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埼玉 三郷市の移動古本屋 青い鳥が届ける本との出会い

  • 2023年7月31日

埼玉県三郷市に1年半前、ちょっと珍しい古本屋が登場しました。本を満載したワゴン車が公園や寺、雑貨店の駐車場の片隅で店を開く、「移動古本屋」です。“日本一の読書のまち”を掲げる三郷市で、本との出会いの輪が広がっています。

(さいたま局春日部支局記者/溝田由子)

本との出会いを届ける幸せの青い車

こちらが1年半前、三郷市に登場した「ブルーバードブックス」走る古本屋です。
ワゴン車の青い色と、車体に描かれた鳥の絵が目印です。
三郷市を中心に、八潮市や吉川市、時には千葉県など、およそ10か所で店を開いています。

このうち、JR武蔵野線の三郷駅近くにある高応寺では月に2回ほど出店しています。
本堂前の駐車場で店を開くと、寺を訪れた人が足を止め、本に見入っていました。

「本屋さんがあると思って来てなかったので、突然本屋さんあらわれてびっくりしました。探していた本が偶然あって、すごくラッキーな出会いでした」

“本を手に取る機会をもっと身近に”

店を営むのは三郷市に住む草薙みちるさんです。
読書離れが進む今、移動できる本屋だからこそ、できることがあると考えています。

草薙みちるさん
「本を読む人が減っているなら、ちょっとでも手に取りやすい機会を、もっと身近にもっていかないといけないかなと考えています」

店名「ブルーバードブックス」の由来は草薙さんの名前の「みちる」から。童話の「青い鳥」の登場人物「チルチルとミチル」にちなんでいます。
草薙さんの肩には青い鳥のぬいぐるみが乗っていました。

限られた冊数でも品ぞろえは幅広く

移動販売のワゴン車の中には約800冊の古本がぎっしりと積まれています。ラインナップは実用書から小説、絵本、図鑑までさまざま。できるだけ多くの人の興味をかきたてられるように心がけています。

仕入れは草薙さんがインターネットで行っているのですが、普通の書店ではあまり見ることのない、珍しい海外の絵本など“お宝本”が手ごろな値段で紛れていることもあります。

「大型書店は広すぎて全部見るのが大変だから、買おうと思った本のある場所にしか行かないけれど、これくらいの規模だと、あまり興味がなかった、得意分野と思っていなかった本でも目に入ってくる。へーって、広がりを作ることになるかもしれない」

移動古本屋までの長い道のり

草薙さんが移動古本屋を始めるまでには、長い道のりがありました。

専門学校を卒業後、17年間、イベントの音響技術の会社で働いたあと、配送ドライバーや図書館司書などを経験してきました。

小さなころよく本を読んでいたという草薙さん。仕事で忙しい日々が続くと、本と接する時間は減っていったといいます。

5年前、草薙さんは仕事の関係で三郷市に移り住むことになりました。

三郷市は“日本一の読書のまち”を掲げ、市民から寄贈された本を自由に借りられる「ふれあい文庫」を20か所以上設けるなど、本と出会える場を数多く作ろうとしていました。

草薙さんはその理念に共感し、ふれあい文庫の手入れをするボランティアに参加。そのなかで、自分でも本との出会いを運ぶ仕事をしたいと考えるようになりました。

そこで4年前、一念発起して通信教育の大学で学び、図書館司書の資格を取得。

得意な運転技術を生かした移動古本屋をスタートしたのです。

そこには、かつて仕事に追われていた自分が、本と向き合うことで気づいた思いも込められているといいます。

「日常生活が忙しくて本を読んでいる暇がない人ほど、社会の変化や暮らしの変化に必要な情報を読んだり、情報を精査するための力が必要になると思う。何か楽しめるものを手に取ってもらえたら」

意外な興味を引き出す本選び

草薙さんの本選びのセンスにひかれ、常連となる人もいます。

三郷市に住む60代の男性はSNSなどで草薙さんの出店スケジュールを確認し、近所に来るときは毎回訪れています。この日はエッセイ本を求めて来店しました。

草薙さんが薦めたのは、かわいらしいネコのキャラクターが禅のことばを紹介する本でした。意外なセレクトに、男性は驚きながらも購入を決めました。

「ここだと店主がこういう本がよいと思いがけないものを薦めてくれて、ここを知ってから読書の幅が広がったと思う」

理髪店やカフェに『置き本』“生活の中で気軽に本を”

草薙さんが行っているのは移動販売だけではありません。

理髪店やカフェなどの一角に本棚を設置。訪れた人が自由に本を手に取り、気に入ったものがあれば購入できる「置き本」のコーナーを設けているのです。

草薙さんが店側の意向や客層に合わせて本を選び、定期的に本の補充や入れ替えに訪れます。

「ココニモブックス」と名付けられたこのシステム、なかなか本屋に行く機会が持てない人にも日常生活の中で気軽に本に触れてもらいたいという草薙さんの思いが込められています。

現在、草薙さんの趣旨に賛同した八潮市や吉川市の3つの店舗に設置されています。

理髪店の店主
「自分もじっくり本を読む時間ないので、設置を依頼して良かった。自分が面白いなと思ったものをお客さんに面白いと思ってもらえたら」

「お店の方が、こんな本あってねと、お客さんとのコミュニケーションに盛り込んでもらったり、そんなツールになると想定しています」

草薙さんが願う本との出会いとは

最後に草薙さんに、店を訪れる人にどんな本との出会いをしてほしいと願っているか、聞きました。

草薙みちるさん
「おなかがすいたらごはんを食べたい、のどが渇いたら水を飲みたいというように、そのときに欲しているものを、並べた本の中に見つけ出してもらえたら、とてもよい出会いになるのではと、いつも思っています」

ふと本が読みたくなったら、青いワゴン車を探して出かけてみてはいかがでしょうか。

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