8月3日の「はちみつの日」、埼玉県嵐山町のパン屋さんで、地元産の蜂蜜と小麦を材料にしたパンが発売されました。その蜂蜜を生産したのは大妻嵐山高校の生徒たち。科学や自然について学ぼうと、ミツバチを育てています。
さいたま局秩父支局記者/目﨑和正
嵐山町にあるパン屋さんで販売されているのは「はちみつクリームチーズ」を使ったパンです。
地元の女子校、大妻嵐山高校で採れた蜂蜜が使われています。
大妻嵐山高校では理科教育に力を入れていて、自然豊かな環境を生かして去年4月から有志の生徒がミツバチを研究する課外活動「みつばちプロジェクト」を始めました。
現在は校庭の隅に巣箱5個を設置して、およそ1万5000匹のミツバチを育てています。
一部の巣箱には、新型コロナの感染対策で使われていたアクリル板を活用して巣箱の中を観察しやすくするなど、工夫をしながら研究を行ってきました。
最初は女王バチがうまく育たず思うように蜂蜜を採取できませんでしたが、諦めずに研究を続け、去年はハチが集めた花粉に関する研究で、中高生を対象とした科学コンクールで入選しました。
山下麻梨さん(3年生)
「最初は虫がすごく苦手でハチも怖かったんですが、研究をする中で自分の中の苦手なことや怖いことを克服していくことの大切さを学びました」
関根ひかりさん(3年生)
「将来は食品開発や研究の仕事に進みたいので、今回のミツバチのデータを取ったりしてきたことを生かしていきたい」
ことしは順調に育ち、最初の蜂蜜の採取が行われました。
生徒たちは、取り出した巣の枠からはけを使って慎重にハチを払い落とします。
巣のふたの部分の「蜜ろう」を取り除いたあと、遠心分離器を手で回して蜜を採取します。
この日はおよそ20キロの蜂蜜を採ることができました。
「みつばちプロジェクト」顧問 高橋智 教諭
「採れた蜂蜜を地域の人たちに還元したり、蜂蜜の持つ可能性を生徒と一緒に勉強したりして、生徒の探究心を満たしながら社会貢献につなげていきたいと思います」。
こうして採取した蜂蜜を地域に役立てたいと考えていたところ、高校の卒業生で地元でパン屋を経営する新井有里さんが商品化を申し出ました。
嵐山町は小麦の栽培が盛んです。今ではあまり栽培されなくなった「農林61号」という、加工したときにもっちりした食感が特徴の品種を、地域の特産にしようと普及を進めています。
新井さんの店では、この小麦を使ったパンづくりに取り組み、できるだけ地元の材料にこだわった商品を作っています。香りや味のバランスを考えて蜂蜜とクリームチーズを混ぜて、6種類の商品を作りました。
商品は日替わりで提供しています。
はちみつクリームチーズとくるみ
はちみつクリームチーズときな粉
はちみつクリームチーズとレーズン
抹茶とはちみつクリームチーズ
コーヒーとはちみつクリームチーズ
ごまとはちみつクリームチーズ
「ぱん工房たろたろ」新井有里さん
「母校の後輩が作ってくれる蜂蜜なのでうれしかったです。くせのない味でうちのパンとすごく合って、おいしいパンができました」
完成したパンは8月3日、語呂合わせで「はちみつの日」に販売を開始しました。
生徒3人も店を訪れ、店の前で一緒に呼び込みをしました。
地元の女性
「嵐山町の高校生と店がタイアップして材料も嵐山町のものということで、地産地消の商品が作られているのはうれしいことです。どんな味か楽しみです」
はちみつの甘さを残しつつ、すっきりとした味わいが評判です。
個数限定で販売していますが、予約分だけで売り切れる日もあるということです。
勝田茜音さん(3年生)
「ずっと準備してきたものが形になって、いろいろな人に手に取ってもらえるのはとてもうれしいことです。これからも、いろいろな地域とコラボして企画を作って盛り上げて行きたいです」
9月に行われる学校の文化祭では、このパンを販売するほか、瓶詰めの蜂蜜も販売する予定だということです。