の顔を思い浮かべながら、いつかまた東京で出会った外国人に、“埼玉を知っていますか?“ときいてみたいと感じました。
 

  • 藤井美沙紀

    NHKさいたま放送局

    藤井美沙紀

    2009年入局。秋田局、国際部などを経て現職。

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