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関東大震災の知られざる余震 中学生が読み解く当時の日記

  • 2023年09月22日

ことし9月1日、関東大震災の発生から100年になりました。1923年9月1日に起きたマグニチュード7.9の本震はよく知られていますが、実はこの震災の特徴は余震が続いたところにあります。最大規模の余震はおよそ4か月後の「丹沢地震」ですが、残された資料などが少なくあまり知られていません。その実像を明らかにしようと、埼玉県の中学校の生徒が当時記された日記から読み取る研究を進めています。

さいたま局記者/二宮舞子

知られざる関東大震災の余震

こちらの地図は、9月1日の関東大震災の本震と、そのあと、およそ1か月間に起きたマグニチュード4.5以上の地震の震源を示したものです。
神奈川県や千葉県の周辺など、多数の余震が起きていたことがわかります。

そして、黄色で示したのは、巨大地震のおよそ4か月後に発生した余震「丹沢地震」です。
1924年1月15日に発生した神奈川西部を震源とするマグニチュード7.3の最大規模の余震です。死者19人、けが人600人以上、少なくとも4000の建物に被害があったとされています。

日記を読み解く研究者は中学生

「大地震 9月1日におそらく劣らないほど」

震源から60キロ以上離れた埼玉県所沢市の住民が残した日記には、丹沢地震について9月1日の関東大震災の本震と同じくらい大きく揺れたことや、石垣が崩れ灯篭が倒れたことが記されていました。

こうした日記の調査を行っているのは、さいたま市の栄東中学校3年生、徳田光希さんです。
理科研究部に所属する徳田さんは丹沢地震に関心を持ち、住民の日記を調べてきました。

「せっかく行った工事も無駄になってしまった」

徳田さんが日記を読み解くと、9月の本震で被災して修復した場所が再び被害を受けていたことがわかりました。

徳田光希さん
「100年前に生きてたというのが分かるし、その中で動きとか直したりとか修復の動きがあったりするので、すごく面白いと思います」

こうした研究成果を、徳田さんは学校の文化祭で発表しました。

「関東地震によって崩れてしまったところを修復していたのにまた壊れてしまったという嘆きの声が書かれていました」

「教科書の年表に書いてあることがすべてじゃないのと、これだけ大きな地震だったのに伝えられていないことがあるんだなと思いました」

「そんな大きい余震が数か月後にあったというのは知らなかった」

徳田光希さん
「丹沢地震については、まだあまり知られてないと思うので、こういう場とかでも周知できたのでよかった」

日記を記した人物を知る人に会って

この夏、所沢市で開かれた関東大震災100年の企画展には、徳田さんたちの研究内容が、実際の日記とともに展示されています。その企画展の初日、ある人物が徳田さんのもとに訪れました。

所沢市に住む鈴木源太郎さんです。

鈴木源太郎さんの祖父・源一さん

鈴木さんの祖父、源一さんは日記を残した1人で、のちに町長も務めました。
その日記には、丹沢地震について「明け方に強い地震があって驚愕した」と記されていました。

「会ったことはないんですか」。

「いや、ずっと同じ屋根の下に、27~8年。
気骨のあるじいさんでね、毎日毎日、几帳面につけてましたね」

「9月の地震が起きたとき、源一さんは実家におられた?」

「そのときは村役場に出てたんじゃないかな」

徳田さんは、日記を記した人物の背景を知ることで、当時の人たちの思いをより深く理解できたといいます。

徳田光希さん
「日記を読んでいるだけだと人柄とかどういう人物像だったかが分からなかったので、20年以上同じ屋根の下で暮らした人から実の姿を知れたのが大きかった。会いたいと思っていたんですが、こういう場で会えて良かったです」

鈴木源太郎さん
「祖父の日記は読んだことがないんですよ。こういう資料がそういう形で生かされるのが
私も本当にうれしいです」

研究成果を学会で発表

関東大震災の発生からちょうど100年のことし9月1日。
全国の地震学や歴史学の研究者が集まって開かれた学会「歴史地震研究会」が神奈川県小田原市で開かれました。徳田さんもポスター発表で参加しました。中学生ではただ1人の研究発表です。

徳田光希さん
「丹沢地震のあとにも灯篭が倒れたんですけど、倒れた灯篭の数が丹沢地震の方が多かったという記述があって」

研究者
「人の経験談が非常に支えになりますので、そういう意味でとっても大事な研究だと思います」

研究者
「若い方が当時の日記資料を分析して世に公表しているというのは、この学問分野においてもすごく明るい未来だと思います」

徳田光希さん
「ほかの研究者の方から、そんなのがあるんだと驚かれたりして、やっぱり丹沢地震はあまり資料がないんだと痛感しました。地域のことをまだ多く知れていないなと、いろいろな人のアドバイスで思ったので、地域の予備知識を含めた上で日記を読み進められたらいいなと思います」

取材後記

崩し字で書かれた日記ですが、徳田さんが読み解いたのは、今のところ9月1日の本震と丹沢地震の前後に限られていて、さらに長い期間を調べることにしているそうです。
丹沢地震を始めとする余震の被害については詳しくわかっていないことも多く、こうした研究から当時の地震活動の実像が明らかになることを期待したいと思います。

  • 二宮舞子

    さいたま局 記者

    二宮舞子

    2017年入局。盛岡局では東日本大震災からの復興などを取材。2022年8月からさいたま局で県政・福祉担当。愛媛県出身。 

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