この夏は全国で記録的な猛暑となり、気象庁の検討会は「圧倒的な高温」と表現しました。
「暑い町」と言えば、埼玉県熊谷市が全国的にも有名ですが、最近、同じ埼玉県の鳩山町(はとやままち)がよくニュースで取り上げられていることをご存じでしょうか?
9月19日にも全国で一番高い気温を記録しました。
なぜ最近、鳩山町が暑くなってきたのか、身近な疑問を調べました。
今回取材をした唐澤宗彦です。カメラマンをしています。私は今年7月、埼玉に赴任しました。埼玉は2度目です。
赴任早々、暑さの映像をたびたび撮影に行くことになりました。
来て早々気づいたことがあります。今年は有名な熊谷市よりも「鳩山町」に行く機会が多くありました。
前のさいたま局勤務の時は、そんなに行ったかな…?
ちょっと不思議に思いました。
ここ数年暑くなりましたね、親戚とか友人から暑くて大変だねとよく言われます
全国どこも暑くなっている中、鳩山は特に暑くなっているのでしょうか?
疑問に思った私は気象庁のデータを自分なりに分析してみました。
鳩山と熊谷の年の最高気温を比較してみると、かつては熊谷の方が高い事が多いのですが、徐々に鳩山の方が高い年が多くなり、2020年から今年までの4年間は鳩山の方が高いのです。
こうした傾向を予測していた高校がありました。熊谷高校地学部ではかつて鳩山と熊谷の気温について研究していたことがあり、その際に私たちの分析と同じ傾向が出ていました。
熊谷高校の生徒が調べた年ごとの平均気温の推移です。
鳩山の温度上昇のペースが熊谷に比べて高く、このままの傾向が進むと鳩山の年平均気温が熊谷を抜くということがグラフで示されています。
埼玉県環境科学国際センターで都市の温暖化についての研究や熱中症を防ぐための情報発信をしている大和広明さんに話を聞きました。
熊谷と鳩山の最高気温の差が一日ごとにどのように推移していったかのデータを元にお話を伺いました。
観測装置の環境の変化によって観測値にはぶれが発生することがあり、安易な判断はできないが、30年前からのデータを熊谷と鳩山で比較すると、10年ほど前から鳩山と熊谷の最高気温の差が小さくなってきている傾向が見て取れると言うことです。
そこで、鳩山が熊谷に匹敵するほど暑くなっている理由を聞きました。
涼しい海風が東京湾などから内陸に入ってきて、最高気温を抑えています。
内陸に入ってきた海風の先端を「海風前線」と呼びます。
この海風前線の南側は涼しい海風で気温が抑えられ、海風の届いていない北側は気温が高くなっています。
もともと夏の時期は、東京湾からの涼しい海風が東京を通って内陸に入ってきて、鳩山の最高気温を抑えていました。
都心部の再開発などで高層ビルが林立することによって、海風が鳩山に到達する時間が遅くなり温度が上がってしまう、だから鳩山の最高気温が上昇しているのではないかというのが大和さんが考える仮説です。
9月19日、また鳩山が全国で一番高い最高気温を記録しました。
そういうとき、どうしてもどこが一番暑いのか、そのランキングに目が行きがちです。
ですが大和さんは、こうした気温のランキングのような数字にとらわれるのではなく、多くの人を苦しめている熱中症への対策をきちんと講じてほしいと話していました。
私の身近にも猛暑の中で具合を悪くした人がいます。
今年の暑さは峠を越えましたが、気を抜くことなく、自分や周りの人たちの健康にも留意していきたいと思います。