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越谷隕石 国立科学博物館で展示 120年間守り継がれて

  • 2023年08月10日

約120年前に埼玉県越谷市に落ちた「隕石(いんせき)」が、ことし「越谷隕石」として正式に国際学会に登録され、国立科学博物館で8月21日まで展示されています。
長い間、その存在を広く知られてこなかった石が、なぜ、このタイミングで登録となったのか。
その陰には石を受け継いできた1軒の農家と郷土の歴史を掘り起こそうと動いた人たちがいました。

さいたま局春日部支局記者/溝田由子

新たに登録「越谷隕石」国立科学博物館で展示

東京・上野の国立科学博物館の日本に落下した隕石を紹介するコーナーに、8月21日まで「越谷隕石」が展示されています。

今から121年前の明治35年に現在の埼玉県越谷市に落下したもので、長さ18センチ、重さ4キロほどの黒い石です。
ことし2月、国際隕石学会に登録された、国内では3年前に登録された「習志野隕石」に続く54例目の隕石です。

隕石を薄く切った破片を顕微鏡で観察すると丸い粒が見えます。これは隕石に見られる特徴の1つで、その分析から小惑星が起源だとみられるということです。
この石が保管されていたのは研究機関などではなく、一般の民家でした。

国立科学博物館 米田成一理工学研究部長
「こんなに長い間、個人の方がずっと持って保管されてきたのは非常に珍しいことです」

“火の玉が西の方から”農家の家宝として121年間

この隕石が保管されていたのは越谷市の農家、中村勉さん(72)の自宅です。
120年余り、家の宝として大事にされてきました。
中村さんの家には隕石が落下したときの目撃談が伝えられてきました。

中村勉さん
「祖父の弟からよく聞いてました。うちの分家の方ですか、外にトイレに行ったとき火の玉が西の方から飛んできてびっくりして家に入ったって。数日して田んぼ行ったら大きな穴空いてた。そこで大騒ぎになった」

中村喜八さん(勉さんの高祖父)

落下地点の田んぼの持ち主が中村さんの祖父の祖父にあたる喜八さんです。
深さ1メートルほどの穴の底に黒い石を見つけ、家に持ち帰ったといいます。
その後、中村家で大事に受け継がれてきましたが、科学的に分析したり、当時の記録を調べたりすることはなく、その存在は地元の限られた人にしか知られてきませんでした。

“隕石らしきもの”その正体を探る調査

この石に光を当てたのが地元の郷土研究会でした。
「地域に隕石らしきものがある」と聞きつけたメンバーの1人が、30年前、研究会に伝えました。

越谷市郷土研究会顧問 加藤幸一さん
「驚いた、へーって思いました。本当かなとちょっと疑いました。これはぜひ、皆さんに知ってもらいたいし、調査をしようということになりました」

研究会のメンバーは調査に乗り出し、中村さんへの聞き取りを重ね、言い伝えをまとめるとともに、隕石の落下を伝える当時の新聞記事も探し出しました。そこには、当時のいきさつが詳しく記されていました。

(記事の内容)
「明治35年3月8日に火山の噴火したような音が響き、中村さんの田んぼに大きな穴が空き、奇妙な石を掘り出した」

研究会が注目したのは記事に書かれた落下の日付です。
中村家の言い伝えでは3月15日とされていましたが、8日だったことがわかりました。
この記事で言い伝えの裏付けがとれたと考えています。

越谷市郷土研究会顧問 加藤幸一さん
「この証拠が目に入らぬかという気持ちでした。客観的な事実を見ないと、臆測ですとどんどん間違っちゃう、だいぶ年数がたっていますからね」

調査結果を元に 国立科学博物館の分析で「隕石」確定

こうした調査の結果を元に研究会と中村さんはおととし、国立科学博物館に石の分析を依頼しました。その結果、ことし、正真正銘の「隕石」として認められました。

中村勉さん
「あちこちから電話があって大騒ぎになってびっくりしました。うれしい反面、大忙しで大変でした。国立科学博物館での展示も見ました。ちゃんとケースに入って顕微鏡でも見ることができてすごいですね。万華鏡みたいにピカピカ光ってきれいでした」

地元に登録を報告“越谷にすばらしい遺産が”

7月、越谷市で隕石の登録を広く知らせるため報告会が開かれました。
中村さんと加藤さんが、中村家の言い伝えや、これまでの調査の経緯などを報告し、集まったおよそ60人が熱心に耳を傾けました。

「越谷にこういうものがあったんだと再認識しました。博物館にも見に行ってみたいと思います」

「すばらしい遺産がここにあったことにびっくりします。研究会が調べて、研究機関に持って行って評価してもらったのはすばらしいと思います」

中村さんは今後、地元のイベントで公開するなど、いん石を地域で活用することも考えています。

中村勉さん
「今までは中村家の家宝として保管してきましたので、地域の皆様に見ていただきたい」

国立科学博物館

「越谷隕石」の展示は東京・上野の国立科学博物館で8月21日まで行われています。
また、分析のために切断された隕石の一部は国立科学博物館に寄贈され、今後の研究に役立てられるということです。

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