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インボイス制度とは 個人事業主など参加し説明会 埼玉 川口

  • 2023年09月11日

10月から始まる消費税の納税額の正確な把握を目的とした「インボイス制度」。 
制度開始を前に、事業者向けの相談会が埼玉県川口市で開かれました。
インボイス制度の内容、最近の動きをまとめました。

インボイス制度とは

インボイス制度は、食品など一部の品目で消費税の税率を8%に据え置く軽減税率が導入されたことを受け、納税額を正確に把握するために10月1日から始まります。

 制度の開始後に消費税の控除や還付を受けるには品目ごとに税率や税額を記載したインボイスと呼ばれる請求書やレシートが必要になることから、事業者が取引先からインボイスの発行を求められることが想定されます。

 ただ、消費税が免税されている年間売り上げ1000万円以下の小規模事業者もインボイスの発行に必要な登録を行うと、新たに納税義務が生じるため、登録するかどうか判断が必要となるケースも出てきます。

財務省によりますと、こうした事業者は160万程度あり、ことし7月末時点で57%にあたる、およそ92万の事業者が登録を申請したということです。 

一方、登録した小規模事業者を対象に制度開始から3年間は、納税額を売り上げで受け取った消費税の一律2割とするなどといった負担軽減措置が設けられています。

埼玉県内でも事業者向け説明会

「インボイス制度」が10月1日から始まるのを前に、事業者向けの相談会が埼玉県川口市で開かれました。

川口市の税務署で11日開かれた相談会には、個人事業主などおよそ30人が参加しました。

参加者からは登録した場合の影響について質問が相次ぎ、税務署の担当者は「登録は強制ではないが、取引先からインボイス制度に対応した領収書などの発行を求められる場合もある」などと答えていました。

運送業を営む男性

説明を聞いてある程度は理解できました。登録するかどうか考えてみようと思います

制度の開始を控え、国税庁は説明会や相談会を各地で開くなど事業者への相談対応を強化していて、不明な点がある場合は国税庁の専用窓口(0120-205-553)や、最寄りの税務署などに問い合わせてほしいとしています。

難しい選択迫られる小規模事業者

インボイス制度に登録するかどうかは、事業者の判断に委ねられていますが、制度開始を前に難しい選択を迫られているのが小規模事業者です。

事業者は商品の販売やサービスの提供時に受け取った消費税と、仕入れなどで取引先に払った消費税との差額を国に納めていますが、年間の売り上げ1000万円以下の小規模事業者については、これらを国に納付することが免除されています。

しかし新たな制度のもと、10月1日以降にインボイスを発行する事業者は、年間の売り上げが1000万円以下であっても、消費税の納付が求められることになります。 

一方、事業者が引き続き納付の免除を受ける場合は、インボイスを発行することはできません。 インボイスを発行しない場合、制度上、取り引きする相手が、その事業者に対して支払った消費税分の控除や還付を受けられなくなることから、契約の見直しなどにつながる可能性があります。

不適切な取引変更の動きも

インボイス制度に登録していない事業者が、取引相手から一方的に価格の引き下げを求められるケースなどがあり、公正取引委員会は、こうした対応が独占禁止法違反などにつながるおそれがあるとして、ことし7月末までに18件の注意を行ったということです。

関係者によりますと、JT=日本たばこ産業は、去年、葉たばこ農家に対して、インボイス制度に登録しない場合は消費税に相当する金額を、仕入れの際に支払う金額から差し引くと伝えていました。 

公正取引委員会はJTに対して注意を行ったということで、JTは制度開始後3年間は、差し引く金額を減らす経過的な措置をとることで、農家の組合と合意したとしています。

 福島市は去年9月、市の水道局などが発注する公共工事について、ホームページで公開した入札参加資格に関する項目に「インボイス制度の登録がない事業者は受注できなくなる」などと記載していました。

 受注を希望する事業者や、ほかの自治体からの問い合わせが相次いだため改めて検討した結果、記載が不適切だったと判断し、ホームページから削除したということです。 

福島市はNHKの取材に対し「インボイスを発行しない取引先から仕入れを行った場合に、事業の税負担が増えることから当初はそのように記載したが、多くの問い合わせを受けたことを真摯に受け止めている。国には支出が増える場合の対策も要望したい」などと回答しています。

“中止や延期を” フリーランスなど署名提出

「インボイス制度」をめぐり、フリーランスや小規模事業者などで作る団体が、4日財務省などに対し、制度の中止や延期を求める36万人分の署名を提出しました。

財務省や国税庁などに署名を提出したのは、国内のフリーランスや、小規模事業者などで作る団体です。

年間の売り上げ1000万円以下の小規模事業者が、インボイスを発行する場合、これまで免除されてきた国への消費税納付の義務が新たに発生することから、団体は、「インボイス制度は事実上の増税にあたる」と訴えています。

署名は36万人分集まったということで、提出に先立ち、団体は都内で会見を開き、「廃業を考えている事業者もいる。制度は自由な商取引をゆがめ、新規参入を阻むものだ」などと訴えました。

専門家「理解が進んでいるとはまだ言えない」

国税庁の元職員で税務行政などに詳しい中央大学法科大学院の酒井克彦教授は、次のように指摘しています。 

中央大学法科大学院 酒井克彦教授 
「現状では、インボイス制度の意義や目的、影響などについて理解が進んでいるとはまだ言えない。公正取引委員会の注意事例は、取り引き相手への不当なプレッシャーが下請法や独占禁止法などに抵触する可能性があることすら、理解されていないことを示している。国は制度の開始以降も引き続き周知を図るなど、適正な運用に向けた努力を続ける必要がある」

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